本連載「人財資源を最大活用する“科学された人事”が目指すデータ活用の未来」もいよいよ最終回となりました。ここまでお付き合い、ご高覧いただいた皆さまには大変感謝しています。これまで小川はGoogle本社の人事戦略室でのHR実務経験から、トランはマーケティングや新規事業開発のDXを推進してきた周辺分野の知見から、人事分野でのデータ活用について考察を行ってきました。最終回の今回は、これまでの記事内容を振り返りつつ、今後どのようにピープルアナリティクスが浸透し、人事部がどう進化していくかについて対談形式でお届けしたいと思います。

人事の未来はプロアクティブ&戦略的なビジネスパートナー

小川:改めて、今回の連載企画、お疲れ様でした! バックナンバーを振り返ってみましたが、昨年の12月から最終回まで、実に9ヵ月に渡る企画になりましたね。最初は途中でネタが尽きたらどうしようとも思っていましたが、書いてみると共有したい事例や切り口がたくさんありました。

トラン:体系立ててまとめ、それをコンテンツ化できたことは、本業にも活かされたと感じますね。

小川:連載では、「今後人事領域にデータ活用の波がくる」と様々な切り口で紹介してきましたが、それによって未来の人事部はどう変わっていくと思いますか?

トラン:まず、リアクティブな役割から、プロアクティブに。オペレーショナルな役割から、より戦略的な役割が求められるようになると思います。経営や現場と足並みを揃えながら組織のサポートをしてくれる、ビジネスパートナーとしての人事が必要になってくるでしょう。

小川:たしかに、人事領域の権威が最近口を揃えて提唱する“今後の大きな2つのトレンド”は、(1)オペレーショナルな業務の機械による自動化、(2)(それに伴う)バックオフィス要員の縮小傾向ですよね。従来のマニュアルでオペレーションヘビーな職種から、よりスマートに、よりテックに強い部門への生まれ変わりが求められそうです。その上で、機械ではできない人事の専門性を持っていることを前提に、戦略的な意思決定のサポートが求められるということですね。ちなみに長年現場サイドにいた身として、トランさんが人事に求める、ビジネスパートナーとしてのプロアクティブなサポートとはどんなものですか?

トラン:うーん……それで言うと、今までの人事の印象は、ビジネスパートナーというよりは警察寄りで。悪いことをする従業員を取り締まる役割や、評価や入社に伴う労務管理などの印象が強く、それ以外のところで何をしているのかいまいちビジビリティがなかった気がします。また、現場で何が起きているかの理解やアクションも遅れてしまいがちな印象でした。

小川:なるほど。確かに人事の役割は、現場にとってブラックボックスなことも多いですよね。ビジネスパートナーとしての立ち位置を築くには、そのあたりのイメチェンも必要なのかもしれません。

昔、私の先輩で、現場の部門長からビジネスパートナーとして、とても信頼されていた方がいました。例えば彼女は、現場が忙殺されて採用基準に妥協しようとしていたとき、「現場の作業要員が足りないからと言って、採用基準を妥協していませんか? この人が数年先までチームで活躍できるイメージが沸かない限り、選考を進めるべきではありません。良い候補者がパイプラインに入ってきていないなら、そこを修正する協力はいくらでもしますから。妥協することはチームの将来のためにも、候補者のためにもならないです」とアドバイスしていました。そしてパイプライン強化のための施策案をいくつも出し、理想の候補者でポジションをクローズするまで伴走していました。

リクルーターとしては、ポジションを埋めれば手っ取り早く個人の実績になっていたはずなのに、事業のため、チームのためを思い、将来を見据えた判断とその先の協力を惜しまなかったことが、パートナーとして信頼された決め手だったのだと思います。