
「適性検査」とは
「適性検査」とは、人材が組織や職務に対して能力・資質を備えているか、持ち味を発揮できるかどうかを見極めるための検査をいう。適性が客観的かつ多角的に見極められるので、採用や配属におけるミスマッチを防ぐために活用されることが多い。日本で「適性検査」が導入され始めたのは1970年代に遡る。リクルートが開発した「SPI」がその先駆けだ。その後、時代の変化とともに多様な「適性検査」が開発・商品化されてきている。●「適性検査」の目的
「適性検査」を実施する目的は主に3つある。第一に、集客利用だ。学生や求職者は「適性検査」に対する関心度・着目度が高く、受検結果を知りたいと思っている。仕掛け方を工夫することで集客促進のコンテンツとして利用することができる。第二の目的が、見極めだ。恐らく、「適性検査」の実施目的としては最も一般的と言えよう。ここでのポイントは、ボーダーラインの設定だ。どのような要素に着目するのか、どの数値を参考にするのかを明確にしなければいけない。
第三の目的が、惹きつけだ。ターゲットとなる応募者との接触頻度を高めるために、「適性検査」の結果を題材に、フィードバック面談やキャリア面談を行い、ターゲット応募者との接触機会を増やす事例が多くなっている。
「適性検査」活用のメリットとデメリット
次に、「適性検査」を利用するメリット・デメリットを具体的に見ていこう。●メリット
企業が「適性検査」を行うメリットとしては、第一に受検者の能力を数値としてわかりやすく客観的に判断できることがある。同じ検査を継続すれば、過去との比較も容易であり、今後の採用活動にもデータを活かすことができる。また、面接では見えづらい特性を把握することも可能だ。どうしても、面接では少しでも自分をよく見せようとしがちなので、実際の考えや性格とは乖離していたりする。その点、「適性検査」では、応募者の性格や価値観、考え方、特性、傾向が浮き彫りになりやすい。●デメリット
「適性検査」では、職務を遂行するために必要な知的能力や専門性、性格や指向、価値観などを測定できる。ただし、定量化が可能なのは理論や概念の上で尺度として表せる要素に限定される。ビジネスシーンで昨今注目されている洞察力や創造性などの能力は定量化が難しく、適性検査での判定は困難であると言える。また、適性検査には裏付けとなる理論やデータがあるものの、絶対的な尺度であるとは言い切れない。あくまでも選考の粒度・速度を上げる一つの手段であると位置づけ、面接などと並行・補完して評価することが望ましい。
「適性検査」の種類と測定項目
「適性検査」には多種多様な種類がある。以下の4つに大別して説明していきたい。●基礎能力
職務の遂行に不可欠な知識や技術を習得できる能力を持っているか、職務に不可欠な思考力・対応力があるかを定量的に測定する。●パーソナリティ(性格)
情緒的・性格的な特性、態度・行動的な特性などを定量的に測定する。●職場適応性
態度能力、適性職務、対人関係能力、意欲などはどうか、入社後に成果をもたらし得るか、コンピテンシー(行動特性)はどうかなどを測定する。●ストレス耐性
ストレスへの耐性はどれくらいかを測定する。「適性検査」の受検形式
「適性検査」の受検形式は、ペーパーテストかWebテストかという二つの形式と、受検場所で分類できる。それぞれの特徴は以下の通りだ。●ペーパーテスト
ペーパーテストは、筆記によるテストで昨今は集計しやすいマークシート形式が主流だ。受検者を会場に集めて行うため、会場を手配したり、テストの監督者を配置したりしなければいけない。また、Webテストと比べると集計や分析に時間が掛かるのも特徴だ。●Webテスト
Webテストは、インターネットを活用してPCやスマホから受検する形式をいう。場所と時間に関係なく受検できるので受検者の負荷は低い。また、ペーパーテストに比べると集計・分析結果が出るまでの時間が短い点も特徴だ。●テストセンター
テストセンターは、受検会場に赴いて受検する方法だ。全国の主要都市に会場が設置されるので、受検者は移動ロスを抑えられる。その一方、企業には運営委託の費用が発生する。●インハウス
