2021年新語流行語大賞にノミネートされて以来、さまざまなメディアで見聞きする「Z世代」というワード。若い世代を捉えた言葉だが、「Z世代」が社会で働き始める時代となり、人事担当者やマネジメント層にとって身近な存在になりつつある。また、マーケットにおいても「Z世代」の影響力が徐々に高まってきている。その特徴や価値観を理解すれば、採用や育成のヒントとなり、どんな考え方でマーケティング活動を仕掛けていけば良いのかも見えるだろう。そこで本稿では、「Z世代」について意味や特徴・価値観にはじまり、各世代との違い、マーケティング法と接し方まで詳しく解説していきたい。
「Z世代」の意味や由来とは? 年齢や特徴・価値観など詳しく解説

「Z世代」とは

「Z世代」とは、1990年代半ばから2010年代序盤に生まれた若い世代を言う。年齢の範囲を具体的に示すと、2024年現在で11歳前後から29歳前後の世代だ。この世代を米国では「ジェネレーションZ」と命名する。また、ミレニアル世代の次と位置づけ、「ポストミレニアル世代」と称される場合もある。

この世代は、デジタル技術やインターネットが日常生活に深く浸透した環境で育ち、特徴としては、デジタルネイティブやSNSネイティブ、効率主義、強い仲間志向、ワークライフバランス、多様性などのキーワードが挙げられる。

●Z世代の由来・定義

「Z世代」という言葉は米国で発祥した。なぜ、「Z世代」と呼ぶのかと言えば、アルファベット順だからである。実は、「Z世代」の前の世代は「X世代」、「Y世代」とおよそ1世紀毎に呼ばれていた。シンプルに、Yの次はZとなるという流れだ。ちなみに、Zはアルファベットの最終文字となるため、「Z世代」に続く世代は、ギリシャ文字を採り「α(アルファ)世代」と呼ばれている。

「Z世代」が注目される理由

なぜ「Z世代」が注目を集めているのか。その理由について解説していこう。

●消費の中心となっていく世代だから

現在、世界の人口構成比において「Z世代」が約32%(2022年の統計)を占めるとされている。間違いなく、「Z世代」が今後の社会を担っていくことになるだけに、活躍の場をいかに広げていくかが重要とされる。「Z世代」が持ち得る約15兆円もの購買力も魅力だ。それだけに、この世代にいかにアプローチしていくかは、企業にとっての大命題と言える。「Z世代」に受け入れられる商品開発やマーケティングをしなければ、存続が難しいという危機感さえ伝わってくる。

●発信力が高い

「Z世代」はデジタルネイティブとして生まれ育ち、SNSを使いこなす能力に長けている。自身の意見や経験を積極的にオンラインで発信し、大きな影響力を持つインフルエンサーとなる者も少なくない。また、動画コンテンツの制作やライブ配信など、多様な形式で情報を発信することができ、その内容は同世代だけでなく、他の世代にも広く届いている。高い発信力により、社会全体に波及する影響力を「Z世代」の多くが持ち得るのである。

●価値観や生活様式がZ世代を中心に変化している

「Z世代」の価値観は、社会全体に変化を促していると言える。サスティナブル(持続可能)を重視した消費行動、デジタル技術を活用したフレキシブルな働き方や、所有よりも共有を重視するシェアリングエコノミーの概念などが、他の世代の生活様式にも大きな影響を与えている。

「Z世代」の主な特徴・価値観

次に、「Z世代」に見られる特徴や価値観を掘り下げてみたい。

●働き方の特徴・価値観

既に「Z世代」の一部は、社会人として働いている。だが、実は働き始めた頃に新型コロナウイルスの感染拡大に見舞われた「コロナ世代」でもあり、入社直後からリモートワークが主体であった。それだけに、オフィスに出社してコミュニケーションを図りたいと言う割合が高い。また、日本の「Z世代」だとワークライフバランスを重視する傾向が目立つ。仕事も大切だが、プライベートも同等に大事にしたいと考えている。

●購買の特徴・価値観

サスティナブルが、「Z世代」に見られる購買活動(消費活動)のキーワードだ。言い換えれば、人や社会・地域・環境に配慮した「倫理的(エシカル)消費」に対する意識が強いということ。なので、似たような商品であれば、「環境に優しい」、「会社として社会的課題の解決に取り組んでいる」商品が選ばれやすい。また、価値観が保守的なこともあって、商品選びでも「失敗したくない」という気持ちが強い。何か買い物をする前に、スマホなどを活用して事前にしっかりとリサーチするだけでなく、ユーザーの評価を重視するのもその一例だと言っていいだろう。

