この連載では、多摩大学大学院のキーコンセプトである「イノベーターシップ」について述べている。第8回からは「イノベーターシップを実現するためのライフシフト」について考えており、今回はいよいよ、その最終コーナーとなる50代での自分づくりだ。人生100年時代において、イノベーターシップを生涯現役として発揮しつづけるためには、自分らしいライフシフトを実現しつづけなければならない。そのために、この50代をどう位置づけ、どんな風に過ごしたらいいのだろうか?
第11回 イノベーターシップを実現するライフシフト(4)
これまでの回で提示してきた知識創造のSECIモデルを援用したSECIキャリアモデルでは、20代をSocialization(仕事の直接体験を通じて暗黙知を潤沢に蓄える時代)、30代をExternalization(20代で得た暗黙知を自分なりに料理して自分の知の体系をコンセプト化する時代)、40代をCombination(これまで蓄えた専門性を他の知と連結することでより幅の広い分野で活用していく時代)とした。50代以降はInternalization(多くの実績を内面化し自分の知恵の集大成を行い、後進へつなぎ、既存の社会システムのイノベーションを提言していく時代)だ。
第11回 イノベーターシップを実現するライフシフト(4)
人生100年時代にあっては、この50代こそが人生の第2段ロケットへ点火し、ライフシフトを実現する時代。40代はライフシフトのためのジャンプ台の時代といえる。そういう意味では、30代の1周目のExternalizationを受けて、50代の2周目のExternalization(ここでは自分史の再編集、ライフシフト後の生き方の模索も含む)へ連なっていく時代の始まりなのである。

今回は、最終ステージとしてのInternalizationについて考えます。

イノベーターの鍵は40代での大仕事

50代以降は、SECIモデルの最後の「I」、つまり「Internalization」だ。Combinationのステージでは、異分野を採り込んだ大きな構想を打ち立て、自分らしい課題を設定し、実行に移すことが重要だった。40代で壮大なCombinationを実現していれば、「自分のやってきた仕事は、どのように世界を変えてきましたか?」という問いにも解が出せるだろう。ここで大事なのは、単なる改善ではなく、社会の真のニーズをとらえたイノベーションが起こせたかだ。

誰もが仕事をやっていると、当然のごとく「自分が任された領域を超えて、こうすることができたらもっと良くなるのに」という問題意識を持つであろう。しかし、「自分の仕事はここまでだから」と諦めて、こぢんまりとしたCombinationで終わってしまう人も多い。経済学者のヨーゼフ・シュンペーターは、「イノベーションは知性の偉業ではなく、意志の偉業である」という言葉を残しているが、居心地の良い範囲内(Comfort zone)で人生を終始させてしまうのではなく、あえて火中の栗を拾い、修羅場をくぐり抜け、未知の世界に飛び込み、知の壮絶なCombinationを進めることができたかどうかが重要なのである。つまり、所与の責任範囲を超えて「こうあるべきだ」という姿を追い求めていたかどうかだ。

そういった強い思いで40代を過ごすことができていれば、企業内の役割のみに閉じた人生と比較して、得られた学びや気づきは、とてつもなく大きいはずだ。そういう土台があってはじめて、Internalizationを通じて、イノベーターとしての自分が開花する。

50代のイノベーターへの期待

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