インハウスは、企業内で受検会場やパソコンを用意して行う方法をいう。自社で採点まで行う場合、検査後すぐに結果を出せるし、会社説明会を同時で開催することもできる。「適性検査」の選び方
「適性検査」といっても、多種多様だ。提供元によって仕様が大きく異なっている。どう選べば良いのか、ポイントを整理したい。●検査内容・評価項目
最初に、「適性検査」の検査内容や評価項目が導入目的に合致しているかを検討しよう。検査内容としても例えば、基礎能力や性格(パーソナリティー)、職場適応性(コンピテンシー、対人関係能力)、ストレス耐性などがある。予め導入目的を明確化した上で、適性検査を比較するようにしたい。●費用
「予算」との兼ね合いも検討したい。「適性検査」の費用相場はさまざまで、一人1回あたり数百円から7000円程度と幅広い。しかも、検査代金以外に初期費用、システム利用料、オプション費用、試験用紙代などが必要になる場合もあるので確認しておきたい。●形式と所要時間
どのような形式で受検するのか、検査に要する時間はどれくらいかもぜひ検討しておきたい。テスト形式にはWebテストやペーパーテスト、テストセンター受験、自宅受験などがある。いずれにも、メリットだけでなくデメリットがあることを理解した上で決めるようにしたい。また、所要時間は15分~1時間程度が主流だが、中には100分を超す適性検査もある。受検者に負担を掛けすぎないように留意したい。「適性検査」のトレンド
実は、「適性検査」にもトレンドがあることをご存じだろうか。最近、フォーカスされているのは「ストレス耐性」の検査だ。どうしても、面接だけではメンタル不調に陥りやすい傾向があるかどうかは難しい。それに加えて、「適性検査」によって事前に確認したいという意向が高まっている。
新型コロナウイルスの感染拡大は落ち着いたとはいえ、今後もテレワークやオンライン会議が継続して行われると見込まれる。それだけに、ストレス耐性を測定したいというニーズは増えていくと思われる。
また、「コミュニケーション能力」をいかに見極めるかも課題となっている。面接・面談での印象だけでは判断できない面があり、「適性検査」を通じてコミュニケーション能力があるかどうかを測るケースが多くなっている。これも、最近のトレンドと言える。
さらには、昨今はオンライン選考が定着していることで、自宅受験型テストのサービスが進化している。例えば、不正を防ぐための監視プログラムが導入されていたり、音声により自宅で試験の指示出しができたりするテストも普及している。
採用以外での「適性検査」の活用法
「適性検査」は採用選考で利用されるケースがほとんどだが、それ以外にもさまざまな活用法があるので紹介したい。●内定者フォロー
せっかく内定を出しても辞退されてしまったというのはよくある悩みだ。なので、内定者のモチベーション維持に力を入れている企業が多い。実は、「適性検査」は内定者フォローにも活用できる。具体的には、「適性検査」で得られた結果を踏まえて相性の良い教育担当者を選び内定者フォローを行う、行動特性に応じて事前研修を実施する実施している企業もある。●配属や育成
「適性検査」では、職務や職種への適応性やチームワークの傾向などのデータを取得できる。それらを活用すれば、最適な配属を実現する上で大いに役立つ。配属先のマネージャーからすれば、迎え入れるメンバーの特性を事前に理解した上でマネジメントすることができる。また、「適性検査」は能力育成やキャリア開発に活用することも可能だ。従業員に検査結果をフィードバックし、自身の強み・弱みを把握し、特性を生かすためにはどうしたら良いかをキャリア面談などで上司と一緒に考えていける。●管理職候補の選抜
管理職候補の選抜でも「適性検査」が活用されている。多いのは、アセスメントセンター方式の検査だ。これは、対象者に実務に類似した状況を演習でシミュレーションさせて、アセッサーが評価するスタイル。これによって、昇進や昇格した後にそのポジションに求められている役割を遂行できるかどうか、見極められる。●採用活動の振り返り
