企業が今になって「くるみん」の認定を目指すワケ 「次世代育成支援対策推進法」と企業の取り組み(前編)

HRプロ編集部取材×注目人事トレンド

「くるみん」の認定マーク企業が3,000社を突破した。「くるみん」とは、2003年7月に交付された「次世代育成支援対策推進法」に基づく、仕事と育児の両立支援に取り組んでいる企業への認定制度だ。少子化対策の一環として政府が力を入れてきたこの取り組みは、企業にとってもメリットが多く、この数年で認定数が一気に拡大している。なぜ、企業は今さら「くるみん」の認定を目指すのだろうか。その理由を探るとともに、企業の取り組みや課題について紹介していく。

次世代育成支援対策推進法と「くるみん」の認定

深刻な少子化を食い止める特効薬も見当たらない中、日本の未来を担う子供たちの健全な育成を目指して、国を挙げて次世代育成支援対策推進法(次世代法)による取り組みが行われている。2003年に施行された(第2章以下は2005年4月1日施行)次世代法は、もともとは10年間の時限立法だったが、2014年に改正法が成立し、2025年3月末まで10年間の延長が決定。現在多くの企業がこの法律に基づいて、従業員子育て支援の取り組みを推進している。

そうした中、次世代法の存在を世間に広く認知させるきっかけとなったのが、「くるみん」の認定だろう。従業員101人以上の企業の事業主には、一般事業主行動計画の策定および労働局への届出が義務づけられており、届出を行った企業は「くるみん」ロゴマークの使用が認められる。さらに認定企業のうち、一段高い条件を満たした場合には特例認定を受け、「プラチナくるみん」マークを使用することが可能だ。2019年10月末時点で、「くるみん」認定企業は約3,200社、「プラチナくるみん」認定企業は約330社と増え続けており、特に「プラチナくるみん」認定企業に関しては、この4年間で4倍近くまで増加している。では、なぜこの数年でここまでこの取り組みが広がってきたのだろうか。その背景や要因について見てみよう。

就活生や求職者へのアピール材料に

「くるみん」「プラチナくるみん」の認定取得で企業が得られるメリットは少なくない。各マークはホームページやポスター、求人広告、名刺など幅広いシーンで活用できるため、自社のPRに活かせるほか、建物の割増償却などの税制上の優遇措置や、2016年度からは公共調達による加点評価を受けることも可能となった。なかでも企業にとっては、就活生や求職者などに「子育てサポート企業」として認知してもらい、自社のイメージ向上に繋げられることが大きいだろう。人手不足が深刻化する中、優秀な人材を確保することは、すべての企業にとって喫緊の課題だ。昨今では男性の育児参加が進み、また仕事と家庭を両立させたいと考える女性も増えている。そうした中で、「くるみん」「プラチナくるみん」の認定取得は、子育て中の社員が働きやすい企業、ワークライフバランスを推進している企業というイメージを求職者に与えるだろう。しかも「くるみん」「プラチナくるみん」のロゴマークは、企業の人材に対する考え方を知る大きな手掛かりにもなるため、求職者と企業を結びつける役割も果たすはずだ。つまり認定取得を対外的かつ効果的にアピールすることで、優秀な人材の確保や定着に繋げていくことができると言えよう。

より厳格化された認定基準

一方で、「くるみん」認定制度には課題もある。2017年、ある大手企業が過重労働問題を起こした際に、この企業が「くるみん」の認定を受けていたことがわかり、以来この制度に懐疑的な目が向けられるようになった。そこで同年、各省庁は認定基準について見直し、「全ての従業員が1年間の月平均で残業時間が60時間未満であること」、「男性の育休取得率が10%程度であること」という2つの認定項目を追加。これにより長時間労働が恒常化している企業は認定されない、あるいは認定が取り消されることとなった。実際、認定を受けている企業の中には、「くるみん」マークをもらうことだけを目的としているケースも少なくなく、また認定取り消しや辞退なども毎年のように起こっているという。こうした中身の伴わない企業は今後、国はもちろん、求職者からも厳しい目が向けられるだろう。

後編となる次回は、仕事と育児の両立を実現するために企業は何をすべきなのか、事例をもとに紹介したい。
【関連リンク】
厚生労働省:次世代育成支援対策全般
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/jisedai/index.html
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