どの企業にとっても、優秀な人材の確保は重要な経営課題だ。「採用面接」の場でいかに応募者の適性や資質を見抜いていくか。多くの人事担当者、面接官が頭を悩ませているだろう。せっかく採用に至っても、ミスマッチが発生しては意味がない。そこで、本稿では「採用面接」の基本的な流れや質問例を紹介し、応募者の適性を見極めるポイントを解説。また、聞いてはいけない質問やマナー、評価基準についても整理していく。
オフィスでの会社面接採用試験シーン

「採用面接」に欠かせない面接官の役割とは

「採用面接」とは、企業が新たに従業員を採用するにあたって行う面接試験だ。新卒・中途採用にかかわらず実施されている。日本企業では、採用における面接の位置付けが大きく、ほぼすべての企業で「採用面接」を行っている。しかも、最初は人事担当者からスタートし、配属部門の管理職、社長や役員などと役職が上がっていくケースが多い。

「採用面接」と聞くと、企業が応募者を選びわける場というイメージが強いが、本質的には企業と応募者がお互いに意向をすり合わせる場と捉えられる。結果的には、その方が入社後のミスマッチを防ぐことができる。

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●面接官の役割について

・求職者の見極め
面接官の役割は、まず応募者のスキルや志向性、人物像、価値観、仕事やポジションへの適性などを見極めることである。そのためにも、応募者が少しでも話しやすい雰囲気を作ったり、先入観に捉われずにあらゆる角度からの質問を投げかけていったりしていくことが重要だ。

・会社の魅力付け
その一方、面接官には応募者に会社を魅力付ける役割も求められる。応募者からすると、面接官は企業の顔でもある。その会社にどんな魅力や強みがあるのかを知る扉ともなってくると言って良い。そもそも応募者は複数の企業にエントリーしているはずである。それだけに、面接官は自分を通じて自社を選んでもらおうという姿勢も望まれる。

●面接官を選ぶ際のポイント

面接官をどう選定したら良いのかは、難しい問題といえる。一般的には、社内で活躍している人材が起用される。応募者に、「この人のようになりたい」とイメージさせることができれば、入社意欲が高まるからだ。

また、職種別採用やコース別採用であれば、配属先の現場責任者が面接者を務めるのが望ましい。必要なスキルや能力がわかっており、職場環境と馴染めるかどうかも判断がつきやすいからだ。さらに、中堅・中小企業であれば、社長や経営陣自らが面接者を務めることで、経営トップ自らの言葉が、応募者に響きやすくなるだろう。

●面接官に求められる姿勢と心得

面接官に何より求められる姿勢は、公平性と誠実さを持ち、応募者を尊重して向き合うことだ。面接は評価の場であると同時に、自社を知ってもらう場でもある。応募者が話しやすい雰囲気をつくり、傾聴の姿勢を示すことで、真の人柄や能力を引き出せる。質問は相手の緊張をほぐしながらも、本音を引き出せるよう工夫したい。一方的な尋問ではなく、対話を通じて応募者の価値観や思考プロセスを理解しようとする姿勢が大切と言える。

また、先入観にとらわれず客観的に評価することが求められる。学歴や外見に惑わされず、その人の本質的な能力と人柄を見抜く目を養うことが重要だ。同時に、自社の魅力や課題を正直に伝えることで相互理解を深め、優秀な人材に「この会社で働きたい」と思ってもらう責任も担っている。そうした信頼関係を意識した対話が、入社後のミスマッチを防ぐことにつながる。

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「採用面接」の基本的な流れ

次に、「採用面接」の基本的な流れを取り上げたい。

(1)アイスブレイク

「採用面接」の場に臨むとなると応募者はかなり緊張してしまい、自分らしさや本来の良さを上手く表現できないことがある。いきなり本題に入ることはせず、まずは応募者の緊張感を和らげ、自然体で話せる雰囲気を作り出す必要がある。いわゆる、アイスブレイクの時間を設けるということだ。当日の天候や今日のニュースなど、身近な話題を振ってみるのも良いだろう。

(2)自己紹介・自己PR

次は、応募者に自己紹介をしてもらおう。基本的には、職務経歴書に沿って話してもらえば良い。その中で気になった箇所や、もっと深掘りしたい点があれば、その都度質問し、応募者の理解を深めていくようにしたい。

(3)応募者への質問

応募者がどんなタイプの人間なのか、入社に向けて何を希望しているのか。これらを理解し、自社への適性があるかどうかを見極めていくためにも、いくつかの質問を応募者に投げかけたい。