●経済行動の特徴・価値観

「Z世代」は、両親やひとつ上のミレニアル世代が不況を切り抜けた姿を見て育っている。経済が不安定であることを理解しているため、無駄遣いは少なく将来の資産形成について非常に慎重だ。金融リテラシーの向上に熱心で、投資アプリやオンライン金融サービスを積極的に活用する傾向があり、暗号資産(仮想通貨)などの新しい金融商品にも関心が高い。

●情報収集・発信の特徴・価値観

「Z世代」は、テレビや雑誌・新聞などのメディアよりもSNSや動画共有サービスを活用して情報収集する傾向が強い。しかも、検索エンジン以上にSNSでつながっている友人や有名なインフルエンサーの発言、コメントを重視しがちだ。さらには、目的に応じてSNSを使い分けている。一方、情報発信もSNSで行うのが主流だ。その際のポイントが、「映え」だ。「インスタ映え」という言葉があるように、写真を撮影し、アプリで加工し投稿するケースが多い。

●コミュニケーションの特徴・価値観

気の合った仲間にわかってもらえれば良いというコミュニティ意識が強いのも、「Z世代」の特徴だ。逆に、仲間以外にはあまり自己主張もしないし、承認されにくい環境だと意見を発言しなかったりする。

●テクノロジーに対する特徴・価値観

「Z世代」は、生まれた時からデジタル技術に囲まれて育った世代だ。そのためスマートフォンやタブレット、ソーシャルメディアは彼らの日常生活に自然と組み込まれている。AI(人工知能)やVR(仮想現実)、AR(拡張現実)等の先端技術にも高い適応力を持ち、これらを教育、仕事、娯楽など様々な場面で積極的に活用している。

●教育に対する特徴・価値観

「Z世代」は、教師主導型である従来の教育方法に加え、オンライン学習やブレンド型学習(対面とオンラインの併用)に慣れ親しんでいる。幼少期からロボットやIT技術に触れるSTEM(科学・技術・工学・数学)教育への関心も高く、より実践的な学習方法を好む傾向もある。また、生涯学習の概念を自然に受け入れ、常に新しいスキルを学ぶ姿勢を持っている人が他の世代と比べて比較的多い。

●社会的意識の特徴・価値観

「Z世代」は社会問題に対して関心を持ち、就職先企業には社会問題や環境問題に対する貢献度の高さを強く求める特徴がある。また、人種差別や性差別、LGBTQ+の権利擁護にも関心を持っている。

●メンタルヘルスに対する特徴・価値観

ストレスや不安、うつなどの精神的な課題についてオープンで、専門家のサポートを求めることに抵抗が少ないのも「Z世代」の特徴だ。一方で、SNSでの過剰な誹謗中傷などのトラブルにも直面する機会があり、デジタル時代特有のメンタルヘルスの課題にも直面している。そのため職場においても、メンタルヘルスケアを重視する傾向がある。

「Z世代」と各世代との違い

世代を表わす言葉は、「Z世代」以外にも色々ある。それぞれの特徴や価値観、「Z世代」との違いを併せて説明していきたい。

●Z世代とX・Y世代の違い

X世代(ジェネレーションX)とは、1960年代後半から1980年頃生まれの世代を指す。日本で「団塊ジュニア世代」と呼ばれる世代もここに含まれる。「Z世代」との違いで顕著なのは、情報収集源だ。X世代はテレビの位置付けが非常に高い。また、キャリアの成功体験が強い点も見逃せない。

Y世代(ミレニアル世代)は、1980年代序盤から1990年代半ば生まれの世代を意味する。「ゆとり世代」と呼ばれる世代が、一部重なっている。年代が近いこともあって「Z世代」とY世代は共通する特徴が多いが、Y世代は不安定な雇用環境を経験しており物事を懐疑的に見る傾向がある。

●Z世代とα世代の違い

「Z世代」に続くのが、α(アルファ)世代(ジェネレーションα)だ。2010年代前半から2020年代半ばにかけて生まれた世代を指す。この層は、「Z世代」よりもはるかにデジタルネイティブだと言える。何しろ、生まれた時にはもうスマートフォンやタブレットが周囲にありふれていて、プログラミング教育を受ける機会さえあったからだ。

