
不要になりつつある「厚生年金等の加入義務」の賃金要件
短時間労働者が厚生年金などに加入を義務付けられるのは、現行制度では次の5要件が揃った場合とされている。●労働時間要件 … 週の所定労働時間が20時間以上であること
●賃金要件 ……… 所定内賃金が月額8.8万円以上であること
●雇用期間要件 … 2ヵ月を超える雇用の見込みがあること
●学生除外要件 … 学生でないこと
今回の年金制度改正法には上記のうちの賃金要件を撤廃するなど、次の4項目の実施が定められている。
2.企業規模要件の撤廃
3.個人事業所に対する社会保険加入の強化
4.支援策の実施
本稿では「賃金要件の撤廃」について見ていこう。
現行の短時間労働者の社会保険加入要件では、前述のとおり「所定内賃金が月額8.8万円以上であること」という賃金要件を充足した場合に、その他の要件も満たすと加入が義務付けられる。ところが、賃金要件の撤廃が決定したため、法施行後は加入に際して賃金額は問われないことになる。ただし、賃金要件の撤廃により、所定内賃金が月額8.8万円未満でも社会保険加入が求められるということではなさそうだ。
過去20年間、わが国の最低賃金は右肩上がりを続けてきた。そのため、「所定内賃金が月額8.8万円以上であること」という要件をあえて設けなくても、「週の所定労働時間が20時間以上であること」を求める労働時間要件を充足していれば、自動的に所定内賃金が月額8.8万円以上となるケースが生じている。
例えば、2024年度の東京都の最低賃金は1,163円である。この条件で週20時間の勤務を行うと、所定内賃金の月額はおよそ10万円(≒1,163円×20時間×52週÷12ヵ月)になる。このような事情から、短時間労働者の社会保険加入における賃金要件は不要になりつつあるとの見方もできよう。
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この後、下記のトピックで、コラムが続きます。
●「106万円の壁をなくしたい」との政策的意図も
●「年金制度改正法」施行は法律の公布から3年以内
●「厚生年金等の加入義務」の賃金要件撤廃による社会保険加入者は110万人