HR先進国アメリカの人材育成ではテクノロジー活用の多様化が進む 「日本エンゲージメント協会ATD2019報告会」レポート

HRプロ編集部取材×注目人事トレンド

去る2019年7月31日、一般社団法人日本エンゲージメント協会(以下、JEA)が主催する「第4回JEA研究会」にて『ATD(=Association for Talent Development)2019報告会』が開催された。ATDは世界最大級のラーニングとパフォーマンス向上支援をミッションとする人材育成に関するイベント。2019年は「ATD 2019」として、5月19から22日までの3日間にわたり、アメリカのワシントンD.C.で行われた。報告会では、ATD 2019に参加したJEA副代表理事の土屋裕介氏、株式会社ビジネスコンサルタントで探索・事業開発グループ主席を務める廣瀬沙織氏、ユームテクノロジージャパン株式会社でビジネスプロデューサーを務める小仁聡氏が登壇。それぞれが「ATD」に参加する中で発見し、感じた人材育成の潮流、HR領域の最先端事例について語った。

土屋裕介氏報告 『HRはノウハウからテクノロジーの時代へ』

今回、「ATD」に初めて参加したという日本エンゲージメント協会副代表理事の土屋氏。アメリカのHR分野ではいま、どのような潮流が生まれているのか。会場の様子や各国のHR関係者から聞いた生の声を語っていただいた。

土屋氏 「ATD2019」の会場となったアメリカ ワシントンD.C.のカンファレンスセンターは開放的な雰囲気でした。中央にバスケットボールのゲームコーナーがあったり、お酒やアイスなどが配られていたり、かなり自由な空間で日本のエキスポでは味わえない感覚です。

会場内はセミナー形式とブース展示の2種類に分かれており、私は主にブースの方を見て回りました。合計446ヵ所のブースがあり、全体を見ればアメリカにおけるHRトレンドを把握することができます。私が見た限り、最も多かったブースはリーダーシップに関するものでした。

一昔前に日本で参加したHR系のエキスポでは「どういう研修を売っているか」という、研修の中身を紹介するノウハウの展示が中心でした。しかし、「ATD」では圧倒的にテクノロジーの紹介が多い。実際にデジタルラーニングの機械が置いてあり、「触って学んでみてください」といった具合です。実際に試してみて、「学び方が変わる」と確信を持ちました。

強く印象に残っているのは、The Game Agency社の「The Training Arcade」という学習用ゲームを作るソリューションです。これまで、学習用ゲームは「面白さよりコンテンツの質を追っている」という印象を持っていました。それが実際に触ってみると、普段触れているスマホゲームのように面白い。アメリカでは大企業でも導入されており、高い評価を受けているそうです。こういった製品が登場し、ビジネスの場で受け入れられていることに、アメリカの驚くべき柔軟性を感じました。

また、会場には様々な国から人事担当者が集まっており、話を聞くことができました。その中から、中国とアメリカの方のエピソードを紹介しましょう。

中国では大手のIT企業を中心に教育投資が盛んで、その投資規模は1社あたり年間10億円を超えているそうです。中には企業内大学を作り体系立てて社員教育を行う企業もあるといいます。また、社員とのやり取りでは、メッセンジャーアプリ「微信(WE CHAT)」が使われ、映像を視聴しながら学ぶタイプのトレーニングも多いとのことで、デジタル化が進んでいる様子が伺えました。現在の課題は若手のリテンションで、中には10〜15社ほど渡り歩いている人もいるそうです。

アメリカのバイオ系企業の人事担者によると、その会社ではダイバーシティ&インクルージョン推進が課題になっており、推進に向けて数年前からエンゲージメントサーベイを実施しているそうです。また、業績不調の部門にはフォローサーベイを、退職者にはエグジットサーベイ(退職者の本音を引き出す手法)などを実施。入社から退職まで多様なサーベイを組み合わせて、社員のエンゲージメントを観察しているということでした。また、日本ではまだなじみが薄いですが、アメリカでは「トレーナーとメンターは別の人材が担当するのが当然」と言っていたのが印象に残っています。

今回「ATD」に参加し、会場の雰囲気や聞いた話などから、アメリカのオープンで柔軟な考え方や姿勢を理解できました。いっぽうで、日本のHRは技術やノウハウは高いものの新しいものを取り入れるスピードが遅れているのではないかという危機感も覚えました。人材開発のトレンドは、ノウハウからテクノロジーに移行しています。日本の人事担当者にとっての課題は、HRテクノロジーの活用にどれだけ踏み込めるかにあるのではないでしょうか。

著者プロフィール

HRプロ編集部

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