「経営戦略と人事戦略の連動」が重要視される中、人事に求められる役割はますます高度化・複雑化している。経営課題や事業課題に向き合いながら、人事としてどのように関わっていけばいいのか。そして、企業の持続的成長に対して、人事的な観点でどんな行動を起こすべきなのか。連載「先進企業の人事から学ぶ――経営課題や持続的成長へのコミットメント」の第6弾は、株式会社kubell(旧Chatwork株式会社)でCHROを務める鳶本 真章氏が登場。今回は、インタビュアーのノンピ取締役・経営企画本部長三浦氏が、日本最大級のビジネスチャット「Chatwork」の運営やBPaaS事業を新たに展開する同社の組織づくりの考え方のほか、人事としてのスタンスや従業員の巻き込み方などを伺った。

プロフィール

  • 鳶本 真章 氏

    鳶本 真章 氏

    株式会社kubell
    上級執行役員 CHRO

    大手自動車メーカーにてマーケティング領域に従事した後、京都大学大学院でのMBA取得を経て、大手外資系コンサルティングファームへ。その後、複数のベンチャー企業での経営支援を経て、2018年に株式会社トリドールホールディングスに入社し、同グループ全体の組織・人事戦略をリード。2019年より、同グループ執行役員CHRO兼経営戦略本部長に就任。2023年10月、株式会社kubell(当時 Chatwork株式会社)に入社し、上級執行役員CHROに就任。

  • 三浦 孝文 氏

    三浦 孝文 氏

    株式会社ノンピ
    取締役 経営企画本部長

    NTTドコモと電通のつくったモバイル広告会社のD2C、レシピサービスのクックパッドで人事を経験後、2017年に当時のオイシックスに入社。大地を守る会、らでぃっしゅぼーや、シダックスとの経営統合プロセスを人材企画や経営企画の部長として経験。2024年2月からノンピへ出向し現職。
    ※ノンピの企業様向けケータリングサービス『EAZY CATERING』

AIが普及しているからこそ「社員の意思決定経験」を増やしていきたい――エピソード6:kubell CHRO 鳶本 真章氏

人事一筋ではなく、キャリアのスタートはマーケティング職

三浦氏:本題に入る前に、まずは鳶本さんのこれまでのキャリアについて伺ってもよろしいでしょうか。

鳶本氏:私は現在42歳で、株式会社kubellのCHROを務めています。キャリアは約20年になりますが、人事一筋というわけではなく、自動車会社でのマーケティングからスタートしました。当時の日本では「新卒で入ったら3年は辞めるな」という考え方が主流でしたが、誰も責任を取ってくれないなら自分のことは自分で決めようと考え、学びを深めるために京都大学の大学院でMBAを取得しました。

その後、リーマンショック後の環境変化を経験し、多様性のある組織の重要性を実感してコンサルティング業界に進みました。そこでは病院の再生案件を担当する中で、人事制度の重要性に気づきました。その後、LIXILという日本ベースで5社が統合し、さらにグローバルで3社が統合したカオスな環境に飛び込み、組織変革の難しさを学びました。

そして、次に転職したのはトリドールという飲食企業。当時、2018年3月期での売上が1200億円規模にもかかわらず、社長が「5年後に5000億円、6000店舗を目指す」というのを聞いて、最初は無謀だと思ったのです。でも、これまでの慣例や常識にとらわれずに、本気で飲食業界を変えようとする挑戦的な姿勢に魅力を感じました。同社では経営企画から始まり、最終的にCHROのポジションに就きました。その経験を他の企業にも広げたいと考え、「働くをもっと楽しく、創造的に」というミッションに共感してkubellに入社しました。

三浦氏:鳶本さんのキャリアの変遷を伺うと、一定の成果を上げるタイミングで次の課題が見えてきて、イシュードリブンで意思決定されてきた印象を受けます。

鳶本氏:まさにその通りです。常に刺激的なチャレンジができる環境があるか、そして今の取り組みを会社に還元できたタイミングで、次にやるべきことがそこにあるかどうかで判断してきました。

この記事にリアクションをお願いします!