商品やサービスを利用した時に得られる「ベネフィット」。ビジネスシーンでもよく耳にする「利益」を指す用語だ。だが、「メリット」と混同してはいけない。本稿では「ベネフィット」の定義やメリットとの違い、対義語、使い方、具体例などをまとめて解説する。
「ベネフィット」とは? メリットとの違いや対義語、使い方を解説

ベネフィットとは

「ベネフィット」とは、利益や報酬を意味する英語の「benefit」を語源とするカタカナ語だ。一般的には、物事を利用することで得られる利益を言う。しかも、その利益には金銭的な利益だけでなく、心理的・機能的な利益も含まれる。他にも企業の福利厚生や成果に対する報酬、慈善活動なども「ベネフィット」と呼ばれることがある。

●マーケティングにおけるベネフィットの意味

マーケティングにおいては、顧客が商品やサービスを利用した際に得られる利益や恩恵を指す。「使って良かった」と感じるポジティブな変化と言って良い。企業としては、購買意欲を高めるためにもどんな「ベネフィット」を提示するかが重要となってくる。

例えば、アップルが「iPod」を発売した際には自分が好きな音楽を大量に携帯できて、それをいつでもどこでも聴けることを「ベネフィット」としてアピールした。

●医療におけるベネフィットの意味

医療現場でも、「ベネフィット」という言葉は多用されている。医療においては、医薬品や医療機器を使うことで期待できる効果や効き目を言う。例えば、治療時間の短縮や症状の改善、苦痛の軽減などが挙げられる。また、時には安全性という意味合いで用いるケースも見られる。ただ、実際には良いことばかりではない。「ベネフィット」がある一方、副作用が出ることもあり得る。こちらはリスクと呼ばれている。

ベネフィットとメリットの違い

次に、「ベネフィット」とメリットの違いを解説したい。この二つの言葉は、明確な違いがあるにもかかわらず、意外と混同されがちなので注意を要する。

●メリット(利点)の意味と対義語

メリット(利点)とは、英語では長所や価値を意味する。日本語として用いる場面では、若干定義が変わってきて、商品やサービスが有する利点や特長、売りなどの意味となる。対象となる商品やサービスを他のものと比較した時に、どんな点に違いがあるのか、どのような点が評価できるのかを強調する目的で使われることが多い。つまり、その商品やサービスが持つ特徴を意味するといって良い。

言うまでもなく、メリットの対義語はデメリットだ。日本語では、欠点という意味になる。メリットが事柄や物事に関して肯定的に評価される面であるとすれば、デメリットはそれとは反対に否定的に評価される面を言う。

●ベネフィットの意味と対義語

「ベネフィット」は、商品やサービスを利用することで得られる利益や恩恵を言う。具体的には、それを使うことで何がどう変わるのか、どんなものが得られるのかを意味する。言い換えれば、メリットの先にあるのが「ベネフィット」となってくる。

対義語としてはいくつか挙げられる。一つ目が「ダメージ」だ。これは、物事が有する価値を減じる損害や損傷を意味する。二つ目が「ロス」だ。日本語では喪失や損失を指しており、貴重な時間や販売機会を逸した際に用いられる。他にも「ディスアドバンテージ」がある。これは、不利益や不利、劣勢などの意味を持ち合わせている。

●ベネフィットとメリットの使い方の違い

メリットは売り手側の視点と言える。その商品やサービスにどのような特徴や効果があるのかが表現される。これに対して、「ベネフィット」は顧客の視点と言える。顧客が、最終的に何をしたいのかという目標が「ベネフィット」で、それを実現するための選択肢の一つに位置付けられるのがメリットと言い換えても良いだろう。例えば、以下の使い方ができる。

メリットの使い方
・このカメラは、高速連写ができる。
※カメラの機能や特徴を挙げている

ベネフィットの使い方
・このカメラは、撮りたい瞬間を逃さない。
※カメラの機能を用いて実現できる目標を挙げている

ベネフィットの種類

米国の経営学者であるデビッド・アーカーは「ベネフィット」を3種類に分けている。それぞれについて触れていこう。

●機能的ベネフィット

機能的ベネフィットとは、商品やサービスが持つ機能によってもたらされるプラスの効果や利益を指す。簡単・便利・安い・早い・軽い・美味しい・丈夫など、メリットと近い意味で用いられる。このベネフィットを提示することで、消費者の不安や警戒心が和らぎ、商品やサービスに興味を持ってもらいやすくなる。消費者の心理的なハードルを下げるためには有効と言える。立場を変えると、顧客にとっては商品やサービスを購入するかどうかを検討する際の一つの軸となり得る。

