一気に加速するビジネスのオンライン化に効果的な研修&アセスメントとは?

HRプロ編集部取材×注目人事トレンド

新型コロナウイルスの感染拡大は、ビジネスのさまざまな領域においてオンライン化の動きを加速させている。この流れは、組織内外の研修や人材開発の現場においても例外ではない。しかし、オンライン研修のニーズが高まる一方で、経験がない中、最初の一歩を踏み出せずにいる企業も少なくないだろう。オンライン研修を成功させるためのポイントとは一体何か、そして人事、人材開発担当者はどうあるべきなのか、今後の方向性について考える。
そこで今回は、米国、日本をはじめ50ヵ国以上にわたり企業の人材育成を支援するウィルソン・ラーニング ワールドワイド株式会社に、オンラインでの研修およびアセスメントの効果的な導入や活用事例について伺った。

※本インタビューは、2020年4月にZoomを使用して実施
【インタビュー】
ウィルソン・ラーニング ワールドワイド株式会社
執行役員 L&D事業本部L&Dセールスグループ長 小原 大樹 氏
L&D事業本部 L&Dセールスグループ シニアコンサルタント 加山 祥三 氏
L&D事業本部 デザイングループ リーダー 井上 央子 氏

なぜ今オンライン研修のニーズが高まっているのか

――新型コロナウイルスの感染拡大に伴い多くの企業がリモートワークに移行していますが、研修や人材開発の場においてもオンライン化のニーズは高まっているのでしょうか?
加山 数年前からオンライン研修を導入する企業は増えていましたが、新型コロナの影響でその流れが一気に加速し、問い合わせが殺到しています。実際にこれを機にオンライン研修を実施する側も受講した側も「従来の集合研修で行われる学習活動の多くがオンラインでも可能である」ことに気づいたようです。確かに受講者側の視点に立てばより効率的な学習方法を選択するのは当然のことだと思います。この流れはしばらく続き、オンライン研修を導入する企業は増えていくと思います。また、新型コロナが収束し集合研修の実施が可能になったとしてもオンライン研修のメリットを知った企業はオンライン研修を「当たり前」の選択肢として取り入れ、新しい人材育成の形を作っていくのではと思われます。

小原 一方で、研修に対する課題として、学習効果をより一層高めたいというニーズは継続してあります。そうした中、私たちは研修内容を現場に定着させるラーニングトランスファー(学習転移)という考え方を重要視し、単に研修を行うだけでなく、その前後のプロセスも含めた一連の学習活動を設計することが重要であると提唱してきました。そしてその設計の際にもオンラインを活用することは有効だと考えています。研修前の動機づけや研修後のフォローアップなども含めて、オンラインなら一連の学習活動のデザインが非常にやりやすくなります。そういった意味でも、研修にオンラインを取り入れていく流れは、今後確実に広がっていくでしょう。

ウィルソン・ラーニングが考えるオンライン研修の在り方

――従来の集合研修はすべてオンライン研修に置き換えられていくのでしょうか? 今後の人材育成の在り方はどのように変わっていくのか、御社の見解をお聞かせください。
加山 まず前提として、ここでお話しするオンライン研修とは、従来のeラーニングなどは含めない「オンライン上で、同期する(同じ時間を共有する)研修」を指します。それを踏まえて言うと、私たちは「集合研修vs.オンライン研修」という対立軸では捉えていません。つまりそれぞれに強みや役割があり、両者を組み合わせた方が効果的だということです。
集合研修の強みはすでに多くの方がご存知の通り、その場の一体感やグループダイナミクスを活用した適度な緊張感が存在すること、また物理的な物や体を使ったアクティビティを活用できることなどです。一方でオンライン研修ならではの強みは意外に知られていません。そこに気づかないと、今までの集合研修を単純にオンライン化しただけの効果の薄い研修で満足してしまう危険があります。反対に、オンラインの強みを活かした研修を提供できれば、ポストコロナの「New Normal」となる人材育成のスタイルが確立できるはずです。

では、オンラインの強みとは何か。いくつかありますが一部をご紹介すると例えば、対面のコミュニケーションよりもオンラインコミュニケーションの方が自己開示(自分の思考・感情を相手に他者に伝えること)が4倍の量も行われることがわかっている(Tidwel&Walther,2002)。対面にはないオンラインという仮想空間ならではの効果なのでしょう。オンライン飲み会が流行るのも良くわかります。この点を利用すると例えば内省的な内容を含むプログラムもオンラインならではのものが実現可能である。また、そこにアセスメントも組み合わせ、一連のプログラムをデザインすることで人材育成の在り方に広がりを持たせることができます。

小原 従来の集合研修にオンライン研修が加わることで、学習環境や学習方法のバリエーションは格段に増えていくことが予想されます。お客様の選択肢が増えれば、学習を提供する私たちへの要求も今まで以上にシビアなものになるでしょう。新型コロナウイルスの影響でオンライン研修へのニーズが高まる中、弊社としてはお客様のために今できることに全力で取り組んでいますが、これを単にオンライン化への波とは捉えず、これから先のこともしっかり見据えて、全方位的に学習を提供できるように私たちも学び続けていこうと考えています。私たちはこの状況を、企業内の人材育成をより良い形に変えていく新しい当たり前へのきっかけと捉えています。

