HR総研×就活会議:2026年新卒学生の就職活動動向調査(3月) 結果報告 第2報キャリアプランが明確な学生の6割が3月初旬で内定承諾、その決め手とは?
企業の新卒採用活動は昨年以上に早期化・多様化が進んでおり、2026年新卒学生(以下、26卒学生)たちは一層スピード感のある就職活動を迫られている。自身のキャリアイメージの実現に期待と不安を持ちながら自己成長を重視するなど、独自の価値観を持つZ世代の学生たちは、就職活動においても自分らしい選択を模索しているだろう。
このような就活動向を把握するため、HR総研と就活会議(就活会議株式会社)では、26卒学生を対象に2025年3月初旬時点の「就職活動」と「就職意識」に関するアンケートを実施した。本レポートでは、主に学生のキャリアイメージの違いによる「就職活動」と「就職意識」の動向に関する調査結果について報告する。
キャリアプランが明確な学生は4割程度、キャリア教育を受ける機会による違いも
まず、26卒学生の「自身のキャリアプランの有無」について見てみる。
本調査では、キャリアプランとは「将来の仕事や働き方の理想、社会人としてイメージする理想の姿などを実現するための計画」と定義している。
文系・理系ともに「ぼんやりとしたイメージは持っている」が最多で、それぞれ53%、49%と半数程度に上っている。これに次いで、文系では「明確に持っているが、行動はこれからである」が23%、「明確に持っており、実現に向けて行動している」が18%となっており、これらを合計した「明確に持っている」(以下同じ)の割合は41%と4割に上っている。理系では「明確に持っており、実現に向けて行動している」が25%で文系より7ポイント高く、「明確に持っているが、行動はこれからである」が19%となっており、「明確に持っている」は44%と文系と同様に4割程度に上っている(図表1-1)。
少なくとも「ぼんやりと」はキャリアイメージを持っている学生が9割以上とほとんどを占めるものの、「明確に持っている」といえる学生は多数派ではないようだ。
【図表1-1】文理別 自身のキャリアプランの有無
このようなキャリアプランの有無の状況を、「明確に持っている」学生群、「ぼんやりとしたイメージは持っている」学生群、「イメージを持っていない」学生群の3グループに分けて、これらのキャリアプランの有無別に、以降の調査結果の違いをみていくこととする。
「キャリア教育」を受けた経験のある機会については、「明確に持っている」と「ぼんやりとしたイメージは持っている」の学生群では「大学の授業で受けたことがある」が最多で、ともに44%と4割程度となっている。「明確に持っている」の学生群では次いで「大学入学以前に受けたことがある」が18%となっており、2割以下ではあるものの他2グループの1割未満より顕著に高い割合であることが分かる。一方、「イメージを持っていない」学生群では「受けたことがない」が最多で50%とちょうど半数に上っており、次いで「大学の授業で受けたことがある」が35%と4割未満にとどまっている。
したがって、キャリアプランを「明確に持っている」学生ほど、キャリア教育を大学やそれ以前に受ける機会に恵まれていたという傾向が見られている(図表1-2)。
【図表1-2】キャリアプランの有無別 「キャリア教育」を受けた経験のある機会
次に、長期的なキャリアプランの実現に向けた行動に対する不安感の状況をキャリアプランの有無別に見てみる。
いずれのグループにおいても「ややある」が最多となっており、特に「ぼんやりとしたイメージは持っている」学生群では55%と6割近くにも上っている。また、「大いにある」は「明確に持っている」学生群では50%、「ぼんやりとしたイメージは持っている」学生群では13%、「イメージを持っていない」学生群では25%と4分の1に上っており、「イメージを持っていない」学生群での割合が最も高くなっている。ただし、「大いにある」と「ややある」を合計した「(不安が)ある」の割合は、「ぼんやりとしたイメージは持っている」学生群で68%と7割近く、次いで「明確に持っている」学生群で62%と6割、「イメージを持っていない」学生群で55%と6割近くとなっており、イメージを持っている学生の方が持っていない学生より不安感を持つ人が多い傾向が見られている(図表1-3)。
自身の将来に対する理想のイメージを持ったからこそ、それを実現するために行動する中での不安や、どのように行動すべきかわからないなどまだ動けていない自分への不安も、より明確に抱きやすくなるのだろうか。
