テレワークによる新しい働き方はなぜ必要なのか。「時間外労働等改善助成金」についても解説

自宅での勤務を可能とする新たなワークスタイル「在宅勤務」は、政府が推進する「働き方改革」により従来から注目されていたが、なかなか浸透しなかった。しかし、今回の新型コロナウイルス感染症の蔓延をきっかけに、多くの企業で導入されることとなった「在宅勤務」は「テレワーク」のひとつの形であり、ICT(情報通信技術)を使った場所や時間にとらわれない柔軟な働き方を示す。今回は、なぜテレワークが必要なのか、および、厚生労働省から支給される「時間外労働等改善助成金」についてお伝えしたい。

なぜ「テレワーク」が必要なのか

2019年3月卒業見込みの全国大学3年生と大学院1年生を対象とした「2019年卒マイナビ大学生就職意識調査」によると、「あなたの『就職観』に最も近いものはどれですか?」との問いに対する回答は、下記のような順位だった。

1位:楽しく働きたい(33.3%)
2位:個人の生活と仕事を両立させたい(24.2%)
3位:人のためになる仕事をしたい(15.0%)

結果から、「ワーク・ライフ・バランス」を重視する傾向がみられる。

また、日経HR社による第26回「働き方改革に関する意識調査」(21〜59歳の「日経キャリアNET」登録会員が対象、複数回答可)によると、「転職活動で応募する企業を選ぶとき、転職志望度が上がる制度は?」との問いに対する回答は以下の通りとなった。

1位:副業・兼業の解禁(50.3%)
2位:テレワーク(在宅勤務含む)(49.5%)
3位:有給休暇取得の促進 (46.6%)

昭和世代とは異なる価値観をもつ労働者が多いことに気づく結果となった。

社会的な課題としては、人口減少や少子高齢化による労働力人口の確保や、地方の疲弊による地方創生、経済成長の低下による生産性の向上や持続的成長、そして新産業の創出によるイノベーション創出や国際競争力の強化があげられる。一方、企業の経営課題としては、業務効率改善や労働時間削減による生産性向上や、グローバル化と企業文化刷新などの外部環境変化への対応、離職防止や採用強化による人材確保、そして今回の新型コロナウイルス禍でも注目されたBCP(業務継続計画/Business Continuity Plan)対応などがあげられる。

上記のような課題を受け、業務効率化や付加価値向上、人材の活用を進め、持続可能な成長を目指すために推進された施策のひとつが「テレワーク」である。

テレワークの普及状況として、総務省の「平成29年通信利用動向調査」によると、テレワークを導入している企業は13.9%で、導入予定も含めると18.2%となっている。しかし、導入済みの企業でも、利用者数が従業員の5%未満の企業が51.4%と、なかなか普及が進まなかった実情がわかる。この理由としては、「技術・文化面」と「労務・人事面」の両側面からの課題があげられる。

技術・文化面での課題
・社内コミュニケーションへの不安
・顧客などの外部対応に支障が出ること
・情報セキュリティへの心配

労務・人事面での課題
・テレワークに適した仕事がないこと
・適切な労務管理が困難であること
・人事評価が難しく対象者が限定されること

総務省では、2020年に実施予定だった東京オリンピック・パラリンピック競技大会を見据え、2017年から開会式が行われる予定だった2020年7月24日を「テレワーク・デイ」と設定し、企業や組織による全国一斉のテレワークを実施してきた。

業務効率化やコスト削減の効果としては、下記のようにすべての指標で大幅な削減効果がみられた。

・事務用紙等の使用量:13.9%減
・旅費交通費等:18.3%減
・会議室・会議スペース使用状況の変化:25.1%減
・残業時間:45.3%減

さらに、消費電力も削減し、多くの企業や団体が「移動時間の短縮」、「生産性の向上」、「生活環境の改善」に効果を感じたと答えている。また、「身障者・高齢者・育児者・介護離職者等への対応」に効果があったとの回答も多い。実際のアンケートに寄せられた、メリットとして感じた内容としては下記のようなことだった。

テレワーク導入で感じたメリット
・猛暑の中で通勤をせずに済み、体力を消耗することなく業務に集中できた。
・移動中にメール等の処理が可能で、帰社後の事務処理を減らすことができるため残業時間が削減できる。
・テレワークの前提となる事前の業務計画作成がタイムマネジメントの意識につながった。
・成果物については共有フォルダに格納し、始業・終業時のメールは在宅勤務のみならず通常勤務者も含めたチーム全体で共有することで「仕事の見える化」がはかれた。
・通常勤務では短時間勤務しか実施できない育児・介護中の社員がフルタイムで勤務することができた。
・災害時における社員の安全確保やBCP(事業継続計画)の観点でのテレワークの有用性を改めて認識した。

一方、課題としては下記のようなことがあげられた。

テレワークを実施する際の課題
・VPN接続や通信ソフト、通信環境など、ふだん通りの業務を遂行するためのインフラ整備。
・社員の自律が大前提であり、労働時間や業務内容の確認・管理をどこまでおこなうかが難しい。
・仕事とプライベートの線引きが難しい。
・セキュリティを担保した形でテレワーク業務を実施できる仕組みの構築が必要。
・テレワーク実施社員とのコミュニケーション量が減少し、周囲の業務状況の把握が難しい。
・家族がいる環境での業務継続が難しい。
・電話応対などでテレワークを実施していなかったメンバーに負荷がかかった。

メリットも課題も多くみられるが、今後、テレワークの必要性は以前にも増して高まることが予想される。これを機に、テレワークの新規導入を考えてみてはいかがだろうか。

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HRプロ編集部

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