中外製薬株式会社では、社員が年齢や属性にとらわれず、自らのキャリアをデザインし、その実現に向けて成長し続けるための新たな仕組みづくりを進め、2025年1月より新人事制度の運用を開始した。このジョブ型やポスティングなどを軸とした新たなチャレンジには、どのような目的や狙いがあるのか。同社 人事部長 髙田雄介氏と新人事制度の設計をリードした時田祐輔氏に、制度の概要や期待する効果のほか、直面した課題や工夫したポイントなどを伺った。

プロフィール

  • 髙田 雄介 氏

    髙田 雄介 氏

    中外製薬株式会社
    人事部長

    1996年入社。営業本部MRを6年経験。国際本部にて4年の欧州駐在の後、関節リウマチ治療薬・アクテムラのビジネスリーダーとしてマーケティング活動に従事。2016年から早期臨床開発ステージの製品評価でマネジャーを経験し、2022年より人事部企画グループマネジャーを経て、2023年から現職。

  • 時田 祐輔 氏

    時田 祐輔 氏

    中外製薬株式会社
    人事部
    人事推進グループマネージャー

    新卒で広報IR部に配属。決算発表資料やQ&A資料の作成、投資家対応などのIR業務を経て2016年に人事部に異動。人事制度企画・設計・運用・浸透などの業務を主に従事。2022年より現職。関係会社も含めた人財マネジメント改革を進めている。

中外製薬が挑戦する新たな人事制度――ジョブ型や手挙げを中心に、社員が主体性を発揮し、「キャリア自律」や「成長サイクル」を生み出していきたい

「キャリア自律」の実現に向けた5つの新人事制度

――貴社は2025年より「ジョブ型人事制度の全社展開」、「ジョブポスティングの実施」、「雇用上限年齢の撤廃」、「高度専門ポジションの拡大」、「目標制度の導入」という大きく5つの柱で人事制度を大幅刷新されました。その概要について、まずは教えてください。

髙田氏:「ジョブ型人事制度」については、まず2020年に幹部社員に限定して先行的に導入し、およそ800あるマネージャーのポジションをプロファイルを明確化したうえ公開し、相応しい人財をアサインするという仕組みに変更しました。また、マネージャーの職務が明確になったことで、残りのメンバーも「自分が将来どのポジションを目指すべきか」「そのためにはどんなスキルや経験を身につける必要があるか」がわかる仕組みとなっています。そのような制度を導入してから5年が経ち、年間15~20%のマネージャーがポジションを入れ替わるというジョブ起点の代謝が進んだことなどを踏まえ、同様のポジションマネジメントを全社員に一気に導入しました。

このジョブ型に連動しているのが、2つ目の「ジョブポスティング制度」です。これまで「人事異動」と「昇格」は、各自の成長プランや評価に則って会社主導で行ってきましたが、今年からは原則すべての任用をポスティングに移行しました。全ポジションの要件を明確化したうえで、空きポジションを社員に公開し、挑戦したい人には自ら手を挙げてもらいます。この仕組みにより、社員の主体的・自律的なキャリア形成をより一層後押しできればと考えている次第です。またジョブ型人事制度と合わせることにより、挑戦する意欲・実力があれば若手社員でも早期に上位の役職に就くことができるなど、適所適財のさらなる促進を目指します。

さらに、2026年より「雇用上限年齢」も撤廃することとなりました。これは65歳以降でも会社が認め、また本人が健康で働く意思があれば、年齢に関わらず担う職務に応じて正社員と同等の処遇を受けられるという制度です。従来のように会社が退職時期を一律に決めるのではなく、社員が自らキャリアを考え、いつまでこの会社で働くのかを決めることができます。また、「高度専門職」についてもキャリアパスを改めて体系化するとともに、ポジション数を従来の約3倍に大幅に拡大しました。これにより、高度専門人財の発掘・育成をより加速させていきたいと考えています。そして、こうした挑戦により創出した価値を評価する目標制度も導入しました。これは、実現したい未来に向けて個々に目標を設定し、その達成度合いを上司と擦り合わせ、「加点方式」で評価していく仕組みです。これらの取り組みを連動させながら、社員一人ひとりの「キャリア自律」を推進していきます。

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