【図表1-3】キャリアプランの有無別 長期的なキャリアプランの実現に向けた行動に対する不安感
仕事に専門性を活かしたい意向、キャリアプランが明確な学生の7割近く
自身の専門性を活かして働くことへの意向については、まず文系と理系で違いを比較してみる。文系では「学部や大学院での授業で培った知識を活かしたい」が最多で35%、「研究活動で培った知識や経験を概ねそのまま活かしたい」の12%と合わせた「専門性を活かしたい」(以下同じ)の割合は47%と半数近くとなっており、専門性にこだわらない学生も半数程度以上いることがうかがえる。一方、理系では「学部や大学院での授業で培った知識を活かしたい」が最多で38%と4割近く、次いで「研究活動で培った知識や経験を概ねそのまま活かしたい」が30%で、「専門性を活かしたい」が68%と7割にも上っている。したがって、文系より理系の方が「専門性を活かしたい」とする学生の割合が顕著に高いことが分かる(図表2-1)。
【図表2-1】文理別 自身の専門性を活かして働くことへの意向
続いて、キャリアプランの有無別に見てみると、「専門性を活かしたい」は「明確に持っている」学生群では65%、「ぼんやりとしたイメージは持っている」学生群では54%、「イメージを持っていない」学生群では30%となっており、キャリアプランが明確な学生ほど仕事に専門性を活かしたい傾向が顕著となっている(図表2-2)。
【図表2-2】キャリアプランの有無別 自身の専門性を活かして働くことへの意向
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【調査概要】
アンケート名称:【HR総研×就活会議】2026卒学生の就職活動状況に関するアンケート
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)、就活会議(就活会議株式会社)
調査期間:2025年3月6~8日
調査方法:WEBアンケート
調査対象: 2026年卒業予定の「就活会議」会員学生
有効回答:294件
※HR総研では、人事の皆様の業務改善や経営に貢献する調査を実施しております。本レポート内容は、会員の皆様の活動に役立てるために引用、参照いただけます。その場合、下記要項にてお願いいたします。
1)出典の明記:「ProFuture株式会社/HR総研」
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Eメ‐ル:souken@hrpro.co.jp
※HR総研では、当調査に関わる集計データのご提供(有償)を行っております。
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著者:
HR総研
HR総研は働き方・採用・人材育成・マネジメントなどの領域で広く調査を実施し、 その結果を広く社会に共有する調査機関です。
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就職活動への所感について、文系・理系別に見てみる。文系では「やや楽観している」が最多で32%となっており、次いで「やや不安である」が27%と3割近くに上っている。また、「やや楽観している」と「楽観している」を合計した「楽観している派」(以下同じ)の割合は54%と過半数に上っている。一方、理系では「楽観している」が最多で35%と4割近く、「楽観している派」は65%と7割近くに上っており、文系より11ポイントも高くなっている。また、「やや不安である」は15%と2割未満で文系より12ポイントも低く、不安を感じる理系学生は文系より顕著に少ないことがうかがえる(図表3-1)。【図表3-1】文理別 就職活動への所感次に、「楽観している派」の割合に注目してキャリアプランの有無別に見てみると、キャリアプランを「明確に持っている」学生群では72%と7割以上、「ぼんやりとしたイメージは持っている」学生群では52%と半数程度、「イメージを持っていない」学生群では35%となっており、キャリアプランが明確な学生ほど就職活動を楽観していることがうかがえる(図表3-2)。【図表3-2】キャリアプランの有無別 就職活動への所感就職活動を「楽観視」する理由としては、キャリアプランを「明確に持っている」、「ぼんやりとしたイメージは持っている」学生群では「すでに志望する企業から内定(内々定)が出ている」が圧倒的でそれぞれ88%、86%と9割近くにも上っており、就職活動が順調に進行していることで楽観視できていることが分かる。