人に関わるビッグデータを活用し、よりよい人事的意思決定を遂行していくことで従業員の幸福度を上げ、それにより全社的なビジネスパフォーマンス向上を目指す──そうした大層な大義名分のもと、注目が高まったピープルアナリティクスですが、従業員や候補者に関わるデータを扱う上での明確なデータガバナンスやポリシーを確立していなかったり、下流へのエフェクトを深く考えず採用や評価のプロセスにAIを取り込んでしまったりしたことで、トラブルになるケースも散見されます。
ただし、それらの失敗事例だけを見て「人事領域にはデータ活用、AI・機械学習を取り込むべきではない」と結論づけてしまうのは性急すぎます。人事領域は恐ろしいほどマニュアル作業やルーチンワークが多く、その過程で意思決定がお粗末になってしまうことも多くあります。むしろ機械にやらせた方がよい作業や、意思決定の客観的な補佐が必要となる業務も多いと、現場経験者なら誰でも思うはずです。要はデータにしろAIにしろ、使い方と使いどころを間違えないことが重要なのです。

今回は、ピープルアナリティクスを効果的に行う上で必ず頭の片隅に留めておくべきデータガバナンスに対する心構えと、AIの罠(と可能性)について話したいと思います。

データの権利は誰のもの? トラブルを避けるための心構えとは

ピープルアナリティクスは、そのアプローチや内容がどんなものであれ、候補者もしくは従業員の個人情報を使用することが前提にあると思います。ですからまず大前提として、彼らの権利が守られることが重要です。分析に使用する従業員の個人情報、すなわち、組織で働くうえで取得された従業員データを、商業的利用目的ではなく会社の運用目的のために(場合によっては第三者機関やツールにおいて)使用することへの合意を、個々の従業員(または応募者)から書面で事前に得ている必要があります。トラブルを未然に防ぐためにも、分析する対象のデータが蓄積されているシステムの利用規約や、従業員規則/雇用規約、または採用応募プロセスでデータ使用の了承が取られていることを確認しましょう。その上でピープルアナリティクスに取り組むべきです。

こうした対象者の事前了承は、データガバナンスのステップ1です。その他にも、企業が考えなくてはならないデータ周りの確認事項は多くあります。データを用いてなんの課題を解決するのか。誰が、どんな時にデータへアクセスするのか。どのくらいの頻度でポリシーは見直されるべきか。

最近では、企業の従業員ガイドブックや雇用規約(または応募フォーム)にデータガバナンスという項目を設け、これらのデータの利用権について言及をする企業も増えているようです。データガバナンスは、自社のピープルアナリティクスがどのレベル感で何を行なっているかにより変わるものでもあるので、都度見直しながらデータポリシーと向き合い、固めていくことが大切でしょう。

AI採用の失敗と成功。明暗を分けたのは“使いどころ”