会社側が時季指定する「5日」の期限はいつか

「労働基準法」が改正され、2019年4月から、年10日以上の「年次有給休暇」が付与される従業員に対して、有給の日数のうち年5日については、会社側が時季を指定して取得させることが義務付けられた。この5日は、従業員に年次有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内に取得させなければならない。たとえば、前倒しして、入社と同時に有給を10日間分付与した場合は、基準日は「入社日」となり、次の付与日である入社1年目までに、会社は有給を5日間取得させる義務がある。これはわかりやすい。

だが、分割して前倒しした場合には、1回目の基準日から1年以内に2回目の基準日が来てしまう。

前述した例の、「入社3ヵ月目(第1付与日)に3日、残りの7日は入社6ヵ月目(第2付与日)に付与する」という場合を考えてみよう。義務化された「5日時季指定」の条件は「年に10日以上の有給が付与される」ことなので、この条件が満たされるのは、入社6ヵ月目である。そこから1年が期限なので、入社1年6ヵ月目までに、5日間分の時季指定をすることになる。

しかし、次に有給が付与される日は、入社1年3ヵ月目の方が基準である。そうすると、その日からまた1年以内に5日時季指定する義務が発生する。入社6ヵ月目(第1基準日)に発生した5日取得義務の期間1年間と、1年3ヵ月目(第2基準日)に発生した5日取得義務の1年間で、重なってしまう期間が出てくるのだ。

この場合は、第1基準日(入社6ヵ月目)から第2基準日(入社1年3ヵ月目)の1年後となる2年3ヵ月目までの間に、時季指定すればよい。取得させる日数は、1年(12ヵ月)あたり5日の割合となる。つまり、1年9ヵ月(21ヵ月)であれば、比例計算して、9日(21ヵ月÷12ヵ月×5日=8.75日)となる。

そして、入社3ヵ月目に付与された有給のうち、第1基準日までに従業員が有給を取得していたとしたら、その日数は、時季指定すべき9日から差し引いてよい。

一見複雑なようだが、具体的な日付を入れて考えればそれほど難しくない。時季指定の期限をしっかり把握しておこう。


李怜香(り れいか)
メンタルサポートろうむ 代表
社会保険労務士/ハラスメント防止コンサルタント/産業カウンセラー/健康経営エキスパートアドバイザー
http://yhlee.org
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