トヨタ自動車が5月8日、2014年3月期決算を発表した。営業利益はなんと2兆2921億円(前期73.5%増)で、日本の事業会社としては過去最高額となった。2008年9月のリーマンショックにより、2009年3月期は4610億円の営業赤字となったが見事に復活した。
最強トヨタの就職人気ランキングが低いのはなぜ?

 私は2000年11月に稼働前のトヨタ・フランス工場を取材して、「トヨタ 利益1兆円の野望」との記事を書いた。当時(2000年3月期)トヨタの営業利益は7759億円。フランス工場の新設によって、まだ手薄なヨーロッパ市場を深耕し、利益1兆円を達成しようとするトヨタの動きを書いたのだった。

 当時は1兆円と金額がとてつもなく大きく感じられたが、2014年3月期の営業利益額は1兆円をはるかに超えて2兆2921億円。2000年3月期の約3倍だ。トヨタが超優良な成長企業であることは間違いない。
 しかし、学生の就職人気ランキングでは、トヨタは77位(文化放送キャリアパートナーズと東洋経済の共同調査)。ランキングを見ると、上位10社中5社が金融業界だ。金融は安定しているイメージがあるため人気がある。しかし、本当に金融は安定業界なのだろうか。
 はっきり言うが、金融が他業界に比べて特に安定しているとは言えない。金融でも業績が悪化すれば倒産する。バブル崩壊後の20数年間で実に多くの金融機関が倒産した。
 銀行では、1997年に北海道拓殖銀行、98年に日本長期信用銀行、日本債券信用銀行が倒産した。こうした有力銀行が倒産するなど、バブル以前では考えられないことだった。バブル以前は「日本で銀行は絶対につぶれない」と言われていたが、今では銀行は普通の企業だ。

 また、倒産しないまでも自力での経営維持が困難になったため、他社との合併でなんとか生き残りを図った銀行もあった。
 その具体例として、わかりやすいのが三菱東京UFJ銀行だろう。三菱銀行に東京銀行、UFJ銀行がくっついて出来たのが三菱東京UFJ銀行だ。UFJ銀行は東海銀行と三和銀行が合併してできた銀行。要するに東京銀行、東海銀行、三和銀行はバブル崩壊で体力を消耗し、単独では存続できなくなったために三菱銀行と合併せざるを得なかったのだ。
 証券会社では、97年に当時「大手証券4社」の内の1社だった山一證券が倒産した。中小証券ではなく、大手が倒産というのは衝撃的だった。この年には準大手と言われていた三洋証券も消滅している。
 生命保険は、金融業界の中でもさらに安定している業態で、誰も倒産など想像もしなかったが、1997年に日産生命が倒産。その後、多くの生命保険会社が倒産した。大手生保の一角を占めていた千代田生命も経営が破綻した。

 金融機関に比べれば自動車メーカーの方がはるかに安定している。一時期、自動車メーカーは就職人気ランキング上位にランクインしていたが、リーマン・ショックで業績が悪化してから順位が下がり、業績が回復してもランキングは回復していない。
 しかし、ここ数十年、自動車メーカーの倒産は1件もないし、合併もない。日産自動車やマツダは一時深刻な経営危機に陥ったが、今では業績絶好調だ。

 「金融業界=安定」というイメージがあるが、それは正確ではない。トヨタの就職人気ランキングが77位である一方、金融業界の人気が高いということは、学生の企業研究が不十分であることを表している。学生は何を見て、何を考えているのか。私には学生の人気企業ランキングが理解できない。


東洋経済新報社 東洋経済HRオンライン編集長 田宮寛之

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