(4)応募者からの質疑応答

実際に働いてもらうことになった場合に、どのような職務を担当するのか、労働条件はどうなっているのか。面接官から説明して終わりではなく、それらに関して、応募者に気になる点やもっと知りたいことを聞き出すようにする必要がある。お互いの理解・意思疎通を図ってこそ、納得の行く「採用面接」となるからだ。

(5)締め

最後は、面接を受けてもらったことに対する感謝を伝えるとともに、採用に関する今後の流れを説明しよう。

「採用面接」で自社に合った人材を見抜く質問を一挙紹介

「採用面接」でどんな質問をすれば、応募者の適性を見極めることができるのか。具体的な質問例やポイントを紹介していこう。

●コミュニケーションスキルを確かめる質問

多くの企業が、コミュニケーションスキルを評価項目として重視している。論理的な話し方や、聞き手に伝わりやすい説明ができるか、対人対応力を確認するためだ。あえて漠然とした質問をして、応募者の思考特性や理解力を探るのもお勧めだ。

【質問例】
・自己紹介をお願いします
・最近印象に残った出来事を教えてください
・好きなものを教えてください
・仕事を進める上でのコミュニケーションとして何を重視していますか

●働き方・キャリア観に関する質問

入社後のミスマッチや早期の離職を防ぐために、自社の業務内容や社風と合うのか、経営理念やビジョンに見合った人材かを見極める必要がある。そのために、働く上で大切にしている価値観は知っておきたい。

【質問例】
・前職でストレスを感じたことがありましたか、その時にどう対応しましたか
・今後、どのような業務や分野にチャレンジしていきたいですか
・理想的な働き方・職場環境について教えてください

●価値観や思考の特性、人柄を知る質問

一緒に働く上では価値観や思考の特性、人柄が、自社の労働条件や職場と合致するのかを見極めなければいけない。モチベーションの源泉、失敗や成功体験からの学び、周囲との関係構築の工夫などが見極めたいポイントだ。ただし、アプローチの仕方によっては、モラハラやセクハラに取られがちなので、慎重に質問しなければいけない。

【質問例】
・仕事をしていく中で、どのような点を褒められるとモチベーションが高まりますか
・周囲からどんな性格だと思われていますか
・どのような時に仕事のやりがいを感じますか

●経験・スキルを確認する質問

自社で即戦力となるか、過去の実績の再現性を確認する必要がある。具体的な成果・役割、工夫した点、再現性や応用可能性を質問する。応募者の経験やスキルを確認したい場合には、率直な質問を繰り返すことが良い。

【質問例】
・営業成績が評価され社内で表彰された時、どのように工夫されたのですか
・この業務では英語で顧客とかなりハイレベルなやり取りをしますが、対応できますか
・前職で達成した成果、売上や実績などを定量的に説明していただけますか
・目標未達や失敗体験はありますか、その時にいかにリカバリーしましたか

●仕事の進め方を把握する質問

配属予定先のメンバーとの協力関係が構築できるか、業務を進める上で何を重視しているかなど、現場との関係性がどうかも確認したい。方向性にずれがあると応募者はもちろん、既存の社員にも負担が掛かってしまうからだ。

【質問例】
・チームではどのような役割を担うことが多いですか
・タスク管理はどうされていますか
・ミスやトラブルが発生した場合、どのように対応していますか

●中途採用での退職理由に関する質問

定着度を見極めるためにも、退職理由はぜひ聞きたい質問だ。同じ理由での早期離職が起きるリスクはあるのか、価値観の根本的なズレがないか確認するために重要となる。応募者はなかなか本音を言わないことがあるので、「なぜ」を繰り返し深掘りしていく必要がある。

【質問例】
・前職を退職した決め手は何だったのでしょうか
・次の転職先でどんなことがあったら、間違いなく退職を考えてしまいますか
・今回転職で譲れない条件は何ですか

●志望度や入社意欲を測る質問

志望度や入社意欲は、入社後にモチベーション高く働けるかにも関係してくる。ぜひおさえておきたい質問と言える。応募先の理解度、他社比較と一貫した志向性を見極めたい。

【質問例】
・弊社を志望した理由は何ですか
・今回の応募先で重視している点を教えてください
・入社後に仕事を自由に選べるとしたら、何をしてみたいですか
・入社後にどんな活躍・成長をしたいですか

●カルチャーマッチを確認する質問

どの会社にも独自のカルチャーがある。採用する上で応募者がそのカルチャーをどう捉えているのか、そしてマッチしているかを見極めておきたい。これを見逃すと、離職率の向上につながってしまうリスクがある。

