パナソニックグループでは、創業者・松下幸之助が示した「ものをつくる前に、人をつくる」という考え方を今に受け継ぎ、人的資本経営を積極的に推進しています。そうした中、取り組みをさらに加速させるために、2024年7月、日本GEやメルカリなどで人事責任者を歴任し、成果を上げてきた木下達夫氏をグループCHROとして迎え入れました。

そこで今回は、労務管理、勤怠管理、給与計算、タレントマネジメントをワンストップでサポートする人事労務システム『One人事』を提供するOne人事株式会社・宮原一成氏がパナソニック ホールディングスを訪問。キーパーソンである木下氏にご登場いただき、同社の人的資本経営の現状やビジョン、タレントマネジメントの取り組みなどについてお伺いしました。(以下敬称略)

【出演者プロフィール】


  • 木下 達夫氏

    ■木下 達夫氏
    パナソニック ホールディングス株式会社
    執行役員 グループCHRO(最高人事責任者)

    1996年、P&Gジャパン合同会社に入社し、採用・HRBPを経験。その後、2001年に日本GE株式会社入社。金融部門の人事部長、アジア組織人材開発責任者、GEジャパン人事部長、アジア太平洋地域の組織人材開発、事業部人事責任者と数々の要職を歴任。2018年には株式会社メルカリの執行役員CHROに就任し、グローバルテックカンパニーとして外国籍の社員が活躍できる組織作りを推進。2024年7月、パナソニック ホールディングスに入社し、執行役員 グループCHROに就任。

  • 宮原 一成氏

    ■宮原 一成氏
    One人事株式会社
    HRTech事業本部 HRTech SaaS事業部 事業部長

    1998年、マイクロソフト株式会社に入社。営業職に従事し営業本部長等を務める。2011年、ビル・ゲイツが全世界の従業員の中からトップクラスの成績を収めた者に与えるChairman’s Awardを受賞。2016年、株式会社チームスピリット入社し、営業責任者、ビジネス部門担当の取締役等を務める。その後、外資系企業での日本市場の立ち上げおよび国内スタートアップでのアライアンスの立ち上げを経て、2024年、One人事株式会社に入社。SaaS事業の責任者として活躍。

パナソニック ホールディングス木下氏、One人事宮原氏

社員一人ひとりが積極果敢に挑戦するプリンシプルベースへの回帰

宮原 御社は創業以来、脈々と受け継いでこられた「物をつくる前に、人をつくる」という考え方のもと、人的資本経営に力を注がれておられます。そうした中、取り組みを推進するキーパーソンとして2024年7月にグループCHROに就任された木下様ですが、会社からはどのような成果を期待されているとお感じになられていますか?

木下 グループCEOの楠見と最初に会ったときに、私に対する期待値が明確に示されました。それは「創業者 松下幸之助の経営哲学に基づく経営基本方針を軸として、プリンシプルベースの組織に変革し、社員一人ひとりの可能性をUNLOCKしたい」というものです。弊社はこの数十年、一定の売上や利益は上げているものの、思い描いた通りに事業が成長しているのかというと、その点はまだまだ十分ではないと考えています。楠見は反省や悔しさをにじませると同時に、この閉塞感を打ち破るためには、より大胆な覚悟で変革を進めなければいけない、そのためには自分たちの持っている力を解放する必要があると、私に語りかけました。

つまり、これまで作ってきたルールや前例が社員の可能性を制約してしまっている。そしてそれを解き放ちたいと。では、どのようにして解放するのかというと、そのためには原理原則に立ち戻る必要があります。かつてのパナソニックは、「人を活かす」という経営方針に沿って社員一人ひとりが積極果敢に挑戦できるプリンシプルベースの会社でした。今後、持続的な成長を実現するためには、再びそうした組織に回帰する必要があります。私がグループCHROに任命されたのは、社外の色々なプラクティスを知っている人間に舵取りを任せたほうが推進は加速すると判断されたのが理由でしょう。
パナソニック ホールディングス木下氏
宮原 社員の可能性をUNLOCKする、解放するというのは、具体的にどのような状態を定義・想定されていらっしゃるのでしょうか?

木下 一人ひとりの可能性がUNLOCKされた状態というのは、ひと言でいうと、「仕事に没入して、楽しくて仕方がない状態」を指します。我々はこれをフロー状態と呼んでいるのですが、この状態に入るためには、「周囲の期待を超えて積極果敢に挑戦すること」と、「持てる力を最大限に発揮すること」という2つの条件が満たされなければなりません。

では実際にどのくらいの社員が積極果敢に挑戦し、持てる力を発揮できているのかエンゲージメントサーベイで調べてみたところ、「会社や上司からの動機づけ」と「仕事の阻害要因がない」の両方で肯定的に回答した社員の割合は32%となりました。約3人に1人という割合ですから、決して悪い数字ではありませんが、何とかこれを過半数以上に引き上げることが目標です。

宮原 能力の発揮を阻んでいる主な要因については、どのようにお考えですか?

木下 わかりやすい例でいうと、組織構造が非常に多層的で、何かに挑戦しようとしても過度な内部調整が必要になるところが挙げられます。また目標設定とそれに対する評価の仕組みも課題となっていました。一人ひとりが本当にチャレンジするような高いハードルを設定できていない、もしくは会社側も積極的な挑戦を促せていないケースが多かったと感じます。先ほどのサーベイの結果を見ても、「自分がリスクを取ってチャレンジした場合、それが適切に報われると思うか?」という質問に対して、肯定的に回答した人は非常に少なく、やはり十分に背中を押せていないという現状がありました。

宮原 我々も立場は違いますが、多くのお客様のお話を伺っている中で、難易度の高い目標設定、ストレッチゴールというのは絶対に必要だと感じています。例えば、スポーツを例にとってみても、1秒でも速く、1メートルでも遠く…という目標を設定することが選手のモチベーションに大きく関わってきますから。そういう意味でも、多くの日本企業様は、挑戦することをリスクと捉える傾向が強いように感じます。逆に欧米では挑戦しないほうがリスクだと捉える傾向が強いため、外資系企業で育ってきた人間からすると、目標設定が緩いと歯がゆい気持ちになりますよね。
One人事宮原氏
木下 本当におっしゃる通りですね。だからこそ、挑戦をきちんと評価する仕組みが必要だと思います。挑戦に失敗はつきものですから、誰だって最初は「どうしようかな」と迷うものです。でも、失敗しても「よくやった」と評価してくれるのなら、思い切り挑戦できるじゃないですか。とにかく私がやっていきたいのは、新しいことに挑戦する風土を醸成することなんです。

協力:One人事株式会社


この後、下記のトピックが続きます。
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●挑戦しやすい風土づくりの実現に向けて、 組織カルチャーを戦略的にデザインする「6つの原則」
●100人100通りの組織デザインの先にある理想の形とは
●10年後に掲げた壮大な目標~鍵を握るタレントマネジメントの課題と展望~
●人的資本経営時代の本格的な到来を迎え、人事に求められる役割

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