今回は、グローバルで豊富な経験を持つコンサルタントである米国DDI社のエリック・ハンソン氏と、マネジメントサービスセンター 辰口健介氏の対談をもとに、お話を掘り下げていきます。(以下敬称略)
【プロフィール】
■エリック・ハンソンPh.D.
エグゼクティブコンサルタントとして30年以上の経験を持ち、経営人材の成長と企業価値の向上を支援。多様な業界のCEOや取締役会と協働し、サクセッションマネジメント、アセスメント、タレントレビュー、コーチングを通じて包括的なソリューションを提供する。さらに、エグゼクティブ向けサービスの開発・改善を主導し、グローバルプロジェクトにも精通している。産業・組織心理学博士号および心理学学士号取得。ICF認定コーチ。
DDI (Development Dimensions International, Inc.) エグゼクティブコンサルタント
■辰口 健介
慶應義塾大学環境情報学部卒。Raymond A. Mason School of Business (William & Mary) MBA修了。外資系コンサルティングファーム(マネジャー)、人材サービス会社(人事部長)等を経て現職。専門領域は、サクセッションプランニング、エグゼクティブ層を対象としたアセスメントおよびコーチング。日米のビジネス経験と事業人事の経験を活かして、事業戦略と人事戦略の連動性を高めるコンサルティングを行なっている。Hogan Assessment認定資格者。
株式会社マネジメントサービスセンター エグゼクティブコンサルタント

米国・グローバルと日本におけるサクセッションプランのトレンド
辰口:サクセッションマネジメント、サクセッションプランという言葉は、日本では最近ブームになってきています。米国では歴史のある領域だと思いますが、どのようなニーズで支援をすることが多いのでしょうか。
ハンソン:
企業には、一貫性や継続性が求められます。経営陣が途切れずに輩出されることが重要です。CEOをはじめとする企業のリーダーたちには、「リーダー人材のパイプラインができるような施策を効果的に実行して欲しい」というステークホルダーからのプレッシャーが高まってきています。
企業というのは、やはり成長を続けていかねばなりませんから、サクセッションの目的というのは、とにかくリスクを管理することです。一方、ただリスクを管理するだけではなく、将来にもっと成功できるような伸びしろを増やしていくということでもあると思います。

リスク管理と伸びしろを広げていくという話は、今の日本でも非常に重要なテーマです。日本の場合、背景は大きく3つあると思います。
1つ目は、人的資本開示が日本の多くの企業に求められるようになり、今の経営者だけではなく将来の経営者を持続的に育成・輩出できる会社かどうかが、ステークホルダーから注目されています。2つ目は、日本国内においては労働人口の減少というトレンドがあります。2020年と比較すると、2030年には35歳~44歳の割合が20%減少するというデータも出ています。そのため、後継者を見つける難易度が上がってきているのです。3つ目は、人材の流動化です。日本の大企業でも、キャリア採用を積極化したり、転職をしたりということが一般化しています。
これらをまとめると、より少ない母集団で、よりスピーディーにエグゼクティブ候補を見つけて育てなければならないというなか、一方で育てた人がもしかしたら転職してしまうリスクも持ちながら、いかに後継者を育成するのかということ、そして外から見て候補者にとって魅力的な会社にしていくことが、今の日本が直面しているサクセッションの大きな課題だと思います。こういった日本の状況は、米国やグローバルと共通点はあるのでしょうか?
ハンソン:
グローバルでは似ているところもありますが、やはりかなり違いがあると思います。労働人口の減少は、日本の方が他の国よりも深刻です。人材の流動性については、やはり米国やグローバルでは終身雇用は稀ですから、育成したものの転職してしまうというリスクは、どうしても避けられません。
辰口:
これまでサクセッションプランは、日本ではコーポレートガバナンスや事業承継の文脈で企業トップの後継者をどう育てるかという、比較的限られた世界のテーマだったと思います。しかし環境が変化し、より若い時から人材を動機づけし、持続的に経営幹部を育成・輩出し続けることが重要になってきています。そういった変化は、米国でもありますか?
ハンソン:
米国ではサクセッションプランは、長い間全社的なものだと考えられていました。リーダーシップパイプラインをつくることが、ずっと積極的に話されてきたのです。タレントレビューも定期的に規律をもって行われています。毎回うまくいくわけではありませんが…。

まさにそこが、今回特にお話を伺いたいトピックです。日本でも、人材育成に長く取り組んでいる企業が多いです。階層別の教育は、その最たる事例です。ただ、サクセッションという観点で次の世代をしっかりと育てられているか、課題感を持つ企業も多いです。
協力:株式会社マネジメントサービスセンター
この後、下記のトピックが続きます。
続きは、記事をダウンロードしてご覧ください。
●サクセッションプランの成否を分けるポイントとは?
●能力開発計画の立案と実行~障壁となる要因と対策
●CEOや経営陣だけの役割ではない!取り組みは組織全体で実行すべき
●サクセッションプランのはじめの一歩~最大のインパクトが得られるポイントにフォーカスせよ~
●AI時代の先にある、サクセッションプランの未来
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