企業が持続的にその価値を向上させるためには、社員の実態や意識を把握し、さまざまな課題の抽出・解決に努めることが先決である。そうした作業のベースとなるのが、社員の声を数値で評価する「社員サーベイ」だ。本講演ではHR総研が実施した「社内アンケートに対する社員の意識調査」(調査期間:2022年3月23日~4月8日)や「人事の課題と社員サーベイの活用に関するアンケート」(調査期間:2022年5月23日~30日)の調査結果をもとに、社員サーベイと課題の抽出・解決のカギとなる相関関係について解説する。
HR総研の調査結果が示唆する、人事の最重要課題の見つけ方や社員サーベイのあり方
松岡 仁
著者:

ProFuture株式会社 取締役/HR総研 主席研究員 松岡 仁

1985年大学卒業。文化放送ブレーンで大手から中小まで幅広い企業の採用コンサルティングを行う。ソフトバンクヒューマンキャピタル、文化放送キャリアパートナーズで転職・就職サイトの企画・運営に携った後、2009年より現職。各種調査の企画・分析を担当し、「東洋経済オンライン」「WEB労政時報」に連載中。

久木田 亮子
著者:

ProFuture株式会社 HRサポート部 / HR総研 主任研究員 久木田 亮子

2009年建設系企業に入社。研究開発および設計職に従事。2015年以降、シンクタンクにて地方創生に関する幅広い分野で調査研究を行う。2019年にHR総研(ProFuture株式会社)主任研究員に着任。人事関連分野に関する幅広い調査・分析を行う。企業動向だけでなく、新卒採用においては就活学生を対象とした調査の設計から分析までも担当する。

企業の持続的な価値向上を実現する、効果的な「組織課題」解決の一手とは

2つの観点から見えた企業の人事課題とは

松岡 本日は、“企業の持続的な価値向上を実現する、効果的な「組織課題」解決の一手”をテーマに、HR総研が実施した「社内アンケートに対する社員の意識調査」(調査期間:2022年3月23日~4月8日)や「人事の課題と社員サーベイの活用に関するアンケート」(調査期間:2022年5月23日~30日)の調査結果を、3つのパートに分けてお伝えしていきます。まずは、「人事の課題について」です。「採用・人材育成・配置・人材ポートフォリオ」面での最大の課題は「次世代リーダー育成」で、次いで「キャリア採用」となっています(図1)。

▼図1:企業規模別 【採用・人材育成・配置・人材ポートフォリオ】面での課題

HR総研の調査結果が示唆する、人事の最重要課題の見つけ方や社員サーベイのあり方
「専門職人材の採用」については、従業員1,001名以上の大企業では課題として重視されているのに対し、従業員301~1,000名の中堅企業や従業員300名以下の中小企業では、さほど重視されていないことが分かります。

「組織・制度・仕組み・システム」面での最大の課題は、大企業では「評価の定着・評価者スキルの向上」、中堅企業では「従業員エンゲージメントの向上」となりました(図2)。また、大企業では「人事データの活用」が大きな課題として認識されているものの、中小企業では重要視されていないことも分かります。

▼図2:企業規模別 【組織・制度・仕組み・システム】面での課題

HR総研の調査結果が示唆する、人事の最重要課題の見つけ方や社員サーベイのあり方
人事課題を把握するために、大企業では52%と半数以上が「社員サーベイ」を利用している一方で、中堅企業では25%程度、中小企業では10%強にとどまっています(図3)。中堅企業で最も利用されている手法は「社員ヒアリング」で48%、中小企業では「日頃の会話から推測」が55%となっているなど、数値やデータに基づくのではなく、一部の社員の声を拠り所にしていることが分かります。

▼図3:企業規模別 人事課題の把握手法

HR総研の調査結果が示唆する、人事の最重要課題の見つけ方や社員サーベイのあり方
大企業では、課題解決のために何らかの施策を実施している企業も多く、「施策の成果が出ている企業群」の割合も高くなります(図4・5)。しかし、企業規模が小さくなるにしたがって、「最重要課題を抽出できていない企業群」が増えていきます。

▼図4:企業規模別 【採用・人材育成・配置・人材ポートフォリオ】面の最重要課題の解決状況

HR総研の調査結果が示唆する、人事の最重要課題の見つけ方や社員サーベイのあり方

▼図5:企業規模別 【組織・制度・仕組み・システム】面での最重要課題の解決状況

HR総研の調査結果が示唆する、人事の最重要課題の見つけ方や社員サーベイのあり方
こうしたことから、最重要課題の抽出・解決においては、中小企業で実施されている「個別ヒアリング」のような定性的な調査ではなく、大企業で実践されている「社員サーベイ」のように、定量的な調査が必要になってくるのではないかと考えられます。
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