ProFuture代表の寺澤です。
6月13日、「就職・採用活動日程に関する関係省庁連絡会議」が開催され、政府のインターンシップに関する基本的認識や推進方策を取りまとめた「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」(文部科学省、厚生労働省および経済産業省合意。略称:三省合意)が改正されました。内容的には、4月18日に公表された「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」(略称:産学協議会)2021年度報告書「産学協働による自律的なキャリア形成の推進」を踏まえたものになっています。
第136回 2023年卒の新卒採用における各採用活動の“実施時期”や“開催形式”とは

これを契機にインターンシップは変わるのか

ここで、簡単に今回の内容を確認しておきましょう。まず、産学協議会ですが、こちらは経団連が2018年10月に「採用選考に関する指針」を策定しないことを決定したことを契機に、Society 5.0 人材の育成に向けて、産業界が求める人材像や採用の在り方、大学教育への期待等について、大学と経団連の代表との間で率直な意見交換を行うための継続的な対話の場として、2019年1月に設置されたもので、経団連会長(住友化学会長)の十倉雅和氏と就職問題懇談会座長(東北大学総長)の大野英男氏が座長を務めています。

産学協議会は上記報告書の中で、インターンシップで取得した学生情報を広報活動や採用選考活動に使用してはならないとされていた三省合意に対して、インターンシップについて新たな定義を定め、一定の基準に準拠するインターンシップで得られた学生情報については、その情報を採用活動開始後に活用可能とすることで産学が合意したとし、政府に対して三省合意の見直しを要望していました。今回の改正により、それが正式に決定したというわけです。

改正の対象となるのは、令和5年度(2023年度)実施のインターンシップ(2025年卒対象)からで、それも一定の基準を満たしている必要があります。インターンシップが再定義され、対象となるインターンシップは、以下の類型のうち、タイプ3およびタイプ4です。

・タイプ1 オープン・カンパニー
・タイプ2 キャリア教育
・タイプ3 汎用的能力・専門活用型インターンシップ
・タイプ4 高度専門型インターンシップ(試行)

現在最も多く実施されている「1Day仕事体験」や複数日程でも就業体験を伴わないものは、「タイプ1 オープン・カンパニー」もしくは「タイプ2 キャリア教育」に分類され、今回の学生情報の利用が認められるインターンシップには含まれません。タイプ4は博士課程を対象に試行的に行われているものになりますので、実質的にはタイプ3が採用活動で展開されるインターンシップのタイプとなります。タイプ3であっても、基準となる要件を満たす必要がありますが、そのうちの主な要件を挙げてみます。

・インターンシップ実施期間は、汎用的能力活用型は5日間以上、専門能力活用型は2週間以上とする。
・就業体験は必須で、インターンシップ実施期間の半分を超える日数を職場での就業体験にあてる必要がある。
・実施場所は職場で、職場以外との組み合わせも可。ただし、テレワークが常態化している場合には、テレワークも可。
・実施時期は、学業との両立に配慮する観点から、大学の正課および博士課程を除き、卒業・修了前年度ないし卒業・修了年度(つまり、学部3年・4年、修士1年・2年)の長期休暇期間中に実施。


近年では、インターンシップはもはや採用活動や就職活動の重要な施策となっており、ほとんどのインターンシップにおいて学生情報は既に採用活動に利用されているのが実態です。今回の三省合意の改正は、インターンシップで得た学生情報の採用活動への利用について、経団連が後追いで政府のお墨付きを得ようとしたに近い構図だと思われますが、いまさら感のほうが強いです。

現在実施されているインターンシップのうち、今回の改正の条件に当てはまるインターンシップは極めて限られています。きっと、この条件に沿う内容のインターンシップに変えていくべきだという趣旨も含まれているのでしょう。ただし、内容の変更を試みるケースが一部ではあるかもしれませんが、大きな動きになることは到底考えられません。2023年度以降も、1Day仕事体験タイプをはじめ、これまでどおりのインターンシップが大勢を占め、インターンシップでの学生情報を堂々と採用活動に使用する流れはもはや変えられないのではないでしょうか。

学内企業セミナーもオンラインが優勢

さて、今回も前回に続き、HR総研が、2022年3月9~28日に企業の採用担当者を対象に実施した「2023年新卒採用動向調査」の結果を紹介します。

まずは、学内企業セミナーへの参加状況から見ていきましょう。[図表1]は、企業規模別に「全体(オンライン形式・対面形式のいずれか)」、「オンライン形式」、「対面形式」での参加大学数をまとめたグラフになります。
[図表1]学内企業セミナー参加状況
「参加した」(「1~10校」から「101校以上」の合計、以下同じ)割合を見ると、1,001名以上の大企業では「対面形式」が65%なのに対して、「オンライン形式」では71%になるなど、いずれの企業規模においても「対面形式」よりも「オンライン形式」のほうが参加した企業の割合が高く、参加大学数も多くなる傾向が見られます。新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着きを見せ、これまでのオンライン授業中心からキャンパスでの対面授業中心へと大きく舵を切ったのは、本年4月の新学期からという大学が多く、3月時点ではまだ「対面形式」での開催準備が間に合わなかったことも影響しているのでしょう。ただ、今後は「対面形式」での学内企業セミナーが増えてくるものと思われます。

また、「参加した」割合を「全体」で比べてみると、300名以下の中小企業では49%なのに対して、301~1000名の中堅企業で69%、大企業では76%と4分の3を超えるなど、企業規模が大きくなるほど参加した企業の割合が高くなっています。また、参加大学数を「1~10校」と「11校以上」(「11~20校」から「101校以上」の合計)で分けて比較してみると、大企業ではいずれも38%で同程度となっていますが、中堅企業では「1~10校」46%に対して「11校以上」23%、中小企業に至っては「1~10校」41%に対して「11校以上」はわずか7%となるなど、参加大学数においても企業規模による差が大きいことが分かります。

2023卒採用のために参加した大学数を前年との比較で回答してもらったところ、全体では「変わらない」とした企業が71%で最も多いものの、「減少」5%に対して「増加」は24%と、参加大学数が増えた企業のほうが大きく上回っています[図表2]。キャリアセンターにおいても対面式での学内企業セミナーが再開されるなど、受け入れる大学側の環境の変化も影響しているものと推測されます。
[図表2]学内企業セミナー参加学校数の増減
企業規模別で比べてみると、いずれの規模でも「増加」は21~26%とある程度同様の傾向となっているのに対して、一方の「減少」を見ると、大企業はゼロなのに対して、中堅企業で3%、中小企業では9%と1割近くに及ぶなど、規模が小さくなるほど「減少」の割合が高くなっています。企業の採用意欲の回復ぶりが伝えられる中、中小企業では他の規模の企業と比べて、業績の回復が遅れている企業の割合が高いことも影響しているものと思われます。

大企業は半数以上がセミナーのオンライン開催を維持

この記事にリアクションをお願いします!