【質問例】
・どのような環境で働きたいと思っていますか
・組織で活動していく上でのポイントは何だとお考えですか
・理想とする上司や同僚像を教えてください

●ストレス耐性を見極める質問

社会環境が日々劇的に変化していることもあって、応募者のストレス耐性を重要な評価項目とする企業が増えている。応募者がどんな時にストレスを感じるか、またその際にどう対処しているかを聞くことで、応募者のセルフマネジメント力を見極めることができる。

【質問例】
・ストレスをどのように発散していますか
・挫折した経験はありますか、そこから何を学びましたか
・過度なプレッシャー下での対処法は何ですか

●アイスブレイクで使える質問

緊張を和らげ本音や素顔を引き出し、面接の雰囲気をポジティブにするための質問も大切だ。アイスブレイクには、YES・Noで答えられるシンプルな質問や気軽に答えられる質問を心がけたい。二つ、三つの質問を重ねていくだけでも、かなりリラックスした雰囲気を作ることができるだろう。

【質問例】
・今日はかなり寒いですね
・こちらまでは迷わずにたどり着けましたか
・趣味や特技は何かありますか
・今日は緊張されていますか


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「採用面接」の評価基準とチェックポイント

自社に適した人材を見極めるには、「採用面接」での評価基準を明確にし、客観的に候補者を判断していくことが大事になる。面接官間の認識を合わせることで、評価のばらつきを防ぐことができるからだ。

●評価項目を統一する

「採用面接」の評価を行う際には、評価項目を企業として統一することが不可欠だ。例えば、コミュニケーション能力、主体性、問題解決力、協調性といった項目を設定し、それぞれ具体的なチェックポイントを設ける。この時、「コミュニケーション能力が高い」といった曖昧な表現ではなく、「相手の話を最後まで聞き、的確な質問で理解を深められる」など行動レベルで判断できる基準を作成すると良い。そうすることで、面接官の主観や基準の違いによるブレを防ぎ、より公平で透明性のある評価ができるようになる。

また、評価は定量的なスコアと定性的なコメントの両面で行うと、合否判断が明確になりやすい。

●面接官同士で認識を揃える

複数の面接官が評価に関わる場合は、事前に評価基準や項目を共有し、認識を合わせることが重要となる。面接官ごとに評価基準や重視ポイントが異なると、結果のばらつきや不公平感が生じてしまうからだ。

面接中の役割分担も明確にし、誰がどの項目を重点的に評価するかを決めておくと良いだろう。面接後には意見交換や振り返りの場を設け、各面接官の評価理由を具体的に共有し、大きな乖離がある場合は再度議論を行う。こうした丁寧な選考プロセスが、組織としての採用力につながる。定期的な面接官研修を行うことも推奨したい。

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「採用面接」で聞いてはいけないこと、やってはいけないこと

応募者の真意を見極めたいからと言って、何でも質問して良いということではない。NGな質問・行動があるので、それらを紹介しておきたい。

●聞いてはいけない質問

当然ながら、本人のプライバシーに関する質問や業務と関連性のない質問は許されない。例えば、応募者の家族に関する個人情報や家庭環境、さらには信仰する宗教、支持政党など基本的人権にかかわる質問はNGである。

【関連記事】採用面談の場面で「家族」の話題はNG? “就職差別”とならない選考採用のポイントを解説

●マナー・態度

“少しくらい面接の時間に遅れても問題ない”、“応募者の話を聞こうとしない”といった態度は許されるものではない。応募者に不快感を与えてしまえば、入社意欲は急激に低下してしまう。お互いに社会人であり、最低限のビジネスマナーは守る必要がある。応募者は、面接官を通じてその企業の姿勢を見ていることを忘れないでほしい。

●パワハラ・セクハラ

面接官にそのつもりがなかったとしても、応募者に少しでもパワハラやセクハラだと感じさせるような質問や態度も絶対にしてはいけない。ありがちなのは、“交際相手がいるか、いないか”、“結婚の予定があるかないか”といった質問だ。結婚や出産による離職を心配しているのかもしれないが、セクハラや女性差別だと言われかねないので注意が必要だ。

まとめ

最近は相手にプッシャーを掛ける圧迫面接という手法は少なくなってきた。むしろ、どうしたら応募者にリラックスしてもらえるかを考えている企業が多く、とても良い傾向と言える。リラックスができれば、応募者も自分の本音・本心を発言しやすく、面接官は人となりが把握しやすくなるだろう。そうした雰囲気を作ることができれば、面接官も自社の魅力を伝えやすく、応募者の共感も得られやすい。

もう一点、留意したいのは面接官によって選考にばらつきがないようにすることだ。どんな人材を求めているのか、どのように評価するのかなど、事前に会社としての基準を作成し、共有しておきたい。結果的に、より質の高い「採用面接」になるはずだ。

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