「年次有給休暇」は、入社6ヵ月後に8割以上の日数出勤していた従業員に付与する、というのが、労働基準法で決まったルールだ。「労働基準法」をはじめとする労働法は、最低基準を定めており、法律以上の待遇にするのは差し支えない。有給についても、入社から6ヵ月待つのではなく、もっと早い時期に付与することも認められている。しかし、そこには一定のルールがあり、それを守らないと前倒し事態が認められないので、注意が必要だ。
「年次有給休暇」を前倒しで付与するときのルール

年次有給休暇の「次回付与日」と「出勤率算定」の原則

法定通りであれば、入社6ヵ月目の当日が最初の年次有給休暇付与日、次は1年6ヵ月目の日、そのあとは1年が経過するごとに付与日がやってくる。たとえば、入社3ヵ月目に3日(第1付与日)、残りの7日は入社6ヵ月目(第2付与日)に与えたとすると、次の付与日は、第1付与日、それとも第2付与日、どちらの「1年後」になるのだろうか。

これは通達(1994年1月4日「基発第1号」)で考え方が示されており、「第1付与日の1年後」、または、それよりもっと前にしなければならない。「前倒しにした期間か、それ以上の期間、次の付与日も前倒しになる」と覚えておこう。

最初の10日を分割して与える例を出したが、入社3ヵ月目に10日分すべて与えてもよい。さらに、前倒しにする期間も、3ヵ月と決まっているわけではなく、入社日や入社1ヵ月目の日など、会社が自由に決めてよい。ただし、どの場合も、次の付与日は前倒しした付与日の1年後、もしくは、それより前にしなくてはならない。

次に、有給休暇を与えるときに「出勤率」を算定する。この期間についても、前倒しする場合は、通常とは違う取り扱いになる。たとえば、入社3ヵ月目に有給休暇を与える場合、「8割出勤したかどうかの計算は、入社から3ヵ月間を計算すればよい」と思いがちだ。だが、これも前述の通達で示されており、「入社から6ヵ月目まで」について計算することになる。

ただ、入社4~6ヵ月の間は未経過なので、「すべて出勤したものとして計算する」ことになっている。たとえば、入社1ヵ月目に前倒しして有給を与えることになっている場合、1ヵ月の間にインフルエンザで5日休み、月間の労働日数22日という従業員がいたとすると、8割の出勤率を満たせなくなってしまう。これでは不合理だ。だが、残りの5ヵ月間の出勤率100%で計算すれば、8割が満たせるはずだ。

会社側が時季指定する「5日」の期限はいつか

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