「イメージを持っていない」学生群でも「すでに志望する企業から内定(内々定)が出ている」が最多で57%と6割近くに上っているが、他の2グループよりは顕著に低い割合となっている。一方、「就職活動への苦手意識がない」については「イメージを持っていない」学生群では43%で、他の2グループより顕著に高い割合となっており、就職活動の順調さに関わらず自信を持っている人が比較的多いことがうかがえる(図表3-3)。【図表3-3】キャリアプランの有無別 就職活動を「楽観視」する理由続いて、就職活動でアピールしたい自分の能力をキャリアプランの有無別に見てみる。キャリアプランを「明確に持っている」学生群では「コミュニケーション力」が最多で65%と7割近くで、他の2グループより10ポイント以上高い割合となっている。次いで「チームで働く力」が53%、「論理的思考力」が37%などとなっている。さらに「前に踏み出す力」については35%で4番目に高い割合の項目となっており、他の2グループでは2割程度以下であるのに対して顕著に高い割合となっていることが特徴的である。自分のキャリアプランを明確にイメージできているからこそ、自ずと前進できる自信も身に付けていることが推測される。このような傾向を踏まえると、企業として新入社員に「前に踏み出す力」を身に付けていてほしいと期待する場合は、「キャリアプランが明確であるか」ということは判断基準の一つとして質問してみるのも良いのかもしれない(図表4-1)。【図表4-1】キャリアプランの有無別 就職活動でアピールしたい自分の能力就職活動を開始した時期についても、キャリアプランの有無による違いが顕著となっている。「学部3年5月」までに就職活動を始めている学生の割合を比較すると、「明確に持っている」学生群では57%と6割近くである一方、「ぼんやりとしたイメージは持っている」学生群では43%と4割程度、「イメージを持っていない」学生群では20%と僅か2割にとどまっている(図表4-2)。このように、就職活動の開始時期から見ても、キャリアプランを明確に持っている学生の方が早く動き出している傾向が見られ、前述のとおり「前に踏み出す力」を持っている学生が多いことを実証しているようだ。【図表4-2】キャリアプランの有無別 就職活動を開始した時期次に、2025年3月初旬時点において内定を受けた社数を見てみる。まず、「0社」の割合をキャリアプラン有無別に比較すると、キャリアプランを「明確に持っている」学生群では17%と2割未満、「ぼんやりとしたイメージは持っている」学生群では24%と4分の1程度、「イメージを持っていない」学生群では40%と4割で、キャリアプランの有無による内定有無の状況が顕著となっていることが分かる。「明確に持っている」学生群では少なくとも1社以上から内定を受けている割合が8割以上で、就職活動を楽観視している学生が多いことにも納得できる。また、「3社以上」(「3社」~「10社以上」の合計、以下同じ)の割合は35%と少数派ではあるものの、2割未満にとどまる他の2グループより顕著に高い割合となっている。したがって、キャリアプランが明確な学生は、企業にとって採用ニーズの高い学生となりやすいことが推測される(図表5-1)。【図表5-1】キャリアプランの有無別 現時点で内定を受けた社数(2025年3月初旬現在)このように3月初旬の時点で多くの学生が内定を受けている中、内定承諾や就職活動の終了についてはどのように考えているのだろうか。内定を1社以上から受けた学生について、内定承諾や就職活動の終了の状況を確認したところ、これについてもキャリアプランの有無による意思の違いが明確となっていることが分かった。「内定承諾した、もしくは、内定承諾する企業を決めた」という学生の割合について、キャリアプランを「明確に持っている」学生群では57%と6割近くに上り、「ぼんやりとしたイメージは持っている」学生群では39%と4割、「イメージを持っていない」学生群では僅か17%と2割未満にとどまっており、キャリアプランが明確な学生ほど内定承諾の決断も早くできていることが分かる(図表5-2)。【図表5-2】キャリアプランの有無別 内定承諾と就職活動の状況さらに、内定承諾した企業での採用形式について「総合職採用」と「ジョブ型採用」のどちらかを確認すると、キャリアプランを「明確に持っている」学生群の54%と過半数は「ジョブ型採用」であることが特徴的な傾向となっている。これに対して「ぼんやりとしたイメージは持っている」学生群では36%と4割に満たず、「イメージを持っていない」学生群では対象となる学生数が僅か2名であり全員が「総合職採用」となっている(図表5-3)。