「適性検査」は、採用活動を振り返るためのデータとしても活用できる。具体的には、母集団形成において、自社が求める人物像と母集団の傾向が合致しているかどうかを把握することで、告知手段やメッセージ、コミュニケーションの取り方が適切であったのかどうかを検証できる。また、「適性検査」の結果と面接官ごとの評価との相関を確認することで、合否基準にずれがないか、面接官による差がないかが明らかになる。●退職者の分析
「適性検査」は退職者分析にも活用できる。どういった傾向があると退職しやすいかがわかったりする。それを探り出せれば、離職対策に向けたアクションも取りやすくなる。●社内コミュニケーション
「適性検査」によって、従業員の性格や志向性、コミュニケーション能力が可視化できるようになる。その結果を上司と部下それぞれが知ることで、理解不足による摩擦が減り、社内のコミュニケーションが円滑になる。「適性検査」を導入・実施する際の注意点
適性検査を実施する際に、注意すべき点が幾つかある。それを取り上げていこう。●信頼性のある検査か
まず、信頼性のある「適性検査」であるかどうかを確かめよう。「適性検査」には数多くの種類があるものの、受検者の特性を正しく反映しきれていないものもあったりするからだ。●不正行為への対策
不正行為の対策を施すことも忘れてはならない。自宅で受検できるWebテスト型は特に注意を要する。電子機器の使用や替え玉受験、カンニングをしやすいからだ。●判断基準の明確化
選考通過の判断基準をどこに設定するかもあらかじめ決めておきたい。判断基準が不明確だと、ただ単に検査を行っただけで終わってしまう。もう一つのポイントが、「適性検査」を行うに当たり、自社が求める人材や適性を設定することだ。可能であれば、自社で活躍している社員に事前に「適性検査」を受けてもらい、その傾向を把握しておくのも有益な方法だ。●データを鵜呑みにしない
「適性検査」の結果をそのまま信じ込んでしまうのは危険だ。点数だけで採用の可否を判断すると、優秀な人材を見逃してしまう可能性がある。適性検査と面接を組み合わせ、面接では、適性検査の結果を基に、その背景にある考え方や行動特性を深く掘り下げると、力や適性をより正確に把握できる。●候補者が対策していることを考慮する
多くの「適性検査」はその対策方法が広く知られており、受験者が事前準備をしていることを前提に評価する必要がある。特に自宅受検でのWEBテストではカンニングのリスクもある。そのため、一般的な「適性検査」だけでなく、独自の評価方法を組み合わせたり、あまり知られていない検査も併せて導入したりすると良い。まとめ
「適性検査」で見極められるのは、学力や知能だけではない。個人の価値観、志向などのパーソナリティや適性も含まれる。しかも、その利用範囲は幅広い。採用だけでなく、管理職候補の選抜や配属、育成計画などにも役立つ。もはや、人事担当者の経験や勘などで採用や異動などを決める時代ではない。対象者の能力や価値観などを数字で見える化した上で、判断することが求められている。HRプロ:適性検査に関するサービスはコチラ
よくある質問
●「適性検査」はどんな内容?
「適性検査」の主な測定内容は、基礎能力、性格、職場適応性、ストレス耐性に分類できる。「基礎能力検査」では言語力や数理能力、論理的思考力といった知的能力を評価し、「性格検査」ではパーソナリティや価値観、行動特性を把握する。「職場適応性検査」では仕事への態度や対人関係能力、組織への順応性を測定し、「ストレス耐性検査」では対人・対課題・対役割・対環境といった各種ストレスへの耐性と対処能力を診断する。●「適性検査」とSPIは同じ?
「適性検査」は、人材の能力・資質、職場適応性などを見極めるための検査であり、その一種が「SPI」である。「SPI」は1970年代に誕生した、適性検査の先駆け的存在だ。以後、時代の変化とともに、「SPI」以外にも多様な「適性検査」が開発・商品化されてきている。- 1