HRプロとは私たちは人生の中で、家族や友人と同じくらい、あるいはそれ以上の時間を職場の仲間と過ごしている。寝食を共にするわけではないが、日々の喜怒哀楽を分かち合い、目標に向かって切磋琢磨する。従って、職場で特別な関係性を築けるかどうかで、仕事の充実度は大きく左右されてくる。単調な作業も、気の合う仲間がいれば活気に満ち溢れ、困難なプロジェクトも、信頼できる同僚がいれば乗り越えられる。まさに、職場の人間関係は、私たちの人生における重要なファンダメンタルの一つと言えるだろう。
些細なことの積み重ねが関係の構築につながる
では、そのようにかけがえのない「職場の人間関係」を、どのようにしてより良いものに創り上げていけばよいのだろうか。それは、まるで農家が実践している、丁寧に土を耕し、種を蒔き、水をやり、陽の光を当てる、というような農作業と似ている。日々の小さな積み重ねが、秋の実りをもたらすのである。まず、最も大切なのは、「挨拶と感謝」という基本中の基本を徹底することだ。「おはようございます」、「お疲れ様でした」という挨拶は、コミュニケーションの第一歩であり、相手の存在感を承認する証である。そして、何か手伝ってもらったり、助けてもらったりした際には、「ありがとうございます」という感謝の言葉をきちんと伝える。些細なことかもしれないが、これらの積み重ねが、職場の雰囲気を温かくし、お互いを尊重する気持ちを育む。
次に意識したいのは、「傾聴と共感」の姿勢である。人は誰でも、自分の話を聞いてほしい、理解してほしい、という気持ちを持っている。相手が話している時には、自分の意見をひかえて、まずは真剣に耳を傾けなければならない。そして、「それは大変だったね」、「よく頑張ったね」といった共感の言葉を添えることで、相手は安心して心を開きやすくなる。共感は、心の距離を縮める魔法の言葉なのである。
さらに、良好な人間関係を築くためには、「積極的なコミュニケーション」が不可欠である。業務連絡にとどまらず、時には雑談を交わしたり、ランチに誘ってみたりするのも良いかもしれない。共通の話題を見つけて話すことで、お互いの人となりを理解できる。そして、親近感が自然に湧いてくるものである。また、自分の考えや意見を臆せず伝えることは大切だが、その際には相手への心配りを忘れず、丁寧な言葉遣いを心がけたい。
時には、意見の衝突や誤解が生じることもあるかもしれない。そんな時には、感情的になるのではなく、「冷静な対話」を試みることが重要である。相手の立場や意見を尊重しながら、自分の考えを丁寧に説明することで、建設的なソリューションを見出すことができるはずだ。また、もし自分が間違っていたと思ったら、素直に謝る勇気も持ちあわせておこう。謝ることは、関係修復への第一歩となる。
相手への「距離感」と「興味」をバランスよく両立させたい
そして、忘れてはならないのが、「適度な距離感」を保つということである。親しくなることは素晴らしいことではあるが、馴れ合いが過ぎると、かえって摩擦が生じやすくもなる。相手のプライバシーに過度に立ち入ったり、詮索したりすることを避け、相手が一人の自我の確立した人間であることを最大限尊重したい。心地よい距離感を保つことで、長く良好な関係を築くことができる。最後に、最も大切なことは、「相手への興味と関心」を持ち続けることだ。人への好奇心と言っても良い。「あの人はどのように仕事をしているのだろう」、「どんな考えを持っているのだろう」と、常に相手を知ろうとする姿勢が、自然に深い理解と信頼へと繋がる。誕生日をさりげなく祝ったり、困っている時にそっと手を差し伸べたり、などの小さな心遣いが相手の心に深く響く。
職場の人間関係は、一朝一夕に築けるものではない。日々の小さな努力と、相手を思いやる気持ちの積み重ねによって、少しずつ、しかし確実に育まれていくものである。日々一緒に過ごす人間関係の“質”は、報酬以上に人生の満足度を左右するものである。人間関係づくりを疎かにせず、真剣に向き合っていきたい。
- 1
