人手不足の時代において、社員の離職が続けば、企業にとっては大きなダメージとなる。それが、早期であれば、なおさら採用や育成にかけたコストは無駄になってしまう。そこで、今回はキーワードとして「離職率」を取り上げてみたい。その定義や計算方法といった基本的な知識はもちろん、「離職率」が高い・低い職場にはそれぞれどのような特徴があるのか、改善に向けたポイントは何かなどを解説していこう。
「離職率」の定義や計算方法とは? 高い原因や改善に役立つ低い企業・職場の特徴などを解説

「離職率」の定義と計算方法とは

「離職率」とは、一定期間においてどれだけの社員が離職したかを表す指標である。一般的には、期初から期末までの1年間で算出することが多いが、入社後1年間、入社後3年間など、「離職率」を算出する目的に合わせて設定されている。

「離職率」は、企業の働きやすさや魅力を示す指針の一つであり、人事担当者にとって重要な業績評価指標KPI(Key Performance Indicator)である。ただ、一概に「離職率」が高い会社は良くない、逆に「離職率」が低い会社は良い会社とも言いきれないので注意が必要となる。

例えば、ベンチャー企業やスタートアップ企業の場合、1〜2年で企業規模が一気に拡大することは珍しくない。こうしたなか、自分にできる役割を一定レベルで果たすことができたと考え、さらなるキャリアアップを求めて、早期に退職するケースが見られる。当然ながら「離職率」は高くならざるを得ない。

一方、業績があまり芳しくなく、新卒や中途を多数採用をする余裕がない会社であれば、「離職率」はかなり低くなりがちとなる。それでも、求職者は企業の「離職率」をどうしても気にしがちだ。求職者の興味や採用成功へのつながりを考えると、全く無視するわけにはいかない指標といえるだろう。

また、国内における新卒入社の3年以内での「離職率」を見てみると、中学卒業者が7割、高等学校卒業者が5割、大学卒業者が3割となっており、「753(シチゴサン)現象)という名で問題視されている。

●定着率との違い

「離職率」と似ている言葉に「定着率」がある。これは、「入社した人が、ある一定期間において、どれぐらい定着しているか」を表す指標だ。わかりやすく言えば、「離職率」は離職に着目した指標、定着率は定着に着目した指標となる。

例えば、4月1日に100名の新入社員が入社し、1年後80名が退職せずに勤めているとすると、「1年間の定着率」は80%となる。

●「離職率」の計算方法

「離職率」は法律で定義されているわけではない。そのため、計算方法も指定されていないが、一般的には離職者数÷ある時点での従業員数×100(%)で表される。

最も単純なのは、期初の人数を分母、期末までの年間退職者数を分子とするパターンだ。例えば、2021年4月1日の社員数が100名いた会社で、在籍していた100名のうち10名が、2022年3月31日までに離職。90名が在籍している会社での離職率は、10名÷100名×100=約10%となる。

もう一つのケースを見てみよう。こちらは、期初にいた社員のうち、年間何%の社員が退職したかを算出するという方法だ。例えば、社員数100名の企業で、2021年4月1日に10名の新卒社員を採用したが、2022年3月31日までに新卒社員のうち5名が退職。この場合の「離職率」はどう計算すれば良いか。ここで、計算の対象になるのは、2021年4月1日に採用した10名の新卒社員だ。そのため、「離職率」は5名÷10名=50%となる。

「離職率」が高い原因や低い職場の特徴

ここでは「離職率」が高い、または低い企業の特徴がどこにあるのかを説明しよう。

●「離職率」が高い職場の特徴

・休日日数
「離職率」の高い企業は、総じて休日日数が同業他社よりも少ない。より待遇の良い会社があれば転職してしまう可能性があるので、できるだけ休日日数を増やすよう努力したい。特に社会人になりたての時期は気になるものだ。自分は土曜日も出勤しているのに、友人は完全週休2日制となると、どうしても待遇を比較してしまう。

・評価制度
評価制度に対する不満が多いのも、「離職率」が高い企業の特徴と言える。成果を出しても正当に評価されないのであれば、他社で頑張ろうという気持ちがどうしても湧いてきてしまう。従業員の定着、離反やモチベーション低下を防ぐためにも、公平性を感じる評価制度の整備を心がけたいものだ。

・人間関係、コミュニケーション
職場の人間関係やコミュニケーションに問題があると、「離職率」は高くなってしまう。業務の進行を妨げるとともに、品質やモチベーションが下がってしまうからだ。それだけに、人間関係で何かトラブルを確認・発見したら、すぐに改善するようにしたい。ネガティブな要素がきっかけとなり、離職を考える人が出てくるものだ。

・ハラスメント
悪質ないじめやハラスメントも「離職率」の高さにつながりやすい。自分が直接の被害者でなかったとしても、職場の雰囲気を毛嫌いし離職を考える人が出てくるであろう。

