目標管理を成功させる要諦として、「部門のミッションを伝え、各自の役割を具体的に伝える」「部下を目標設定に参加させることでモチベーションが上がる」というがそれは本当であろうか?
 実際の部門ミッションは大きく変化がなく、目標はその上から降ってくる数字や曖昧で定性的、かつ毎年代わり映えしないことが多い。役割も上司がきちんとマネジメント出来ていれば部下は理解しているケースが大半だ。
目標管理でやる気を引き出すたった一つのコツ

 このような状況で部下に積極的に目標設定に参加させても、目標達成が出来ないと評価が下がるため、現実的に達成出来そうな目標ばかりを上げくるのが実際である。
 言わば目標達成に向けて“魂”がこもらず、目の前のノルマや課題を“仕分け”しているにすぎず、社員のモチベーション向上とスキル向上を狙った目標管理本来の運営とは程遠い姿となっている。
この現象は、実際に“達成されたイメージ”がわかないため、目の前のノルマや問題をどうさばくかに意識集中することに起因します。やった結果がどう報われるか、達成した姿をイメージするように人事から伝えても、不況の期間が長く、社員が物事を前向きに捉えること不慣れになっている。

 ゆえに目標管理を機能させるために今人事が行わなくてはいけないのは、前向きな未来を描き、“イメージ力”をつけさせることである。

 “イメージ力”を身につけるには大きく3つの要諦がある。
最初に目標を考える順番を変えてみること。現状把握からアプローチしない。目指す姿を描き、解決策を検討してから問題を定義するのである。最初に現状把握から入るとそれに引きずられてしまい、目指す姿も近視眼的に考えしまう。例えば、「A社の受注をライバルB社に取られて売上が落ちた」という現実があると、どうしても「B社から取り返すには」と考えてしまうことが多い。しかし、「今後全社的な売上を上げるには?」という目指す姿から考えると、B社から取り戻すということが大きな問題とは必ずしも言えなくなり、目指す姿に集中しやすくなるのである。

 このアプローチは、「ソリューションフォーカス(解決構築思考)」と言われ、海外では普通に用いられている手法だ。アポロ計画やNASAや故ケネディ大統領が本気で10年で人類を月に立たせるとゴールを決め、そのためにいつまでにどうやればいいかを詰めていったので達成できたそうだ。当時の技術の積み上げでは夢物語。飛行機を改善したら10年後に月面到達なロケットができることなかったそうで、あくまでもゴールを達成するために「何をするか」、解決に導くことに集中することで高い目標でもクリアする妙案を引き出すことができるようになる。

 次に目指す姿を考える時は現状を断ち切るため、「売上200%UP」のように現状の延長では達成不可能な高い水準から発想してみる。こうすると、ビジネスモデルも、成し遂げた達成感も、業界内、会社内の身分も、家族との関係も大きく変化している絵を描かざるをえなくなるからだ。
 これは心理学者オズボーンのチェックリスト方という手法の一つを活用した例で、発想を大きく膨らますには有効である。
 書き方としては「~しない」という表現ではなく、前向きに達成した文章にする。「タバコを吸わない」では我慢を強いられるイメージになるが、例えば「長生き出来て、孫と趣味で一緒に釣りをしている」にすると前向きなイメージが浮かんでくる。

 最後に目指す姿は共感を生み、社員全員が動く映像としてイメージ出来るように示唆を与え、考えるプロセスに参加させることが重要となる。例えば、「当ホテルは同県民の皆様に非日常を楽しんでいただきたい。具体的には・・・」と目指す姿を共有するのである。次に「県民に非日常を味わって感謝していただいている場面をイメージして、出来ることを一緒に考えて実行しよう!」と促せばお客に感謝される自分を想像し、前向きに行動に移していけるだろう。

 このように目指す姿のイメージを具体化させるやり方を身につけさせ、目標もそこに至る解決方法から発想するやり方を身につけさせることで、社員のやる気に火をつけることが可能となるのでお勧めしたい。ぜひ試してみてほしい。


HR総合調査研究所 客員研究員 松本利明
(人事コンサルタント)

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