2017年9月に本格始動した、安倍晋三政権の看板政策「人づくり革命」。担当大臣である茂木経済再生担当大臣は8月の会見で、その目的を、「不足している潜在成長力を高めるための、人づくりの分野などの改革」と説明している。
GDP増加、雇用情勢の改善が進む中、次のステップに進むためには潜在成長力が足らず、「人づくりの分野、生産性の向上、そして未来投資戦略という形で進め」るため、未来への先行投資である人材投資を強化し、「人生100年時代」における生涯現役社会の実現を目指していく。
「人づくり革命」未来をつくる人への投資で、生産性向上を図る

進む「働き方改革」

安倍政権は、少子高齢化という社会の構造的問題を克服するため、「ニッポン一億総活躍プラン」を掲げて取り組みを進めているが、潜在成長力の伸び悩み、中間層の活力低下などを課題に挙げている。持続的な経済成長を実現させるためには、人的資本の質を高め、潜在成長力を引き上げていく必要があるとして、人材への投資を行い、それを通じて経済社会の生産性を上げることを目指す。

日本経済の潜在成長力の底上げにつながる取り組みとして、安倍総理が議長となり、労働界と産業界のトップが参加した2017年3月の働き方改革実現会議にてまとめられたのが「働き方改革実行計画」。「正規と非正規の理由なき格差を埋めることで、能力が評価される納得感を生じさせ、労働生産性を向上させる」「長時間労働を是正して、女性や高齢者の労働参加率の向上につなげるとともに、経営側の工夫を促し、単位時間当たりの労働生産性向上を実現する」「転職が不利にならない柔軟な労働市場を確立することで、労働者自らによるキャリア設計を可能とし、付加価値の高い産業への転職・再就職を通じ生産性向上につなげる」などが、具体的な施策として、法改正とともに取り組まれている。

人材投資の基本は教育

働き方改革とともに、生産性向上の核として挙げられているのが、人材への投資だ。
2017年6月、経済産業省によってまとめられた「経済財政運営と改革の基本方針 2017」の中では、誰もが家庭の経済事情に関わらず、未来に希望を持ち、その能力を存分に発揮できる一億総活躍社会を実現するために、教育が果たすべき役割は極めて大きいとされている。社会も経済も大きく変化した現在、多様な教育が全ての国民にとって真に開かれたものでなければならないとし、社会全体で人材投資を抜本強化する必要があると考えられているのだ。
同方針において、教育への投資では、「人づくり革命」のテーマとしても挙げられている幼児教育の段階的な無償化や高等教育の授業料負担軽減、リカレント教育の充実などが、具体的に検討されている。また、教員の厳しい勤務実態への対応は早急に取り組むべき課題として挙げられており、適正な勤務時間管理の実施や業務の効率化・精選、長時間勤務の是正に向けた緊急対策が、年末までにまとめられる予定だ。

他にも、文部科学省が初等中等教育の学校現場において推進しようとしている新たな学校組織「チーム学校」の運営体制の構築、学校と地域の連携・協働、情報活用能力の育成を含む教育の情報化、幼児教育の振興、安全・安心な学校施設整備、障害者の学習活動の充実などを推進することで、新学習指導要領の円滑な実施のための体制を整備するとともに、子供が社会において自立できる力を育成することが目指される。

女性の活躍推進と少子化対策を両立させる

  • 1
  • 2

この記事にリアクションをお願いします!