「頭がいいというのはどういうことなのか。それは頭に詰め込んだ知識や教養の総量ではない。それならば、あなたの頭は、図書館や百科事典に太刀打ちできない。(中略)頭がいいとは、頭の回転が速いことだ。」(「頭の体操 第2集」序文(光文社:多湖輝著))
 この言葉は、皆様ご存知の「頭の体操」シリーズに出てくる序文の言葉である。同書は、累計で1200万部以上のベストセラーとなった、パズル集であると同時に、前書きや各章の序文などで思考力を鍛えること、特に水平思考の重要性が説かれている良著である。発行部数から考えるに、ほぼ全ての日本人が目にしたことがある書籍であろう。
博士が、"図書館や百科事典"としている点は、現在ではインターネットと言い換えることができるであろう。博士が説く "頭の速さ""思考力"の大切さは、今、更にその重みが増しているように思う。

 博士は、頭の良さを"連想の豊かさと速さ"と定義し、心理学的に「水路付け(Canalization)」と呼ばれる連想の妨げとなる状況を、「脳動脈硬化症」という言葉を用いて批判している。

 更に、博士は、思考の分類を下記のような形で行い、
●再生的思考: 記憶を基にした思考
●生産的思考: 再生的思考だけでは解決できない難問に直面した時に要請される思考
心理学者ワラスの創造的思考の段階を紹介した上で、
1.準備期:様々な知識や体験の蓄積/素材の充電
2.孵化期:活性化された記憶、並びにそれを素材とする思考のネットワークの成立、駆使
3.啓示期:爆発。様々な思考の素材が自由に組み合わされて意外なひらめきやアイデアを創出する。
4.ひらめきやアイデアを論理的に分析して、他の外的な条件と付き合わせる段階。創造的思考が現実の力を持つために必要とされる。
創造的思考について以下のような定義付けを行っている。

 「関連のなかった知識や経験が活性化され、新しい形で組み合わされる、知識や経験の構造化を中心転換と言う。これがアイデアや飛躍を生む創造的思考の成立でもある。」
 逆に、「「考えない」とは、思考がパターン化し、マンネリズムに陥り、ルーティーンワークと化すことを指している。」と。

 博士の指摘するポイントは、「創造性」に対する検討に一つの示唆を与えていると筆者は考える。これを組織として意図的にマネジメントする方策について考察してみたい。

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