・曖昧な業務内容
業務内容が曖昧であるのも、「離職率」の高い職場の特徴だ。雑務ばかりに時間を奪われて、自分が本来遂行すべき業務ができていないと、本人はもちろん上司や同僚も不満を持つようになってしまう。その結果として、早期離職となるケースが少なくない。

・教育やフォロー体制
教育やフォロー体制の不備が目立つのも、「離職率」の高い職場ならではである。これでは、従業員はその企業での自分の将来に希望が持てるはずがない。むしろ、不安を感じて離職を選択してしまう可能性が高い。

・休暇の取りづらさ
昨今は、有給休暇の日数やその他の休暇制度の種類を充実させる企業が増えている。それだけに、休暇があっても取得しにくい雰囲気の職場だと「離職率」は、自ずと高くなりがちだ。

・働き方
働き方の選択肢が少ないことも、「離職率」の高さに繋がりやすい。誰しも家族や、子育て、介護、学び直しなど、さまざま事情を抱えて働いているものだ。それだけに、選択肢が少ないと「働きにくさ」を感じてしまう。

●「離職率」が低い職場の特徴

・労働環境の良さ
「離職率」が低い企業は、一般的に労働環境が良い。完全週休二日制はもちろん、年間の休日日数も多く、しかも残業時間が少ないなど、ワークライフバランスが徹底されている。仕事の疲れを回復しやすい環境にあると言って良いだろう。

・評価制度の透明性
評価制度の透明性が高いのも、「離職率」が低い企業の特徴だ。評価基準が明確であれば、社員は何をしたら良いかがしっかりと理解でき、モチベーション高く働けるはずだ。

・良好な人間関係
「離職率」の低い企業には、社員同士の人間関係が良いという特徴もある。人間関係が良いと情報共有もスムーズに進み、不愉快な思いをすることもないからだ。それだけに、社員同士の人間関係をいかに改善していくかを、常に心がけておきたい。

「離職率」の改善に向けたポイントを紹介

最後に、「離職率」を改善するためのポイントを解説していこう。

●従業員満足度調査

まずは、従業員満足度調査を実施することだ。社員が自社のどんなところに不満に思っているかが把握しやすくなるからである。それを基に、改善施策を実施していけるので非常に有効と言える。

●360度評価

360度評価も、「離職率」の低下につながる施策と言える。上司や同僚などと相互に評価しあえる制度であり、評価に対する納得感の醸成にもつながるだろう。また、複数名からのフィードバックは、社員からすれば、どう努力すれば良いのかがより明確になるので、目的意識を持って働くことができるだろう。

●評価制度の改善

日本では、「年功序列型」の人事・賃金制度を導入している企業が多い。これだと、どうしても個人の能力やスキル、実績とは関係なく人事や賃金が決められやすく、従業員のモチベーションはが低下しかねない。仕事に対する従業員の意欲を高めるためにも、企業への貢献度や業績を評価する、成果に応じてインセンティブを与えるといった制度などもぜひ検討したい。

●休暇の取りやすい環境づくり

2019年4月に施行された働き方改革関連法案に基づいて、法定の年次有給休暇付与日数が10日以上の労働者に対し、毎年5日の有給休暇を確実に取得させることが義務づけられた。これをきっかけに、有給休暇を取得しやすい環境づくりに取り組もうとしている企業が多い。事実、年に連続して3営業日以上の有給休暇を1回取得した従業員に、手当を支給するといったユニークな事例も出てきている。

●相談しやすい職場環境の構築

職場環境の良し悪しは、従業員にとって重要な要素だ。上司や同僚との人間関係がスムーズでなければ、ストレスを感じてしまうだろう。なかには、人知れず悩みを抱えているというケースも少なくない。そうした悩みを引き出していけるよう、定期的に上司や同僚、部下を交えてコミュニケーションを取る時間を設けたり、人間関係の悩みを気軽に相談できる窓口を設置したりするというのも良いアイデアだ。
大前提として、「離職率」は何らかの基準値や絶対値があるわけではなく、対象母体や算出の目的によって大きな違いが出る。同じ業種の企業でも、人材育成に対する取り組み方によって開きが生じてくるほどだ。といって、気にしなくても良いと言うわけではない。情報の透明性が求められる時代ゆえ、求職者はさまさまな情報を入手しやすくなっている。それだけに、「離職率」を軽視することはできない。自社の離職状況はどうか、「離職率」はどれくらいかを把握した上で、「離職率」の低下につながる施策を講じていく必要がある。「離職率」の上昇を防げれば、人材の流失を止められるどころか、優秀な人材も集まりやすくなる。企業にとっては大きなメリットと言えるだろう。
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