組織・人事コンサルティングを行う株式会社シンカは2019年12月、「働き方に関する価値観アンケート」の結果を発表した。従業員300名以下の企業に勤める20~50代の正社員、男女1,032名を対象にインターネットで実施され、調査期間は、2019年10月31日~11月5日。これにより、従業員のタイプによって働き方改革施策へ期待することの相違点が明らかになった。
働き方改革の本質。社員の勤労意欲と生産性を効果的に上げるための施策とは

項目別にみる「働き方改革施策への期待度」は男女間で大差がない

まず、働き方改革施策についていくつか具体例を挙げ、各施策への期待度を5段階で答えてもらった。その回答を男女別に比較すると、期待が高かった項目は、男性では「勤務時間インターバル制度」や「残業・休日出勤改善」、女性は「兼業・副業」や「テレワーク」が挙がったが、全体的に男女間でそれほど大きな差は開かなかった。
働き方改革の本質。社員の勤労意欲と生産性を効果的に上げるための施策とは

未婚者は「兼業・副業」に、既婚者は「フレックスタイム」に期待する傾向

次に、先に得た回答を「未婚者・既婚者」に分けて比較すると、未婚者は「兼業・副業」への期待度がやや高く、既婚者は「フレックスタイム」や「定年制廃止」への期待度がやや高いことが分かった。他項目については大きな差異がでることはなかった。
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「子供の有無」は仕事への取り組み方や考え方にほとんど影響していない

項目別の回答を「子供の有無」で見てみると、子供を持つ人の方がより多くの施策に期待をしている結果となったが、子供のいない回答者と比較するとその差はわずかであった。「子供を持つと仕事に対する考えや取り組み方が変化する」という既成概念は、実際にはほとんどないようである。
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若年層ほど「柔軟な働き方」を求める傾向

続いて、年代別に回答を見ると、20代と30代は「フレックスタイム制」、「兼業・副業」、「テレワーク」、「ワークシェアリング」といった、より柔軟な働き方や強みを生かした働き方を求める傾向にあることが分かった。

一方、40代と50代は「定年制廃止」を除き、全体的に期待度が低いという結果となった。働き方改革以前の「従来の働き方が当たり前」という思考が強く、現在の職場環境に関して不満を感じていないことが推測できるだろう。
働き方改革の本質。社員の勤労意欲と生産性を効果的に上げるための施策とは

労働価値観によって施策への期待度に大きな差 

次に、回答者の働き方改革施策への期待度と労働価値観との関係性を比較した。「お金を稼ぎたい」や「プライべートに時間を費やしたい」など、労働価値観についての18項目の質問に対する回答を5段階に分けて分布図を作成した。縦軸の上を仕事に対するロイヤルティの高さ、下をプライベートに対するロイヤルティの高さとし、横軸は右にいくほど勤労意欲が高いことを示す。

結果を見ると、中小企業の従業員の多くは、右上の「仕事重視」と左下の「私生活重視」の2タイプに分かれていることが判明した。
働き方改革の本質。社員の勤労意欲と生産性を効果的に上げるための施策とは

働き方改革は、勤労意欲の高い社員が求めていることに沿って実行されるべき

また、労働価値観を「仕事重視」、「個人事情」、「安定重視」、「私生活重視」の4つのタイプに分けてみてみると、働き方改革の施策に対してそれぞれの期待度に大きな差が表れることも分かった。

「仕事重視」タイプは、仕事に対する勤労意欲も高く、会社に対しより価値観を満たせる働き方を求めているため、期待度も高い傾向にある。

「個人事情」タイプを見ると、プライベート時間の優先度も高いが、それと並んで勤労意欲も高くなっており、働き方改革施策を強く求める傾向にあるようだ。

一方で、勤労意欲の低い「安定重視」と「私生活重視」タイプは、期待度も平均より低い結果となった。「仕事は仕事」という考え方が強く、会社に対して多くを求めない姿が表れたものと推測できる。

働き方改革に関する施策を社内で採用する際は、ただ漠然と決定するのではなく、生産性向上の鍵となる「仕事重視」と「個人事情」タイプの社員が求めている施策から取り組むことが効果的といえるだろう。
働き方改革の本質。社員の勤労意欲と生産性を効果的に上げるための施策とは
政府主導の働き方改革は、残業時間の削減に焦点が当たりがちだが、業務時間と比例して業績も下がってしまうことを懸念する企業もあるようだ。しかし、人手不足の中でも効率的に生産性を上げることこそが、働き方改革の本質なのだ。

2019年4月より働き方改革関連法が順次施行され、中小企業においても2020年4月には時間外労働の上限規制が適用となり、2021年4月には同一労働同一賃金の適用も開始されることがすでに決定している。中小企業の経営者はこれらへの対応が必須であると同時に、従業員が高いロイヤルティを維持できる組織構築も急務となっている。

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