「ロールモデル」とは、一般的に考え方や行動の規範になる人物を意味する。企業内では高いスキルを持ち、他の従業員の手本となる人物を指すことが多い。また、最近では、人材育成や組織活性化、そして女性活躍のために企業がロールモデルとなる人物像を設定する場合もある。多様なライフスタイルや働き方、価値観が広がり、社会全体でダイバーシティが重視されている現在。あるべきロールモデルの姿とはどのようなものなのか、そしてロールモデルを設定することにはどのような効果があるのかを解説していく。

「ロールモデル」の意味とふさわしい人物

「ロールモデル」とは、考え方や行動が他の人の規範となる人物を意味する。仕事上では他の従業員の手本となる人物を指すことが多い。

●「ロールモデル」が注目されている背景

「ロールモデル」が注目されるのは、世の中に多様な働き方、価値観が広がっているという背景がある。例えば女性の場合、育児をしながら働きたいという考えを持つ人が増えている。中には、上手な両立方法やキャリアの構築方法が分からないという従業員もいるかもしれない。そのような状況を解決するために、すでに子育てをしながら働く女性従業員がロールモデルとなり、後輩を導くことが期待されている。

●「ロールモデル」にふさわしい人物とは?

「ロールモデル」には誰でもなれるわけではない。ふさわしいのはどのような人物なのか、具体的に説明する。

・身近な上司や先輩
日頃一緒に仕事をする上司や先輩は、「ロールモデル」としてうってつけの人材といえる。ロールモデルとなる人物の働いている姿を見せることで、仕事に対する姿勢やスキルを学んでもらえるはずだ。所属部署にロールモデルになりそうな人物がいない場合は、他の部署の上司や先輩でも問題ない。

・接点がある社外の人
社内に「ロールモデル」になりそうな人物がいない場合は、接点のある社外の人を手本にするのも良い。普段接する上司や先輩とは異なり、公平な視点で観察でき、手本にしたい部分を見つけることができるというメリットがある。

・有名人や歴史上の人物
周りに「ロールモデル」になりそうな人物がいない場合は、有名人や歴史上の人物をロールモデルにするのも良い。しかし、ロールモデルの選び方や憧れる部分次第では、「大きすぎる目標」、「抽象的すぎる目標」を持つだけで終わってしまい、実際の業務に落とし込めない可能性もある。

有名人や歴史上の人物をロールモデルにする場合は、「○○という人物の部下を導く姿勢」など具体的にイメージすると良い。

・複数人
「ロールモデル」を一人に絞れない場合は複数人設定しても構わない。その際は「営業姿勢についてはAさん」、「スケジュール管理能力はBさん」など、ジャンルや業務ごとにロールモデルを設定すると良いかもしれない。

「ロールモデル」を設定することで、企業や組織にどのような効果をもたらすのか

「ロールモデル」を設定することは、企業や組織にどういった効果をもたらすかを確認していく。

●キャリアプランの立てやすさ

上司や先輩など、身近で仕事をする人がロールモデルになると、自分の将来への道筋も立てやすくなる。従業員にキャリアプランを大切にしてもらいたいと考えるのであれば、各部署・チームにロールモデルとなれる人物を配置しておくことが重要だ。

●成長スピード、スキルアップ

身近で仕事をする人物がロールモデルになると、自分との比較ができ、目標設定もしやすくなるだろう。結果的に成長スピードの向上も期待できる。

●社内コミュニケーションの活性化

ロールモデルになる人物と接近するためには、今まで何を見て学んできたかを観察することが重要となる。ロールモデルが何を考えて仕事をしているかを知ろうとする気持ちが、接点のきっかけを作る。こうした動きが多く生まれることで、社内コミュニケーションの活性化につながっていくだろう。

●組織活性化

ロールモデルとなる人物が部署・チーム内など近くにいる場合、少しでも近づくためにコミュニケーションをしっかりと取ろうとするはずだ。綿密なコミュニケーションは社内全体の雰囲気を良くし、組織の活性化にもつながる。

●女性活躍、ダイバーシティの推進

社内にさまざまな経験を経て働く人がいることで、後に続く人たちが手本にしやすくなる。特に育児と仕事を両立しながら働く人、病気の治療を受けながら働く人、困難を乗り越えながら働く人などにロールモデルになってもらうことは、女性活躍・ダイバーシティ推進の観点からも非常に有効だといえる。

●離職防止

「この会社では自分の将来が描けない」、「成長が期待できない」という理由で、若い従業員の離職が問題となっている企業もある。このような企業でも、多くの問題を乗り越えてきたロールモデルがいると、若い従業員は手本にすることができる。10年後、15年後など将来の自分の姿もイメージしやすくなるため、結果的に離職防止につながる効果も期待できる。

