イノベーションはどこから生まれるのか。また、どのようにすればクリエイティビティが高められるのか。近年、脳科学の分野で多くのことが解明されてきました。新しい発想には知識のインプット、特に「受け入れ難きを受け入れること」が重要だと語る、大阪大学大学院経済学研究科 准教授の中川功一氏に創造性の育て方をお話しいただきました。

講師


  • 中川 功一氏

    中川 功一氏

    大阪大学大学院経済学研究科 准教授

    大阪大学を拠点にしつつ、HRサミット、BOND-BBT MBA、生産性本部、起業塾チャレンジャーズなどで広く志ある皆さんにイノベーションの必要性と技法を伝えて回っています! 2008年東京大学大学院経済学研究科博士課程修了、経済学博士。主な業績:Innovation in VUCA world (2017 Academy of Business and Emerging Markets, Best Paper Award). 変革に挑戦する人に贈る研究書『戦略硬直化のスパイラル』(有斐閣)、現代向けにアップデートされた新しい経営学の入門書『ど素人でもわかる経営学』(翔泳社)発売中!

イノベーションを生み出す方法とは~最新の脳科学の理論を活用し、創造性を育てる~

「最近納得いかないもの」を考えてみる

本日の講演では、簡単なワークショップも行いたいと思っています。早速ですが、皆さん、「最近納得いかないもの」を考えてみてください。例えば、私でいうと、街中で歌いながら歩いている人、です。東京ではあまり見かけないと思いますが、大阪では多くいます。自転車に乗って気持ちよく歌っている人も少なくありません。こうした具合に、私の話を聞きながら、ぼんやりと考えていただければと思います。種明かしは後でいたします。

脳は「不思議な検索機能が備わった記憶装置」

イノベーションやクリエイティブに関して、脳科学の観点からわかってきたことが多くあります。創造は右脳が司るといまだに言われることがあるのですが、脳に右脳も左脳もありません。脳はとてもシンプルで、ひらめきやクリエイティブの機能はなく、それどころか、演算機能すらどこにあるか見つかっていないのです。では、脳とは何か。徹頭徹尾ハードディスクドライブで、どこまでいっても記憶をため込んでいる装置でしかないのです。ただ、この脳に不思議な検索機能がついているのが一つの大きな特徴と言えます。やや単純化しているところもあるのですが、脳とはそういうものだと思ってください。脳にとって考えているとは、記憶を引き出していることを意味します。計算や演算をしているのではありません。過去の経験や聞いた話など、インプットされた情報を引き出して、課題に合わせた解を見つけているのです。また、脳の検索機能が不思議だと言ったのは、ひょんなところで脳の奥のほうにしまっておいた記憶を引き出してくることがあるからです。ある時急に恥ずかしい記憶を思い出して死にたくなる、などということが誰にでもあると思います。

脳は不思議な検索機能の備わった記憶装置に過ぎませんので、創造性そのものを育てること、つまり、創造性をピンポイントで育てることは基本的にできません。新しいアイデアがほしければインプットするしかないのです。従って、若い人の柔軟な発想は嘘で、ベテランの人ほうがアイデアは出ます。なぜなら、経験すなわち知識が多いからです。脳は記憶装置ですので、インプットなしに新しいことは出ないのです。ただ、創造性を育むには、インプットに加え、記憶の引き出し方、検索に関する訓練も必要になってきます。この点もよく理解し、覚えておいてください。

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