昨今、働き方改革をひとつの背景として、社会人の学び直しの必要性がクローズアップされています。本セッションでは、社会人の学び直しを推進する国の政策の動向、日本の社会人の学び直しの現状と課題、新たに出てきた学びのコミュニティの裾野を広げる取り組みについて、産業能率大学の齊藤 弘通氏が講演。続いて法政大学の諏訪 康雄氏とのパネルディスカッションでは、学び直す社会人が少ない理由と解決の方向性について議論が行われました。

講師

  • 齊藤

    齊藤 弘通氏

    産業能率大学 経営学部 経営学科 准教授

    東京都生まれ。慶應義塾大学文学部人間関係学科教育学専攻卒業、法政大学大学院政策創造研究科博士後期課程修了。博士(政策学)。専門社会調査士。(学)産業能率大学総合研究所を経て現職。わが国の高等教育機関における社会人教育の実態やそこでの学修効果、企業内教育との接続のあり方、経営組織における従業員の主体的かつ継続的な能力開発のあり方などについて調査・研究を行っている。


  • 諏訪

    諏訪 康雄氏

    法政大学 名誉教授 / 日本テレワーク協会アドバイザー

    1970年に一橋大学法学部卒業後、ボローニャ大学(イタリア政府給費留学生)、東京大学大学院博士課程(単位取得退学)、ニュー・サウス・ウェールズ大学客員研究員(豪州)、ボローニャ大学客員教授、トレント大学客員教授、法政大学大学院政策創造研究科教授、厚生労働省・労働政策審議会会長等を経て、2013年から法政大学名誉教授。主な著書に『雇用政策とキャリア権』(弘文堂・単著)、『雇用と法』(放送大学教育振興会・単著)、『労使コミュニケーションと法』(日本労働研究機構・単著)、『労使紛争の処理』(日本労使関係研究協会・単著)、『外資系企業の人事管理』(日本労働研究機構・共著)など。


政府が推進する社会人の学び直しをめぐる現状と課題~社会人の学び直しを推進する自助・共助・公助のあり方~

社会人の学び直しを推進する政策の動向とその背景

産業能率大学 経営学部 経営学科 准教授 齊藤 弘通氏

今、社会人の学び直しやリカレント教育への注目が高まっています。背景にあるひとつは働き方改革で、働き方を見直した結果、生まれた時間で何をするのかということです。また、「人生100年時代」といわれる超長寿時代、伝統的な教育・仕事・引退という3ステージからマルチステージの人生モデルに変わっていく中で、どのように能力開発し続けるのかということが議論されています。こうした背景から、最近、政府が社会人の学び直しをめぐってさまざまな提言を行っています。
平成30年6月に閣議決定された「骨太の方針」2018では、人づくり革命を行うということでリカレント教育に力を注ぐことがうたわれています。目玉の政策として教育訓練給付の拡充が盛り込まれ、7割を助成する専門実践教育訓練給付という制度が創設されたほか、産学連携によるリカレント教育の推進も方針の中に含まれています。また、未来投資戦略2018においては、AI分野等にかかわる職業実践力育成プログラム(BP)認定数を2023年度までに倍増する、大学・専門学校等での社会人受講者数を2022年度までに100万人とするということがKPIとして設定され、施策が進められています。
このように社会人の学び直しに関する政策が政府の基本方針の中に入ってきた理由のひとつとして、学校と企業の「効率的な分離」関係に基づく日本的な教育システムが制度疲労を起こしていることが考えられます。日本では、戦後から今日まで学校と企業の間に、「効率的な分離」関係が形成され、学校では基礎的な学力をしっかり身に付け、専門的な職業能力については企業に入ってから個別企業における教育によって一から学んでいくシステムが続いてきたのです。このシステムは個別の企業で働く上での「企業特殊能力」の開発には効果的・効率的に機能してきましたが、第4次産業革命とも呼ばれる技術革新が進み、組織を超えた知識やスキル、創造性が求められるこれからの時代、組織内でだけ通用する能力しか身に付けていないのは問題ではないか、この分離状態を続けていてよいのかといったことが指摘されているわけです。

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