【各世代の年代と特徴】※年齢はおおよそのもの
世代 別名 生まれた年代 2024年時点の年齢 特徴
X世代 ジェネレーションX 1960年代後半~1980年頃 45~60歳前後 ・信頼重視
・デジタルも活用するが対面重視
Y世代 ミレニアル世代 1980年代序盤~1990年代半ば 30~44歳前後 ・インターネット活用に抵抗がない
・安定志向
Z世代 ポストミレニアル世代 1990年代半ば~2010年代序盤 11~29歳前後 ・デジタルネイティブ
・モノよりコトの体験を好む
α世代 ジェネレーションα 2010年代序盤~ 14歳以下 ・プログラミングが必修
・生まれた頃からスマホネイティブ

「Z世代」が社会にもたらす変化

「Z世代」は、デジタル技術とともに成長し、グローバルな課題に敏感で、多様性を重視する世代だ。彼らの価値観や行動様式は、働き方、消費、社会システムなど、様々な面で大きな変革をもたらす可能性を秘めている。

●働き方の変革

「Z世代」が労働市場の中心となるにつれ、働き方に大きな変化が起こることが予想される。リモートワークやフレックスタイム制のさらなる普及、副業の一般化、さらには、フリーランスとして単発の仕事を請け負うギグエコノミーという働き方の拡大などが進むだろう。また、企業の社会的責任や環境への取り組みを重視し、それらを基準に職場を選ぶ傾向も強まると考えられる。

●消費行動の変化

「Z世代」の影響力が増すにつれ、消費市場も大きく変化していくだろう。サステナビリティを重視する傾向が強まり、社会や環境に対する企業の責任がより重要視されることになる。また、オンラインショッピングやデジタル決済がさらに普及し、VRやARを活用した新しい購買体験なども一般化していく可能性がある。

●テクノロジーとの共存

「Z世代」は、AIとロボットの共存を自然なものとして受け入れる可能性が高い。そのため教育、医療、金融など様々な分野でテクノロジーの活用がさらに進み、新しい社会システムの構築にもつながっていくと考えられる。

●ダイバーシティ&インクルージョンの促進

多様性への意識が高い「Z世代」が今後、社会全体をより包括的な方向に導く可能性がある。職場や教育機関、公共空間などでの多様性の尊重や、インクルーシブな政策が進むだろう。また、ジェンダーや人種、性的指向などによる差別に対してより厳しい目が向けられ、社会全体の意識改革にもつながっていくと予想できる。

「Z世代」への効果的なマーケティング法

続いて、「Z世代」に向けて効果的にマーケティング活動を展開するにはどうしたら良いかを考察してみたい。

●SNSの活用

まずは、SNSの活用は外せない。なぜなら、「Z世代」はSNSの利用率が非常に高く、情報収集を目的として使うケースも多いからだ。しかも、SNSはユーザーとの距離感も近い上に、双方向的なコミュニケーションをしやすいので、商品やサービスの認知度・親近感の醸成につなげられる。ユーザーの声を集めて、ブランディングや商品開発に反映させることも可能だ。もちろん留意すべきモラルがあることは理解しておく必要がある。

●信頼性の高い情報の提供

生まれた頃からデジタルに慣れ親しんできた「Z世代」は、フェイク情報にも数多く接してきている。それだけに、不自然に加工された情報には辟易していると言っていい。むしろ、信頼性の高い情報、本物志向にフィットした情報を求めている。そうしたものを賞賛する気持ちさえ窺える。多少不便なものや歴史を感じさせるものであっても、そこに価値を見出すのが「Z世代」の特徴と言える。

●体験できるリアルコンテンツの活用

モノよりもコトを重視するのも「Z世代」ならではだ。コトとは、旅行やイベントなどのような非日常的な体験やお互いの関係を深め合える場であったりする。それらを体験した様子や得られた気持ちをSNSに広く投稿している。こうした志向に刺さるのが、体験型というキーワードだ。キャンペーンであっても良いだろうし、リアルコンテンツであっても良い。思わず参加したくなる、体験したくなる仕掛けを考えたい。体験者の声がSNSを通じて自ずと拡散していくはずだ。