席についてからでは遅い。“レディネス”と“エンゲージメント”が鍵

――オンライン研修を成功させるためのポイントや注意すべきことなどはありますか?
加山 キーワードは、“レディネス”と“エンゲージメント”です。まず“レディネス”ですが、学習効果を高めるために事前の準備が必要不可欠なのは言うまでもありません。特にオンライン研修の場合、集合研修以上に学習する態勢を事前に整えておく必要があります。席について挨拶をしてからでは遅いのです。具体的にはチャットや投票、ブレイクアウトセッション、効果的な質問などの準備を事前にしておくとよいでしょう。そしてこれらは2つ目のキーワードである“エンゲージメント”にもつながります。集合研修の場合、途中で抜け出すことはなかなかできませんが、自宅等から気軽に参加できるオンライン研修の場合、つまらなかったり、飽きたら途中で止めて、画面を映しながら手元では別の作業をすることも物理的には可能です。そのため受講者のモチベーションを下げないように、5分に1回受講者に問いかけるなど、受講者からのアクションを求めるようなインタラクティブな仕掛けを用意しておくことが大事になります。
――オンライン研修を導入するうえで人事・人材開発担当者にはどのようなスキルや姿勢が求められるとお考えですか?
小原 計画や開発に時間をかけすぎず、プロトタイピングをしながら作っていくことも必要になってくると思います。実際にやってみて、修正してというサイクルを、スピード感をもって回していく姿勢が今まで以上に求められるようになると考えています。オンライン化によって学習の選択肢が増えると、おのずと社員の学びたいことも増えていきます。これからの時代、自分自身を成長させるためには、そして自分のキャリアを作っていくためには、自ら主体的に学ばなければなりません。そうした中で、人事はコンサルタント的な視点を持って、社員一人ひとりが何を学びたいのか、どんなニーズを持っているのかを分析し、適切な学習が可能な環境を整えるようにサポートする必要があります。こちらから与えるというよりも、学ぶ意欲や知的好奇心を刺激する働きかけや、学ぶ意欲を持った人が自分のタイミングで学ぶこと、また、組織のパフォーマンス向上のために必要なスキルを浸透させていくための定着まで見据えた施策の提案も求められるようになります。加えて、オンラインでも学習効果をきちんと担保できるような研修のデザイン力も求められるでしょう。

互いに学び合えるコミュニティを作る

――これまでに御社では、どのようなオンライン研修を実施されたのでしょうか。具体的な導入事例や成果などをお聞かせください。
加山 次世代リーダーの方々を対象にした研修事例をご紹介します。この研修は6回シリーズで2カ月に1回集合研修を行うのですが、その前後にオンライン研修を組み込むことで緻密なフォローアップができ、非常に学習効果の高いプログラムとなりました。なかでも特に良かったと思うのは、1年間を通じて受講者同士が親交を深め合い、コミュニティが醸成できたことです。このコミュニティというのは学習を促進する上で大変重要な要素となります。集合研修におけるリアルで真剣なディスカッションと、オンラインで気軽に自身の悩みや想いを語り合うことをバランスよく行ったことで、お互いに刺激し合ったり、学び合ったりできる風土が作れました。

小原 先ほどもお話したように、学習においては主体性がとても大事だと考えています。しかしどんなに主体的に学ぼうとしても、「ここまでやらなくてもいいのでは」「やっぱり仕事のほうが大事だ」などと、必ずどこかで躓くことがあります。そんなときに周囲を見て、同じように学んでいる仲間がいると、励みにもなりますしやる気も沸いてきますよね。心理学者のエドワード・L・デシ氏は、内発的動機付けのための要素として、「自律性」と「有能感」と「関係性」を挙げていますが、まさしく自律的な学びにとっては、お互いに学び合えるコミュニティやフラットな関係性を作ることが必要不可欠なのかもしれません。そして、そうした風土を作ることは、私たちがこれまでやろうとして継続的に取り組んできたことでもあります。それがオンライン研修という選択肢を得て、幅が広がると言えると思います。

能力開発のためのアセスメント

――昨今は研修だけでなくアセスメントの領域にもオンライン化の波が広がっているそうですが、そもそも御社ではアセスメントの役割について、どのように捉えていらっしゃるのでしょうか?
井上 一般的にアセスメントというと「評価」のイメージがありますが、私たちはアセスメントを「評価」のためでなく、「能力開発」のために使うことを提唱しています。そしてそのベースとなっているのが、APLSという考え方です(図版参照)

この後、オンラインアセスメントがもたらすメリットなどについての話題が続きます。続きは、記事をダウンロードしてご覧ください。

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著者プロフィール

HRプロ編集部

採用、教育・研修、労務、人事戦略などにおける人事トレンドを発信中。押さえておきたい基本知識から、最新ニュース、対談・インタビューやお役立ち情報・セミナーレポートまで、HRプロならではの視点と情報量でお届けします。

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