人的資本経営において経営戦略と連動した人事戦略の推進が叫ばれる現在、ますます重要度を増しているのが「CHRO」だ。リンクアンドモチベーションが主催した『HR Transformation summit 2025』の『続・これからのCHRO 〜1年間の挑戦と学びを紐解く〜』と題したセッションでは、昨年の同イベントで「これからのCHRO」というテーマで議論した丸紅、マツダ、コカ・コーラ ボトラーズジャパンのCHROが再集結。昨年からの1年間における挑戦や、そこから得た学びや気づきを語った。さらにCHROという役割の変化、これからの人事に求められる視点を議論した。変化の激しい時代で、役割を拡大するCHROや人事は、どんな考え方を持ち、どう動くべきなのか。そのヒントとなるトークセッションの内容をお届けしよう。

▼モデレーター
株式会社リンクアンドモチベーション 企画室 エグゼクティブディレクター 冨樫 智昭氏

▼登壇者
・丸紅株式会社 常務執行役員 CHRO 鹿島 浩二 氏
・マツダ株式会社 執行役員 兼 CHRO(最高人事責任者) 安全・病院担当 竹内 都美子 氏
・コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社 執行役員 CHRO コカ・コーラ ボトラーズジャパンベネフィット株式会社 代表取締役社長 東 由紀 氏
・日本経済新聞社 ライフ&キャリアビジネス統括補佐兼特命担当 上杉 栄美 氏

【昨年のセッションの模様はこちら】
>> 先進企業3社と紐解く、変化する経営組織における「CHROの役割」とは
続・これからのCHRO 〜1年間の挑戦と学びを紐解く〜

三者の昨年の人事施策におけるキーワード…「ギアチェンジ」「凛」「盤石の布石」

冨樫氏:まず、人材戦略の進捗や事業・組織の変化として、この1年間を象徴するキーワードと、それに紐づくエピソードをお話しください。まずは丸紅の鹿島様からお願いいたします。

鹿島氏:はい、キーワードは「ギアチェンジ」です。昨年の資料の最後に課題を三つ挙げていました。一つ目が「現行制度のレビューと推進」、二つ目が「グループ全体への取り組み拡大」、三つ目が「新中期経営戦略における人財戦略」です。

「現行制度のレビュー・推進」は着実に進めてきました。大きな取り組みとしては、昨年7月から総合職と一般職の職掌制度を廃止したことで、ここはスムーズに移行できたと感じています。

二つ目の「グループ全体への取り組み拡大」は永遠の課題でもあり、新しい中期経営戦略でも引き続き取り組むテーマになっています。

そして三つ目の「新中期経営戦略」については、私自身が経営会議メンバーに加わったこともあり、その策定議論や人財戦略の議論に直接参画しました。その際のキーワードが「ギアチェンジ」であり、私自身だけでなく会社全体にとってのキーワードになっています。

丸紅は4年連続で連結純利益4,000億円を超えました。そこで次のステージを目指す新中期経営戦略を作る中で、「ギアを上げる」という意思を示す必要がありました。実際に戦略の中でも「次の成長ステージに向け、利益成長・企業価値向上を加速させる」という文言を盛り込みました。

具体的には、2030年までに時価総額10兆円超を目指すと掲げました。これは当社として初めて時価総額を明確な目標にしたものです。その実現に向けた人財戦略の重要な方針として、「成長領域への人財シフト・人財投資」「事業投資・経営人財の強化」「株主目線の報奨拡充」の3つを掲げています。2021年と2024年に実施してきた施策を土台としつつ、「ミッション本位・実力本位」をさらに徹底していく方針です。

このように、次の成長ステージに向けた「ギアチェンジ」を意識した1年間でした。

冨樫氏:中期経営戦略に人財戦略を明記されていることは非常に興味深いです。CHROとして人財戦略だけでなく、経営戦略そのものの議論に加わられたのは新しい動きですね。

鹿島氏:新しい経験でしたし、大いに学ぶ必要があると自覚しました。

冨樫氏:人財戦略の議論以外にも参画され、人財戦略にも他のCxOも入ったということですが、CxO間の連携もしっかり取れていないという事はまったくないようですね。

鹿島氏:そうですね。人財戦略を構築するステップにおいては、ほとんど隙間なく連携できていると感じます。

冨樫氏:そこまでCxO間で巻き込み合いながら進めるのは珍しいことだと思います。その話はまた後ほど伺います。では続いて、マツダの竹内様にお願いします。

竹内氏:この1年を表す漢字は「凛」です。身や心が引き締まる様子、あるいは冬の厳しい寒さを表す言葉です。自動車業界は電動化やカーボンニュートラル対応といった100年に一度の変革期にあり、さらに米国の関税対策など経営環境も厳しさを増しています。

その中でマツダは「人は最大の資本であり、価値創出の源泉」という考えを大切にしています。経営戦略を実現できるのも、お客様に価値を届けられるのも「人」です。従業員一人ひとりの力を最大化し、総力で難局を乗り越えることを目指す中で、人事の使命はますます重要になります。この覚悟を込めて「凛」という言葉を選びました。

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