【図表5-3】キャリアプランの有無別 内定承諾先の採用形式※「イメージを持っていない」に含まれる件数は2件のため参考値とする。3月初旬という早い段階において、学生が内定承諾を決めた理由について、キャリアプランを「明確に持っている」、「ぼんやりとしたイメージは持っている」という2つの学生群を比較してみる。まず、「明確に持っている」学生群では「仕事内容」が最多で81%と8割に上り、次いで「事業内容」が59%、「勤務地」が56%などとなっている。つまり、自分がこの会社でどんな業務を行い事業に貢献することになるのかを意識して決めている学生が多いことがうかがえる。一方、「ぼんやりとしたイメージは持っている」学生群では「仕事内容」が最多であるのは「明確に持っている」学生群と同様で73%と7割程度、次いで「勤務地」が64%、「会社の雰囲気」が62%、さらに「給与・待遇」と「福利厚生」がともに55%などとなっており、「仕事内容」とともに就業環境を重視して決めた学生が多い傾向となっている(図表6-1)。このように、就職活動のスピード感だけでなく、入社先決定の判断軸にもキャリアプランの明確さの影響が出ているようだ。【図表6-1】キャリアプランの有無別 内定承諾を決めた理由一方、内定を受けたものの「内定承諾を決めかねている」という学生も半数以上いるため、その理由をフリーコメントで聞いてみた。以下にキャリアプラン有無別の主な意見を抜粋して紹介する(図表6-2)。【図表6-2】キャリアプランの有無別 内定承諾を決めかねている理由(1)「キャリアイメージを明確に持っている」学生の場合
| 内定承諾を決めかねている理由 | 文理区分 | | 早期選考は本選考の練習と捉えているから | 文系 |
| 志望業界でないから | 文系 |
| やりたい事業内容ではないから | 文系 |
| 本命企業を受けるため | 理系 |
| 第1志望の結果待ちのため | 理系 |
| これから第一志望の企業の選考に参加するため | 理系 |
| 第一志望の企業の選考がまだ始まっていないため。また、キープ中の企業からは日本のルール上6月までは承諾してもらうことはできないから好きに続けていいと言われているため | 理系 |
| ファーストキャリアとして就職する企業であるかまだ迷っているから | 理系 |
(2)「ぼんやりとしたイメージは持っている」学生の場合
| 内定承諾を決めかねている理由 | 文理区分 | | 他に待遇のいいところを目指す | 文系 |
| 一生に1度の新卒の就活なので他の企業も見てみたいから | 文系 |
| 第一志望ではない | 文系 |
| 視野が狭まっているように感じるから | 文系 |
| 家族に反対された | 文系 |
| 福利厚生 | 理系 |
| もっといい企業があるかもしれないから | 理系 |
| もっと年収が上の企業にチャレンジしたいから | 理系 |
| 他の企業を受けようか迷っている | 理系 |
| 勤務地が遠すぎるから | 理系 |
(3)「キャリアイメージを持っていない」学生の場合
| 内定承諾を決めかねている理由 | 文理区分 | | もっと安定して残業少ない企業に内定もらいたい | 文系 |
| 自分のやりたいことと違うから | 文系 |
| もっと給与が好条件な企業の選考を受けたい | 文系 |
| 進学と悩んでいるから。 | 理系 |
| 本当にここでいいのか迷っているから | 理系 |
| 押さえのため | 理系 |
| あまり派遣業務にいい印象がないため | 理系 |
最後に、特別スキル・能力を持った人材には特別の処遇を提示する動きへの学生の意識を確認してみる。「賛成」の割合を見てみると、やはりキャリアプランを「明確に持っている」学生群では65%と7割近くに上っており、賛成が多数派であることが分かる。また、「ぼんやりとしたイメージは持っている」学生群では57%と6割近くで、こちらも多数派となっている。一方、「イメージを持っていない」学生群では45%と半数近くにとどまり、「どちらとも言えない」と拮抗している。キャリアプランが明確な人ほど、適性や専門分野を自分なりに理解し自信を持てていることで、特別処遇制度を歓迎できるのではないだろうか(図表7)。【図表7】キャリアプランの有無別 特別スキル・能力を持った人材には特別の処遇を提示する動きへの所感
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