感情を見直すことで、日本の企業・組織はもっと強くなる! セミナー「人、組織、社会の関係を根本から問い直す」レポート

HRプロ編集部取材×注目人事トレンド

2019年5月29日に東京都渋谷区で、株式会社ジェイフィール主催のセミナー「人、組織、社会の関係を根本から問い直す」が開催された。テーマは「感情」。同社は、日本の企業や組織に欠けているのは「感情」と考え、人と人とのつながりや絆の重要性を改めて見直し、良い感情の連鎖を起こそう、という思いから創業されたそうだ。その「感情」を軸に、強い経営とは何かを改めて思案し、本当の働きがいや生きがい、幸福を見直すきっかけとしてほしいと企画されたのが、本セミナーである。今回HRプロ編集部は、セミナー名を冠したプログラム「人、組織、社会の関係を根本から問い直す」を取材した。世界の経営学をリードしてきたカナダ・マギル大学のヘンリー・ミンツバーグ教授、一橋大学の野中郁次郎名誉教授、国際大学・伊丹敬之学長の3名による鼎談が行われた。

経営に求められる「バランス」とは。科学偏重の現状を問題視

「近年、企業の再構築や人事制度などで大きな動きや変化が起こっている。その中で、科学的視点が重要視されるあまり、「感情」が置き去りにされ、バランスを欠いているのではないか……」。イベントの冒頭、主催社であるジェイフィール代表の高橋克徳氏が、あいさつでこのように指摘した。合わせて、「社会が大きく変化している今こそ、感情という最後のピースを企業や組織、社会の中に埋め込みたい」と強調。同氏は「日本人は、震災を経験し、人とのつながりや絆の大切さ、尊さを再確認することになった。今日は改めて、働きがいや生きがい、幸福とは何かを一緒に考えたい」と語った。

本会では世界的識者たちの講演や鼎談を通じ、これからの日本の企業に求められる考え方や行動の指針が示されたほか、社会変革を起こした実例などが紹介された。また、会場には障がいや難病等と向き合う人々を積極的に雇用する株式会社LORANS.のスタッフの手による草木が飾られていた。同社はジェイフィールと同じ「社会課題の解決」という志を持つ企業として、本セミナーに協賛したのだという。

世界的識者たちが、日本の企業へ提言

このうち、講演と鼎談では、ヘンリー・ミンツバーグ教授(カナダ・マギル大学)、 野中郁次郎氏(一橋大学名誉教授)、伊丹敬之氏(国際大学学長)が登壇。一人ずつ講演を行った後、3者による鼎談が行われた。全体の進行と鼎談の司会は伊丹氏が務め、話は世界の情勢、その中で果たすべき日本の役割にまで及んだ。ここからは、その内容を紹介する。

伊丹敬之氏講演:この10年で日本の企業は蘇った!

今年1月に出版した『平成の経営』を執筆する際に、平成30年間をデータで振り返ったのですが、驚くべき発見をしました。日本の売上営業利益率、実質労働生産性は2009年を底になんと10年間上がり続けていたのです。現在はバブルの水準すらもとうに超えています。しかし、最初の20年は確かに失われた20年でした。

なぜ低迷したのでしょうか。私は2つの傷があったと考えます。一つは財務の傷です。特にバブル崩壊の影響は本当に大きかた。日本のGDPの1.5倍に相当するキャピタルロスがたった3年で起きたほどです。しかし、もっと大きなのは「心の傷」です。日本の企業の経営者たちは心の傷を負ったのでした。理由は2つあります。一つはバブルを起こしてしまったこと。もう一つは、それまでもてはやされていた日本的経営への自己疑問です。経営者はMBAなどアメリカ型の経営を中途半端に取り入れるなどウロウロしました。さらに、リーマンショックと東日本大震災。リーマンショックで崖から真っ逆さまに落ちるように生産水準が下がり、なんとか持ち直したところに東日本大震災が起きたのです。

東日本大震災で日本の企業が「シャキッ」とした。

しかし、東日本大震災は、その痛手は決して小さくなかったものの、ある意味で日本の企業を「シャキッ」とさせ蘇らせました。この背景には、日本的経営への回帰と「人本主義」があったと見ています。人本主義では、取引関係を含め経済組織を構築する時に、人と人との安定的なネットワークを中心原理とします。お金は競争力を強くする一つの要素に過ぎません。会社は従業員が第一で、資金を提供する株主はあくまでサブという考えです。

日本の企業が本当に人本主義に則っているかという証明は、例えば失業率を日米で比較するとできるでしょう。100年に1度の危機と言われたリーマンショックで、アメリカの失業率は10%近くまで跳ね上がったのに対し、日本はわずかに上がった程度。しかも、リーマンショックの影響は、アメリカより日本のほうがはるかに大きかったにも関わらず、です。私は『平成の経営』の中でも、日本的経営でいいじゃないか、と主張してします。しかし、人本主義は人と人との関係を重視するがゆえに「ぬるま湯」になりがち。それならば、厳しいアメリカ型経営のほうがマシでしょう。

今、世界は国と国との壁が高くなり、アメリカと中国という大国が衝突しています。こうした中にあり、資本主義でも共産体制でもない原理市場経済を回している日本は、世界にとっていい例を提供しているのではないでしょうか。厳しさのある日本型経営をすべきであると、強調したいと思います。

著者プロフィール

HRプロ編集部

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