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マネジメント、リーダーシップを超える力、「イノベーターシップ」

第10回 イノベーターシップを実現するライフシフト(3) 〜広い実践知を花開かせる40代〜

多摩大学大学院 経営情報学研究科 徳岡 晃一郎
2018/01/19

この連載では、多摩大学大学院のキーコンセプトである「イノベーターシップ」について述べている。前々回からは「イノベーターシップを実現するためのライフシフト」について考えており、今回は40代での自分づくりだ。人生100年時代において、イノベーターシップを生涯現役として発揮し続けるためには、自分らしいライフシフトを実現し続けなければならない。そのためには、40代をどのように位置づけ、どんな風に過ごしたらいいのだろうか?
前々回提示した知識創造のSECIモデルを援用したSECIキャリアモデルでは、20代をSocialization(仕事の直接体験を通じて暗黙知を潤沢に蓄える時代)、30代をExternalization(20代で得た暗黙知を自分なりに料理して自分の知の体系をコンセプト化する時代)、40代をCombination(これまで蓄えた専門性を他の知と連結することでより幅の広い分野で活用していく時代)、そして50代以降はInternalization(多くの実績を内面化し自分の知恵の集大成を行い、後進へつなぎ、システム全体のイノベーションを提言していく時代)としている。

人生100年時代にあっては、この50代こそが人生の第2段ロケットへ点火し、ライフシフトを実現する時代。よって、40代はライフシフトを実現するためのジャンプ台の時代なのだ。そういう意味では、30代の1周目のExternalizationを受けて、50代の2周目のExternalization(ここでは自分史の再編集、シフト後の生き方の模索も含む)へ連なっていく時代とも言えよう。

今回はそうした40代のCombinationの役割について検討してみよう。

広い実践知を花開かせる40代

40代は、SECIモデルの「C」である「Combination」だ。30代の「Externalization」のステージでは、会社から与えられた領域で奮闘することによって、自分なりに掴んだプロとしての誰にも負けない実力、難局への自分らしい向き合い方、人間関係のポリシー、マネジメントのコツなどを学び、自分のコアができたはずだ。40代での「Combination」とは、そのコア能力を他分野の専門的知識と組み合わせ、自分ならではのビジョンと課題を設定して、自分を大きく広げるフェーズだ。30代で培った思いをベースに、他の知との共創を行い、会社や組織を大きく変えるために広い世界に打って出るフェーズと言える。

30代は誰でもがむしゃらに働く。そうした経験から仕事の理論、流儀、哲学を抽出して、形式知化することで、「自分らしさ」を作り、長い人生の基盤を整える芽を養えたはずだ。30代でしっかりとこのような知的基盤を築き、プロとしての自信をつけることで、おのずと発信力も身についてきている。そのコアに安住する人と、広い世界に打って出る人で、40代以降での成長度合いが分かれる。前者は40代で失速して伸び悩む。80歳現役時代にも通用できるのは、当然後者だ。

そのコアをしっかりとカタチにするには、「広いコンテクストでの実践」が必要であり、その舞台こそが40代なのだ。広いコンテクストでの実践とは、世のため人のため、新しい顧客を創造するため、ビジネスモデルを革新するため、また持続的成長を果たすガバナンス改革のためなど、新しい時代に向けた新しいプロジェクトとして課題化することである。そうすることで初めて、「知識創造」となる。会社や社会に大きな課題を投げかけ、実際に動き出さなくては、知を創造することはできない。

つまり40代は、30代で得た自分のコア、信念を生かして、自分の部署や会社、あるいは日本を超えたネットワークをつくり、イノベーションの主役に躍り出るステージなのだ。外資系の企業であれば、40代の社長も珍しくはない。日本の窮屈な組織に収まっている場合ではなく、世界を舞台に課題を設定する世代なのだ。

そこで必要となるのが知の融合、すなわち「Combination」だ。自分なりのコアとして蓄えた知(信念、ビジョン、仮説、ノウハウ、スキルなど)を抱え込むのではなく、他の分野との「知の交差点」をつくり、融合してより大きく発展させることで、イノベーティブなテーマを設定することができる。豊かな暗黙知の蓄積と、強い問題意識や価値観というコアを持てば、まわりの人々の共感を得たり、仲間を惹きつけたりすることもでき、自然と社外での人の輪もできる。自信をもってどんどん社外と交わり発信すれば、道はどんどん開けていく。

たとえば、マーケティングの分野で広告やイベント、ブランディングやCRM(顧客関係管理)などのノウハウを積み重ね、自分なりの知の体系を形式知化していれば、30代の時点で、社内ではそれなりの地位になっているはずだ。そしてそれをベースにしていけば、その後も仕事はうまく回るだろう。しかし、今後ビッグデータ、データサイエンス、IoT(モノのインターネット)が発展し、分析・統計重視の時代になった時に、そのまま安住していられるだろうか?

また、ビジネスモデルイノベーションの時代になり、事業ドメインや戦略が変化すれば、知見が不足してしまうのは明らかだ。そのため、マーケティングのプロであっても、データサイエンス、ビジネスモデルイノベーションなどと「知の交差点」を模索していく必要がある。

知を貪欲に広げて「Combination」を進めていかなくては、大きな知の創造はできない。逆に考えれば、他者も知のつながりを求めているので、自分のノウハウを生かせるチャンスは多く存在する。「知の双方向性」が成立する時代になっているのなら、その環境を活用しない手はないだろう。

そのためには、やはり自らきっかけをつくっていく必要がある。MBAや研究会などの社外活動に参加したり、書籍の著者やセミナーの講演者にアタックしたり……。「誰もがパートナーを探している」と信じて動き出すことが、「Combination」の第一歩となる。

次回は、50代以降のInternalizationの視点からライフシフトを眺めてみます。
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プロフィール

多摩大学大学院 経営情報学研究科 徳岡 晃一郎

東京大学教養学部国際関係論卒。日産自動車人事部、欧州日産を経て、2009年よりコミュニケーションコンサルティングでは世界最大手の米フライシュマン・ヒラードの日本法人のSVP/パートナー。人事制度、風土改革、社内コミュニケーション、レピュテーションマネジメント、リーダーシップ開発などに従事。2014年より多摩大学大学院研究科長。著書に『MBB:思いのマネジメント』(野中郁次郎教授、一條和生教授との共著)、『ビジネスモデルイノベーション』(野中教授との共著)、『イノベーターシップ』など多数。

<多摩大学大学院 経営情報学研究科について>
多摩大学大学院は、「実学」にこだわった実践的プログラム、一流の実務系教授陣、深い学びが得られる少人数クラスを特長とする日本の実学系ビジネススクールのパイオニア(1993年設立)です。
近年、「イノベーターシップ」のコンセプトのもと、マネジメントやリーダーシップを越えるスキルを備えたリーダー人材の育成に注力。さらに、データーサイエンスに特化した『DSBコース』、日本初のルール形成戦略を学ぶ『ルール形成戦略コース』を相次ぎ創設、時代を先取りした先見性と独自性に注目が集まっています。リーダーとしての志、哲学、教養を磨くリベラルアーツ系講義も充実しており“MBAを越えるMBA”と高い評価を獲得。

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