●情緒的ベネフィット

情緒的ベネフィットとは、商品やサービスを使うことで得られる情緒面でのポジティブな感情を言う。例えば、優越感や幸福感、安心感、楽しさ、心地良さ、快適さ、カッコ良さなどの言葉で表現される。情緒的ベネフィットが果たす役割は、購買意欲の向上だけではない。ブランディング効果も期待できるので、購入後も良好な関係を築ける可能性が高い。注意したいのは、人によって受け取る情緒的ベネフィットが異なることだ。それぞれに合った「ベネフィット」を考えて提示していかないといけない。

●自己実現ベネフィット

自己実現ベネフィットとは、商品やサービスを使うことで実現できる自分の世界観を指す。自分に自信が持てるようになる、自分らしさを感じられる、自分が誇らしいなどは、その代表例と言える。実は、米国の心理学者であるアブラハム・マズローが提示した欲求5段階説では、自己実現の欲求は最上位に位置付けられている。当然ながら、それを叶えられるなら「一定程度の対価も致し方ない」と考える人もいる。そうした人に刺さるのが、この自己実現ベネフィットとなる。特に、高価格な商品やサービスの購買意欲を喚起する際に用いられる。

ベネフィットの類語

「ベネフィット」の理解を深めるために、類語についてもいくつか紹介したい。

一つ目は「便益」だ。便利でしかも得になることを言う。それも金銭的な得に限らず、人々の幸福や福祉につながる得をも含む。

二つ目は「プロフィット」。収入から費用を差し引き残った利益を指す。「ベネフィット」には心理的な利益や機能的な利益も含まれるのに対して、プロフィットは金銭的な利益だけを意味する。その点で大きく異なってくる。

そして、三つ目が「アドバンテージ」だ。これは、他社の商品やサービスと比べた時の優位性を意味する。他にも、効果や恩恵、利益、有益、手当などもある。言い換える用語によって意味合いが変わってくるために注意を要する。

ベネフィットの主な類語
・便益
・プロフィット
・アドバンテージ

ベネフィットを見つける方法

ここでは、「ベネフィット」を見つける方法について説明したい。

(1)ペルソナを作成する

ペルソナとは、対象となる商品やサービスを実際に使ってくれるユーザーのイメージである。言い換えれば、その商品やサービスをどんな人が求めているかを思い描いていくことだ。作成にあたって考えるべきポイントがいくつかある。例えば、年齢や性別、家族構成、ライフスタイル、性格、趣味、収入、住所、学歴などだ。その上で、ペルソナがどんな悩みや課題、不安を今抱えているのかを考えていく。

(2)商品の特徴・利点をリストアップする

次に、商品やサービスの特徴、利点、優位性などについて思い浮かぶ限り書き出してみよう。リストアップする際の軸は色々ある。例えば、機能やデザイン、仕様、利用方法、利用シーン、価格、時間などが挙げられる。まずは、とにかく挙げてみることが重要だ。

(3)利点に対するベネフィットを考える

ペルソナと商品・サービスの特徴がまとまった段階で、実際に利用することでどんな良い変化が起こるのかを考える。すなわち、「ベネフィット」を挙げていくということだ。切り口は、機能的ベネフィットと情緒的ベネフィット、自己実現ベネフィットの三つがある。顧客には情緒的ベネフィット、自己実現ベネフィットのほうがメッセージ性が強い。より魅力的と思ってもらえるベネフィットを導き出していくことが重要となる。

ベネフィットの具体例

最後に「ベネフィット」の具体例を紹介しておきたい。

●例1:人事システム

新たな人事システムを導入することでの「ベネフィット」としては、以下が想定される。
・残業時間の減少につながり、人件費を削減できる
・現場での人的なミスが減少する。
・長い目で見ると、従業員満足度が高まると共に定着率の向上が見込まれる

●例2:健康食品

健康食品では、自己実現ベネフィットをアピールすることが一般的だ。良好な健康状態を築けると、生き生きとした日々を過ごすことができるという切り口が有効となる。

●例3:テーマパーク

テーマパークの場合には、情緒的ベネフィットにフォーカスしたい。ドキドキした気持ちになれる、ワクワク感を味わえるなどの感情を伝えるようにしたい。

まとめ

メリットは商品やサービスの特徴やセールスポイントと言える。一方、「ベネフィット」はそれらのメリットを体験することによって顧客が得られるポジティブな変化や利益と言える。人は、メリットを説明されただけでは動かない。「それを使ったら自分のライフスタイルや人生がどうより良くなるのか」をイメージできて初めて行動を起こすのである。言い換えれば、メリットという前提があってこその「ベネフィット」と言っても良いだろう。この二つの違いを十分に理解して上手に使い分けるようにしたい。
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