感情を見直すことで、日本の企業・組織はもっと強くなる! セミナー「人、組織、社会の関係を根本から問い直す」レポート

HRプロ編集部取材×注目人事トレンド

野中郁次郎氏講演:共感・直観ありきで、経営を考えよ

現在の日本の経営の問題というのは、過去の成功体験の過剰適応に陥っていることにあります。過剰な計画、分析、統制によってバランスを欠いていると言えるでしょう。価値を生み出している企業はコモングッド(共通善)を見つけ、コミットしています。そして、組織の内外で共感を育んで集合的に本質直観し、その実現に向けた自律分散系の全員経営を行う。昨今はPDCAがもてはやされているようですが、PLAN、DOありきではない。大切なのは、共感・直観です。共感から本質をえぐり出してコンセプトを作る。そのコンセプトと知をつないでモデル(物語)化し、組織レベルで一人ひとりが実践的にやり抜く。これを組織的知識創造、つまりSECIモデルと呼んでいます。本来はこの話だけで1時間はかかるのですが、今日のところは、感じること、「Feel」を重視して、そんなものだと思って話を聞いてください。

共感は相互主観であり、相互に他者の主観と全人的に向き合い、受け入れ合うことで成立します。つまり、徹底的に相互に無心になることで「われわれの主観」をつくりだすのです。自律分散系の全員経営は、ミドルが連結点となることで、理想と現実、トップダウンとボトムアップを両立します。合わせて、戦略についても触れておきましょう。戦略は「生き方」を問う「物語り」です。単なる分析、すなわちサイエンスを超えてどういう生き方が美しいかを問う物語、冒険劇やロマンス劇と捉えるのが重要です。物語全体を描くプロットは中長期計画で、乱暴に言えばこれは誰でも作り上げることができる。一方、プロットの構成要素であるスクリプトは実践を促す行動規範。文学性を発揮し、腹に落ちる言葉で書かれなければ、だれも心動かされず、実践につながりません。


両立しにくいものを両立させる知恵、精神が必要

MBAに代表されるようなマネジメントスタイルは、ツールやフレームワークありきで、人間不在になっているのではないかと感じています。経営は現状の二者択一から二者両立を目指すべきです。「暗黙知と形式知」、「感性と知性」、「アナログとデジタル」、「安定と変化」は相互補完の関係にあります。対立しながらも一つの事象を共存させる。つまり、どちらか一方ということではなく、あれもこれもを両立させて「二項動態」と捉えるのです。双方のバランスは、現実の問題に全人的に直接向き合い、仲間と共に一生懸命に試行錯誤することで見えてきます。ダイナミックで変化に富む「二項動態の経営」は組織的イノベーションを生み出すモデルであり、これこそが日本的経営、ワイズカンパニーではないでしょうか。ただし、二項動態は簡単なことではありません。命をかけるくらいのつもり、ファイティング・スマートの姿勢を忘れてはならないでしょう。

ヘンリー・ミンツバーグ氏講演:マネジメントはアートとサイエンスのバランスがキー

マネジメントに関するバランスの話をしましょう。バランスとは、アート、サイエンス、クラフトの調和です。アートはクリエイティブ、創造的なインサイト(物事を見抜く力)。クラフトは実行する、経験する、その経験を利用すること。サイエンスは分析あるいは考えること。効果的なマネジメントは見て知ることが必要ですが、今は考えることに比重を置き過ぎているように思えます。

MBAなどで一般的に推奨されるマネジメントスタイルと、まったく異なるスタイルで大成功を収めた例を紹介します。スティーブ・ジョブスです。彼は毎朝ラボに足を運び、チームの一員として商品開発を手がけていました。それがマネジメントクラスの仕事だと教えられることはまずありません。しかし、アップルを世界一と言える企業へと成長させました。考えることと分析することはもちろん、大切なことです。しかし、とらわれてはいけません。大切なのはバランスです。組織の中に、アート、クラフト、サイエンス、それぞれの役割を持った人を集めなければなりません。また、スティーブ・ジョブスがメンバーの一員として働き、アップルをコミュニティのように仕上げました。このことを私は「コミュニティシップ」と呼んでいます。コミュニティシップは素晴らしいエネルギーを生み出します。リーダーシップより重要です。


日本の社会には「コミュニティシップ」がある

バランスが大切なのは、ビジネスに限ったことではありません。今、世界はバランスを欠いており、とても危険な状況です。多くの国では、いわゆる暴君と呼ばれる人たちが主導的に立場についています。改革、リフォーメーションが必要です。私たちは、自分が信じていることに疑問を持ち、間違いだと気づいたら、破壊し再構築すべきなのです。大切なのは、バランスを取ることです。まずは個人でバランスを取り、その上で、組織、社会とより大きな場でのバランスを目指します。

バランスが取れている国は、政府と民間という2つのセクターのほかに、多元的セクターを持ち、うまく機能させています。多元的セクターには市民団体やNGO、生活協同組合、私立大学など政府でも民間でもない、あらゆるものを含みます。この3つが調和し、バランスが取れた時に国はうまくいきます。日本を見てみますと、多元的セクターは民間に含まれていることが多いようです。しかし、均衡が取れています。素晴らしくバランスが取れており、他の国には見られないものがあります。コミュニティシップもあります。世界の見本になるべきだと思っています。

著者プロフィール

HRプロ編集部

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