株式会社グッドアンドカンパニーは2025年4月23日、「W society(ダブリュー ソサイエティ)」プロジェクト協力のもと、一般社団法人日本経済団体連合会ダイバーシティ推進委員会が実施した「女性と健康に関する調査結果」を発表した。本調査は、経団連の同組織に所属する計96社を対象に、2024年12月に実施したものである。調査結果は、企業における女性の健康支援制度の現状と課題、経営層と現場の認識のギャップ、そして制度導入が企業にもたらす効果に焦点を当て、考察を深めたものとなっている。
【経団連調査】「女性の健康支援」95%の企業が推進も、4社に1社が“遅れている”と評価。経営層と現場のギャップとは?

企業によるサポートの中心は月経・がん・更年期

はじめに同社が「企業がサポート可能だと考える女性の健康課題」について尋ねたところ、1位は「月経にまつわる不調」(83.3%)で、以降は「子宮筋腫、子宮がん、乳がんなど女性特有のがん」(59.4%)、「更年期に関連して生じる不調」(53.1%)といった回答が続いた。一方、「不妊治療」などには支援が及んでいない企業も多く、今後の課題と言えそうだ。
女性の健康問題へのサポートについて

企業の9割超が制度導入も「利用」と「浸透」に課題

同社によると、本調査の全回答企業のうち、95.8%とほとんどの企業が何らかの「女性の健康支援制度」を導入中だったという。

その一方で、「女性に対する自社のサポートの現状をどう考えているか」を尋ねた結果を見ると、実際に女性に対するサポートが「進歩的である」と自社施策を評価した企業は25%に留まった。
働く女性のサポートの取り組み状況の自社評価
さらに同社は、「現在の健康支援制度の利用状況」についても尋ねている。その結果、各項目のうち利用率が9割以上と数値が高いのは、「時短勤務やフレックス、時間有給など時間的勤務形態の多様化」(33.3%)、「出産・育児休暇や短時間労働など仕事と両立を図るための支援」(22.5%)だった。

なお、全体として各項目で「利用率10%未満」あるいは「利用実態不明」の値が高く、多くの企業で“制度整備”と“現場活用”との間にギャップがあることが浮き彫りになった。
働く女性のサポートの取り組み状況の自社評価

「経営層」と「現場」の認識ギャップ

次に、「職場における女性の健康サポートに関する経営層の理解」の現状を尋ねた結果では、32.3%が「支援施策は総じて浸透している」と認識していた。一方で、一般従業員層では「一部にしか浸透していない」(41.7%)との回答が最多となった。また、全体の36.5%は従業員アンケートやヒアリングを十分に実施していない状況にあり、現場の実態把握やコミュニケーションも課題となっている様子が見てとれる。
働く女性のサポートの経営層の理解

「制度設計の難しさ」が導入を阻む要因に

また、「制度導入が進まない理由」に関する回答では、「制度設計が困難」(20.8%)が最も多く、以下は「社員からの要望がない」(14.6%)、「リソース不足」(12.5%)が続いた。施策の本質的な効果や利用促進の仕組みづくりが、経営者や人事部門に求められそうだ。
働く女性のサポートが進まない理由

健康支援は「生産性・定着率向上」に直結

続けて、「女性の健康支援がもたらす影響や企業側のメリット」について聞くと、「社員の生産性向上」(52.1%)、「女性社員の定着率向上」(22.9%)が高い評価を受けていた。なお、実際に生理痛体験会や不妊治療サポート、ホルモン検査補助の導入など、独自の取り組みを行う企業もみられたとのことだ。
女性の健康支援がもたらす効果

経営戦略への組み込みは今後の課題に

最後に、「女性の健康支援に関する社内の位置づけ」について調べた結果を見ると、女性の健康支援を「DEIや女性活躍推進の一環」と位置付ける企業が76%であった。一方、「経営戦略の最上位に位置付ける」と明確に答えた企業は11.5%に留まっている。今後は、KPI設定や経営層によるコミットメント強化、社内文化醸成による活用促進が求められるだろう。
女性の健康支援に関する社内の位置づけ
今回の調査では、制度の整備や義務化だけでなく、実効性や活用度に着目し、従業員が参加しやすい文化づくりをしていくことの重要性が示唆された。今後は、健康支援が企業の生産性・創造性向上や人材確保に直結する経営テーマであることを踏まえ、社内コミュニケーションやエンゲージメント施策と一体となった取り組みが不可欠だろう。

出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000016.000086882.html

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