「ロールモデル」の見つけ方のヒントになる社員別の要件例

ロールモデルは、「女性管理職の中から1名」や「各部署に1名」のように設定しておけばいいものではない。できれば社員の属性ごとに設定できるのが理想だ。属性ごとのロールモデルの見つけ方について紹介する。

●新入社員向け

新入社員に求められるのは「出される指示を正確に理解すること」である。そして、分からない業務はそのままにせず、上司や先輩の様子を見ながら質問することも重要だ。

新入社員のロールモデルには、これらの行動をきちんと取れている入社数年程度の若い社員を充てるとよい。さらに、自分から進んで業務に取り組む人物であればなお良い。

●中堅社員向け

自分から進んで業務に取り組むだけでなく、上司の指示を正しく理解し、部下、後輩にわかりやすく指示を出すことまで求められるのが中堅社員だ。場合によっては、自身の部署だけでなく、他部署と協力しながら仕事を進める業務もあるため、その際の調整能力も必要となる。

これらの点から考えると、中堅社員のロールモデルとなるのにふさわしいのは、アクティブに仕事をする人物、コミュニケーション能力がある人物、スケジュール管理や仕事の段取りが上手い人物といえる。

●ベテラン社員向け

部署や多くの従業員をまとめ、大きな成果をあげることを求められるのがベテラン社員だ。部署内でのコミュニケーションだけでなく、他部署、他社と協議し、仕事を進める力も必要となる。

ベテラン社員のロールモデルとなる人物には、柔軟な考え方や人心掌握力がある管理職が適切だといえる。

「ロールモデル」を設定する上での手順

「ロールモデル」を設定する上での手順について見ていこう。

●「ロールモデル」の設定

はじめに、「ロールモデル」をキャリア別に分けて設定することが重要だ。年代や部門別ごとに、自社が求める人物像を具体的に設定する。例えば以下のような点を考えておきたい。

・求めるスキル(20代に求めるスキル、入社10年程度で達して欲しいレベルはどのくらいかなど)
・どのようなキャリアを積んで欲しいか
・働き方(仕事とプライベートのバランスのとり方、仕事と育児の両立の仕方など)

また、自社が考えるロールモデルに当てはまる人物が現時点で社内にいるのかも把握しておくことが望ましい。できれば、他の従業員の憧れとなる人物であるか、素行面でも問題なく手本となる人物なのかも確認しておきたい。

●人材の選定

「ロールモデル」を設定したら、該当する人物を育てる必要がある。代表的な方法は以下の通りだ。

【集合研修】
集合研修では、ロールモデルにふさわしい姿を伝えるだけでなく、「自身のモチベ―ションの高め方」や「自部署の中でのコミュニケーションの取り方」、「他の社員、他部署とのネットワークの作り方」などについても押さえておきたい。

集合研修には、ただ教えを受けるだけではなく、同じような立場の人たちと課題の共有ができる、アドバイスを受けることができるという利点がある。

【個別研修】
「レベル別に外部研修に参加する」や「メンターとの対話」、「知識やスキル取得」などがある。集合研修とは異なり、各自の習熟度や身に付けてほしいスキルに合わせることができるのが個別研修の利点である。

●行動・考え方の一般化

将来の「ロールモデル」として望ましい人物の選定や研修と同時に、ロールモデルとなる人物にヒアリング等を行い、何を考え、どのように行動してきたかを具体的に細かく分析することも重要だ。分析した結果を一般化させ、他の従業員に広められると、今後の人材育成にも生かせるだろう。

●周知

「ロールモデル」となる人物を社内で周知させることも必要である。

周知方法には、「社員研修時に紹介」や「採用活動時に“先輩社員の声”などの形で紹介」などがある。また、「初めて後輩を持った時」、「異動した時」など、場面に応じて、ロールモデルがどう行動したか、どのようにスキルを磨いたかを紹介する機会を設けることも周知には有効である。
「ロールモデル」とは、社内で手本となる人物である。仕事のスキルのみならず、行動や考え方も他の従業員の手本であることが望ましい。

ロールモデルは社内で誰か1人を設定すればいいものではない。「年代ごと」、「職歴ごと」「性別ごと」等、属性ごとに設定することで、それぞれのレベルに合わせたスキルアップにつなげられる。また、ロールモデルの設定には、従業員の成長スピードを促進するだけではなく、社内コミュニケーションや組織の活性化、離職の防止という効果も期待できる。

なお、ロールモデルを設定する場合は、社内で求めたい人物像をしっかりと決めることも重要だ。人物像が決まったら、それに沿った人物を探し、研修で育てていかねばならない。そして、他の従業員に対し、ロールモデルの存在を周知させることも必要である。

また、ロールモデルとなる社員は、他の従業員との直接の関わり合いで手本になってもらうのみではない。会社としては、彼・彼女らの考え方や行動を一般化し、今後の社員育成に生かすことも考えておきたい。
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