●動画コンテンツの活用

「Z世代」には動画コンテンツの効果が高い。なぜかと言えば、他の世代と比較してYouTubeやTikTokなどの動画を視聴する量が圧倒的に多いからだ。それらを視聴して、ブランドを認知したり購買する商品を決めたりすることも少なくない。だからこそ、企業としても動画コンテンツづくりに力を入れる必要がある。ただ、タイムパフォーマンス意識が高いので、短めの動画が好まれることも覚えておきたい。

●インフルエンサーの活用

インフルエンサーを活用したマーケティングも有効な手立てだ。インフルエンサーとは、SNSを利用して社会や市場に大きなインパクト、影響力をもたらす人を言う。「Z世代」の大半には、お気に入りのインフルエンサーがいる。しかも、その多くが「Z世代」と年齢が近く、価値観を共有しやすい。それだけに、インフルエンサーが「これが魅力的だ」と発信した商品やサービス、お店、トレンドを受け入れやすい傾向にある。

●ストーリー性を強調する

「Z世代」は消費行動自体に意味を見出し、自分と共通の理念や哲学を持っている企業やブランドの製品を購入する傾向が強い。そのためZ世代に向けてプロモーションするときには、企業やブランドの背景や、製品のストーリーや思いを伝えるストーリーテリングの手法が有効だ。

「Z世代」にしてはいけないこと5選

最後は、「Z世代」にしてはいけないタブーを5つ紹介したい。

●価値観の否定

自分らしさを大切にする「Z世代」は、価値観をとても重視する。それだけに、本人の価値観を否定するような言動は絶対にしてはいけない。あたかも、自分の人格を否定されたと捉えてしまいかねないからだ。場合によっては、心を閉ざしてしまうことさえある。大切なのは傾聴のスタンスだ。本人が何を考えているのか、なぜそう考えるのかなどを知るためにも相手の話に丁寧に耳を傾け、理解していこうという姿勢が求められる。

●プライベートの時間も拘束

ワークライフバランスの重視も「Z世代」では顕著だ。仕事だけが重要なのではなく、プライベートの時間もしっかりと確保したいと思っている。それだけに、上司からあまり意味のない残業や休日出勤を言い渡されることを好まない。自分にとって大切な時間まで拘束するような会社では自分らしく働けないと考え、最悪の場合には退職に至ることもあり得る。

●一括りにカテゴライズすること

「Z世代」の特徴や価値観を理解することは大切だ。しかし、それはあくまでも総体的・全体的な傾向、平均値にすぎない。なので、一括りにカテゴライズするのは禁物だ。一人ひとりに違いがあることを理解し、それぞれと向き合っていく必要がある。昔からよく「これだから困るよね、○○世代は」などという発言が聞かれるが、それがもはや許されない時代であることを認識しなければいけない。

●失敗に対する過度な指摘

「Z世代」には保守的な傾向がある。そのため、リスクを取ってでもチャレンジすることは元々苦手だ。ましてや、何とかチャレンジしたものの結果的に上手くいかなかったというケースで、過度に批判されると精神的に大きなショックを受けてしまう。二度とチャレンジしようと思わなくなる可能性さえある。まずはチャレンジしたという行為を賞賛する必要がある。その上で、失敗した原因を冷静に分析するよう促す流れにしたい。

●背景を説明しない

「Z世代」が自分らしさを大切にすることは既に述べた通りだ。それだけに、何か行動を起こすにしても、事前にSNSなどを活用して必要な情報を選び出し、背景も見極め納得した上で決断を下す傾向が強い。仕事を進める際にも同様のスタンスを好む。なので、上司からただ単に「これをやるように」と指示されるのを嫌がる。背景や意図を丁寧に説明するようにしたい。

まとめ

「Z世代」の特徴を理解し、NG行動を避けるとともに、できればモチベーションアップにつながる行動も心がけたい。それが実践できれば、若手社員の定着(リテンション)にも大きな効果を発揮してくれるはずだ。

有効策の一つは、定期的に1on1などのコミュニケーションの機会を設けることだ。「自分を大切にしてくれている」と感じてもらえる。ただし、あくまでも業務時間内で実施するようにしたい。また、賞賛する文化や肯定してあげる職場づくりもポイントだ。誰しも、自分が認めてもらえていると感じられるのは嬉しいものだが、特に「Z世代」にはその傾向が強い。Z世代の採用や育成、マネジメントをする際に、どうアプローチすればその能力やアイディアを引き出せるかを、ぜひ考えていただきたい。
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