第9回 嘱託産業医の知見をフルに活用するための心構え

企業にはびこる名ばかり産業医

中小事業所の産業保健活動で重要な役割を果たす嘱託(非常勤)産業医。たとえ、事業所の実情に見合った相性の良い産業医を選任できたとしても、それで満足してはいけません。嘱託産業医を選任したなら、その知見をフルに活用するための準備が必要なのです。

※本稿は、鈴木友紀夫『企業にはびこる名ばかり産業医』(幻冬舎)の一部を抜粋・再編集したものです。
嘱託産業医は勤務医などの本業をもちながら産業医の仕事を行ない、他にも複数の契約企業を抱えていることが多いものです。そのため一つの事業所に割ける時間はどうしても少なくなります。

その限られた時間で効率的に産業保健活動を行っていくには、職場訪問などの産業医と直接やり取りできる時間をフル活用できるように、事業所側が準備を整えておくことが重要になります。

たとえば嘱託産業医の職場訪問が月1回という事業所で、産業医が職場に到着してから「あれ、あの書類はどこだったかな」と担当者が書類を探しに行ったりしていると、ほとんど実のある話ができないまま産業医の滞在時間が終わり、次に会うのはまた翌月──となります。こういう状況が続くと、時間だけが無為に過ぎてしまい、なかなか効果的な施策を進められません。

嘱託産業医は医師として専門的知見をもっています。職場訪問にしても衛生委員会にしても、きちんと準備をしたうえで要所、要所に嘱託産業医に入ってもらえば、その力を最大限に活かすことができます。そのようにして段取りよく活動を進めていくことが、産業保健で効果を上げることにもつながっていきます。

合わせて、産業医としての経験の少ない嘱託産業医は、限られた活動時間のなかで適切な指導・アドバイスを行っていけるよう、いっそうの資質向上を図っていくことも大切です。国の方針にも挙げられていましたが、忙しい嘱託産業医でも効率よく産業保健の実務を学べるような研修制度が整備されていくことも必要でしょう。

当社でも、定期的に嘱託産業医を対象とした研修・セミナーを開催し、活動に必要な知識の習得を支援しています。

参加した医師たちからは、「少人数の講習会で、詳しい業務がよく理解できた」(産業医経験1年/内科医)、「産業医に関して具体的な相談をできる場がないので、情報交換ができて良かった」(産業医経験2年/産婦人科医)、「他の先生の対応策がとても参考になった」(産業医経験3年/精神科医)といった声が多く寄せられています。
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著者プロフィール

株式会社エムステージ 執行取締役 鈴木 友紀夫

1966年生まれ、福島県出身。東京理科大学にて応用微生物学を専攻。
医師の人材サービス大手に所属後、医師と医療機関をつなぐ人材マッチングサービス事業を行う株式会社エムステージの立ち上げに参画、取締役に就任。現在は同社産業保健事業部にて、企業の産業医選任・産業保健支援サービスや産業医になりたい医師向けのサポートを行う。労働者の健康を守るため、そして医師の新たな働き方を提案するために奔走している。
著書『企業にはびこる名ばかり産業医』(幻冬舎)
医療経営2級、健康経営アドバイザー(初級)

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