ここでいう「逸脱」は、身勝手なルール違反ではない。既存の枠組みや「当たり前」への小さな違和感を課題として捉え直し、新しい価値を生み出そうとする建設的な行動を指す。
出発点は、石山氏に寄せられた相談にある。『越境学習入門』の刊行後、ある勉強会の主催者から、メンバーが職場で「余計なことをするな」と受け止められ、解散を考えているという悩みが届いた。越境学習者は、学びを持ち帰った職場でも壁にぶつかり、「二度死ぬ」という。個人の努力だけでは限界がある。著者は、組織の側のマネジメントに目を向けた。
一方の伊達氏は、逆の経験をしている。東京で働きながら神戸のゼミに通っていたころ、十分に出席できない自分を、指導教員は「ニューウェーブ」と呼んで受け止めた。また、既存の経営学を批判する持論も語っていた自分を面白がってもらえたのである。この経験が、逸脱に挑む勇気になった。二人は、こうした「伴走者」の存在こそが、逸脱を組織の力に変えると考える。
その方法が、個人の強みを感知し(Sense)、挑戦を鼓舞し(Try)、才能を開花させる(Grow)という「STGモデル」である。越境学習の伴走者への調査研究を土台に、日常の1on1や会議で使える10の実践スキルを、通信会社を舞台にしたストーリーとともに整理している。
想定する読者の中心はマネジャーだが、逸脱する当事者であるメンバーや、経営陣、事業部門、人事部門にも読んでほしいという。章ごとにスキルとケーススタディが並ぶため、人事部内の輪読会の1冊としてもお勧めしたい。
【書籍基本情報】
『逸脱させるマネジメント 1人ひとりの「はみ出し」を育て、組織の成長に変える技術』
著者:石山恒貴、伊達洋駆
出版社:日本能率協会マネジメントセンター
発売日:2026年8月4日

▼内容紹介
メンバーを既存のルールや手順に従わせる「管理」に、限界や疲れを感じているマネジャーに向けた一冊である。本書が示すのは、個人の強みを感知し、逸脱への挑戦を後押しし、才能を開花させる「STGモデル」だ。すでに持っているマネジメントのスキルを、停滞を破るイノベーションのために使い直す方法を、通信会社を舞台にしたストーリーで紹介する。メンバーと一緒に未知の領域へ踏み出し、試行錯誤を面白がる。正解のない時代におけるマネジャーの新しい役割を描く。
(版元ホームページより)
▼目次
第1章 なぜ今、逸脱させるマネジメントなのか第2章 組織における逸脱の難しさ
第3章 逸脱させるマネジメントの極意とは
【センス】①兆候察知 ②役割解除 ③不安解剖
【トライ】④出島構築 ⑤賛同獲得
【グロウ】⑥組織翻訳 ⑦余白設計 ⑧意味共創
【ベース】⑨資源棚卸 ⑩妄想拡張
第4章 逸脱の芽を育てるアプローチ
第5章 STGモデルによるマネジメント
第6章 強みフォーカス組織をつくるには
第7章 付録:強みフォーカスをニッチ・イノベーションとして根づかせる4段階
▼著者プロフィール
【石山恒貴(いしやま・のぶたか)】法政大学大学院政策創造研究科教授。一橋大学社会学部卒業、産業能率大学大学院経営情報学研究科修士課程修了、法政大学大学院政策創造研究科博士後期課程修了。博士(政策学)。NEC、GE、米系ライフサイエンス会社を経て現職。
専門は人的資源管理、組織行動論、越境学習、キャリア形成、タレントマネジメントなど。経営行動科学学会優秀研究賞(JAASアワード)、人材育成学会論文賞などを受賞している。
【伊達洋駆(だて・ようく)】
株式会社ビジネスリサーチラボ代表取締役。神戸大学大学院経営学研究科博士前期課程修了。修士(経営学)。2009年にLLPビジネスリサーチラボ、2011年に株式会社ビジネスリサーチラボを創業。
専門は組織・人事領域全般の調査・コンサルティング。組織と個人の関係性を巡る領域を特に得意とする。
メールアドレスだけで無料登録する →
▼著者プロフィール
- 1
