ピンチとチャンスは隣り合わせとよく言われる。新型コロナウイルスの感染拡大も世界を不安に陥れたという意味では大きなピンチであった。しかし、それは働き方の本質を見つめ直す絶好のチャンスでもある。特に、日本企業は働き方やキャリアの柔軟性等の点において世界に遅れを取っている。
このタイミングで変革に着手すべきであると提言しているのが、ロンドン・ビジネス・スクール 経営学教授 リンダ・グラットン氏だ。世界的ベストセラー『WORK SHIFT』、『LIFE SHIFT』シリーズの著者であり、2021年には、世界で最も権威ある経営思想家ランキング「Thinkers50」に選出され、まさに現代を代表する知の巨人の一人と言える。本講演では、リンダ・グラットン氏が、アフターコロナの今まさに到来している変革期において、日本企業は働き方をどう変えていけば良いのかを語った。講演の後半では、グラマシーエンゲージメントグループ株式会社 代表取締役 ブライアン・シャーマン氏によるグラットン氏へのインタビューも行われた。
人生100年時代に向けて日本企業が必要な「社員の働き方・仕事の再設計」と「親と子ではない大人同士の雇用関係」
リンダ・グラットン氏
講師:

ロンドン・ビジネス・スクール 教授 リンダ・グラットン氏

「Business Thinkers 50」でトップ15人のビジネス思想家の一人に選ばれ、“ロックスター“講師と評された、働き方の未来に関する世界有数の思想家の一人。ロンドン・ビジネス・スクール 経営実務 教授。「ティーチャー・オブ・ザ・イヤー」を受賞し、同校で最も人気のある選択科目の一つである「働き方の未来(the future of work)」を設計し指導する。ハイブリッドワークに関する彼女の研究は、2021年5月にハーバード・ビジネス・レビューの表紙記事として取り上げられ、またMITスローン経営大学院のコラムでは仕事の問題を探求している。10年以上前にHSM-Advisoryを設立し、世界中の90以上の企業のビジネス戦略を未来志向でサポートしてきた。『Redesigning Work』『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略(原題:The 100-Year Life)』など11冊の著書は100万部以上を売り上げ、15カ国語以上に翻訳されている。 世界経済フォーラムのフェローであり、WEF Council on Work, Wages and Job Creationの共同議長を務めている。また、日本の安倍元首相の諮問委員を務めたほか、多くのグローバル企業の諮問委員を務めている。

ブライアン・シャーマン氏
講師:

グラマシーエンゲージメントグループ株式会社 代表取締役 ブライアン・シャーマン氏

米国ニューヨーク市にて日系企業(NY・LA)を対象に人事コンサルタントとして従事。 その後米国住商情報システム人事総務部長として在米日系企業が抱える人事の現場を内と外の視点で支える。来日後株式会社ファーストリテイリングでのグローバル人事業務に参画。2010年グラマシーエングージメントグループ株式会社設立。日本企業の人事のグローバル化をサポートするコンサルタントとして活躍中。 米国ニューヨーク州出身、米国Williams College卒 早稲田大学トランスナショナルHRM研究所 招聘研究員 【著書】『英語 de 人事® 日英対訳による実践的人事』(白木三秀 と共著、文眞堂、2020年)
グラマシーエンゲージメントグループ株式会社

アフターコロナの今だからこそ必要な社員の働き方や仕事のredesign(リ・デザイン)

今こそ社員の働き方を変える時

リンダ氏 本日は、アフターコロナを念頭に今、何が起きているのか。そして、これから何が起こるのかをお話しします。私は、世界の変化を考える上で欠かせない3つの主要なトレンドを研究しています。1つは、「長寿化」です。長寿化は自分自身や人生、そして仕事についての私たちの考え方にも影響を与えています。第二に、「テクノロジー」は進化し続け仕事のあり方を変えていくでしょう。今後は、テクノロジー・スキルが重要です。デジタルやテクノロジー関連の仕事に就くための再教育だけでなく、スキルの向上も検討する必要があります。そして、第三のトレンドが「働く女性」の増加です。近年、家族の構成が大きく変わりつつあるのです。

そして、あの出来事が起こりました。コロナ禍です。コロナ禍は、あらゆる人々に甚大な変化をもたらしました。コロナ禍前は給与の支払、キャリア開発、採用などの人事の実務やプロセスがすべてフリーズしていました。とても静的で、変化がなかったということです。しかし、コロナ禍によって、それまでフリーズしていたものが溶け始めたのです。

さて、現在の状態はどうでしょうか。また、凍り始めています。まさに今、世界中の人々が「これから」を考えています。以前の状態に戻ってしまうのは、あまりに残念ですから、コロナ禍以来私は熱心に語ってきました。「今こそが働き方を変える真のチャンスだ」ということです。これは、まさに産業革命以来のチャンスです。そして、HRコミュニティはこの機会を最大限に活用すべきです。今こそ、皆さんの専門性を活かして人々の働き方を変える時です。
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