先行きの見通しが難しいVUCAの時代、企業が競争力を高め、持続的な成長を続ける上でデータドリブンな人事はもはや不可欠となっている。2023年度から上場企業を中心に義務化された有価証券報告書での特定項目の開示(いわゆる、人的資本情報開示)は3年目を迎えた。企業の「人的資本経営」の取り組み状況はどのように変化してきているのだろうか。

HR総研では、企業の特徴により異なる人材データの把握・活用・開示、人的資本経営の捉え方や取り組みの実態を把握するアンケートを実施した。第1報では「人的資本経営」に関する調査結果について報告する。

人的資本経営を重視する企業は約7割、2024年からほぼ横ばい

まず、人的資本経営の重視度について2023年(前々年)からの推移を比較して確認してみる。
2025年調査では、最も多かったのは「重要だと認識している」が40%で、次に「やや重要だと認識している」が28%と、これらを合わせた「重視派」(以下同じ)は68%と7割近くに上っている。「重視派」は2024年と2023年がいずれも69%だったことからほぼ同水準で推移している(図表1-1)。

【図表1-1】「人的資本経営」の重視度(2023-2025年比較)

HR総研:「データドリブンな人事と人的資本経営・開示の現状」に関するアンケート(2025年版) 結果報告(第1報)

この結果を企業規模別に見ると、従業員数1,001名以上の大企業では「重視派」が75%と4分の3に上り、すべての企業規模で最も高い。そのうち「重要だと認識している」は50%と半数が回答している。301~1,000名の中堅企業では「重視派」は65%と大企業より10ポイント後退し、「重要だと認識している」は38%と4割未満となった。300名以下の中小企業では「重視派」が65%で中堅企業と同割合だった。ただし、「重要だと認識している」の割合は35%と3社に1社程度となっている。
反対に、「あまり重要だと認識していない」と「重要だと認識していない」を合わせた割合は、大企業と中堅企業では1割未満で、中小企業も15%程度にとどまっている。つまり、「人的資本経営の重要性」は、企業規模を問わず広く認識されていると分かる(図表1-2)。特に、大企業において重視する企業の割合が高い背景には、有価証券報告書での人的資本情報開示義務の対象となる上場企業が多いことが少なからず影響しているのだろう。

【図表1-2】企業規模別 「人的資本経営」の重視度

HR総研:「データドリブンな人事と人的資本経営・開示の現状」に関するアンケート(2025年版) 結果報告(第1報)

人的資本経営の主目的は「従業員エンゲージメントの向上」で7割近く

次に、各企業が「人的資本経営」に取り組む目的を尋ねた結果を見てみる。
本年(2025年)調査の結果では、「従業員エンゲージメントの向上」が最多で68%と7割近くにも上っており、次いで「生産性の向上」が52%と半数程度、「採用力の強化」が46%と半数近くなどとなっている。トップの「従業員エンゲージメントの向上」は2番目の「生産性の向上」に16ポイントもの顕著な差をつけており、多くの企業にとって「エンゲージメント向上」が人的資本経営に取り組む主な目的であることがうかがえる(図表2-1)。

【図表2-1】「人的資本経営」に取り組む目的

HR総研:「データドリブンな人事と人的資本経営・開示の現状」に関するアンケート(2025年版) 結果報告(第1報)

では、各社における従業員エンゲージメントの現状はどのようになっているのだろうか。今回の調査における内訳を見ると、「高い」と答えたのは5%で、「やや高い」が29%で、これらを合計したエンゲージメントが「高い派」(以下同じ)は34%と3割程度となっている。他方で、「低い」は11%、「やや低い」は18%となり、これらを合計したエンゲージメントが「低い派」(以下同じ)は39%と約4割で、「高い派」よりやや多くなっている。さらに、「どちらとも言えない」が37%と最も多くなっており、明確にエンゲージメントが高いと認識できている企業は3社に1社にとどまる現状となっている(図表2-2)。

【図表2-2】従業員エンゲージメントの現在の状況

HR総研:「データドリブンな人事と人的資本経営・開示の現状」に関するアンケート(2025年版) 結果報告(第1報)

【調査概要】

アンケート名称:【HR総研】「データドリブンな人事と人的資本経営・開示の現状」に関するアンケート(2025年版)        
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2025年4月16~30日
調査方法:WEBアンケート
調査対象: 企業の人事責任者・担当者
有効回答:194件

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