第10回 HRテクノロジー大賞『アナリティクス部門優秀賞』
LINEヤフー株式会社
360度評価におけるバイアス除去技術の開発と社内への展開
被評価者の能力によらず、評価者側の評点の平均値が高い/低いといった評価者バイアスが含まれる「360度評価」の相対比較を可能にするために、スポーツチームのランキングなどに使われるレーティングアルゴリズム(Bradley-Terryモデル)を応用した独自技術を開発。評価者による評価基準の違いを自動補正し、社員ごとに新たなスコア(デバイアススコア)を算出することで、組織を横断した比較を可能にし、ヤフーとLINEの経営統合後における客観的な人材評価を実現。人事評価の公平性向上と評価者の負担軽減に寄与する優れた取り組みであると高く評価されました。プロフィール

山内 智 氏
LINEヤフー株式会社
人事総務統括本部
ピープルアナリティクスラボチーム リーダー
博士課程を終了後、2012年、旧ヤフー株式会社に入社。以降、事業部門、技術部門、人事部門にて、様々なAI・データ活用案件に関わる。2023年、LINE/ヤフーの会社合併に伴い両社のピープルアナリティクスチームが合流。以降、チームリーダーを担当し、人事データ活用や新たな技術開発に取り組む。

佐久間 祐司 氏
LINEヤフー株式会社
人事総務統括本部
ピープルアナリティクスラボチーム
大学卒業後、ワトソンワイアット(現ウイリス・タワーズワトソン)で人事コンサルタントを務め、面白法人カヤックで人事を経験。同志社大学心理学研究科前期博士課程修了後、メタップスを経て2017年にLINE入社。人事データの分析基盤を企画し、現在はシステム企画・運用・分析などを幅広く担当。

夜久 真也 氏
LINEヤフー株式会社
データグループ データサイエンス統括本部
修士課程修了後、2015年にヤフー株式会社に新卒入社し、ビッグデータ・機械学習エンジニアとしてヤフー検索等のバックエンド開発を担当。2021年よりは全社横断部署のデータサイエンティストとして、社内プロダクトや人事施策の効果検証・アルゴリズム開発・機械学習活用等に従事。

なぜLINEヤフーは「360度評価のバイアス除去技術」の開発に取り組んだのか
――まずは本取り組みの「360度評価のバイアス除去技術」の取り組み概要について教えてください。佐久間氏:360度評価は多くの企業で実施されていますが、評価者や所属部署によって方針が異なり、点数に適正とは言えない差が出ることが知られています。例えば、ある個人や組織で10点満点中7~10点を中心に付けることもあれば、別の個人や組織は3~5点を中心とすることもあります。そのため個人間や組織間での相対評価の指標としては扱いづらく、360度評価の数値を見る時は、「高すぎる」「低すぎる」を個々人が頭の中で調整するのが実情で、個人内の強み弱みや成長は捉えられても、個人間の相対比較をするには結果に信頼が置けない側面がありました。
こうしたバイアスを除去し、真の活躍や能力を明らかにして、360度評価で導き出された数値を個人や組織をまたいで比較可能なものにしようというのが今回の試みです。対外的にデバイアススコアと呼んでおり、バイアスを除去したスコアをそのまま、つまり調整不要で見られるようになっています。これによって、例えば職種が異なるデザイナーとエンジニアの活躍の比較も可能にしています。
山内氏:バイアス除去の開発プロジェクトは5年前から、統合前のヤフー株式会社で進めていました。360度評価は一般的には一定レベル以上の役職者のみに行われることが多いのですが、ヤフーは全社員を対象に半年に1回実施しており、蓄積されたデータをより有効に活用したいという思いがありました。2023年10月に経営統合した際、LINE株式会社でも全社員を対象に360度評価を行っており、同様にデータの蓄積がありました。このため、両社で課題を共有しながら、プロジェクトを継続することになりました。

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この後、下記のトピックで、インタビューが続きます。
●なぜLINEヤフーは「360度評価のバイアス除去技術」の開発に取り組んだのか
●評価者は360度評価への見方が変わり、社員の活躍の可視化や正当な評価も生み出される
●バイアス除去技術を360度評価以外の人事領域にも活かしていきたい
