第4回 ネックは評価制度にあり。何がモチベーションを下げ、人材の定着を妨げている?

世界戦略の中で何が起きている? 現地中国からの実態報告と提言

本コラムも、4回目を迎えました。今回は日系企業と現地企業の間で大きなギャップのひとつとなっている「評価制度」から紹介します。
弊社ではクライアントである日系企業より、トップマネジメントが独断で実施していた評価の見える化、公平性を意識した評価制度に、およびそれに必要な等級制度・報酬制度の構築・整備を依頼されることが多くなってきています。具体的には、公平・公正な評価に基づく(1)優秀な社員の把握・そしてその処遇、(2)ぶら下がり社員の把握・そしてその処遇、(3)組織の活性化、などです。

プロジェクトが始まる前、現場では何が起きているのか、実際にどのように社員は日頃の業績を評価されているのか、現状を調べます。多くの企業に関わるうちに、評価制度で躓いている企業の傾向が、大きく下記の3つに分けられることが見えてきました。

(1)過去コンサルティング会社に委託して制度を設計したが運用が途中で止まっている
(2)日本本社の人事制度をベースに移植したが機能しない
(3)評価制度だけを構築したが評価の判断に必須のジョブディスクリプションの記述、
等級の整備などが行われていない

これ以外にも、全く制度が存在せず、長い間総経理(社長)の独自の判断で社員の評価・査定を実施してこられているケースも多々見られます。

では、現場での運用はどうなっているのでしょうか。その実態を下記の2資料にまとめました。これらは、実際に遭遇した会社で作成した評価制度に基づき実施した結果を示すもので、上が『賞与査定、賞与評価比率』、下は『各評価ランクに与えられた賞与月数』です。
(この二表は同一企業ではないため内容は一致していません)

『賞与査定、賞与評価比率』は、各査定ランクごとに何%が該当するかをまとめた分布図となります。本来、「各人の業績を適正に評価し、その結果を会社が定める方法にて賞与などへの反映を目的とするもの」のはずです。しかし、評価は中央に偏り差がつきにくい状態になっています。せっかく評価制度を作り、その目的とするところを明確に持ちながら、現場においての評価結果は当初の目的に合致していません。かなり多くの企業においてみられる実態です。
続いて『評価ランクと評価に与えられた賞与月数』を見てみましょう。この図は査定ランクごとに賞与が何月分支払われるのかを示しています。 B評価が1ヵ月分なのに対し、A評価は1.2ヵ月分。その差はわずか0.2ヵ月分しかありません。頑張って高い評価を得ても、ほどほどの評価の人と、あまり賞与額が変わらないのでは、モチベーションにつながるとは考えにくいのは明らかでしょう。
評価制度が機能しない原因として我々が現場で見るのは、(A)評価者である日本人マネジメント・リーダーが日本においてその経験がない、(B)評価者である日本人出向マネジメントおよびリーダーが2〜4年で入れ替わり現場社員の把握が難しい、(C)現地化によって評価者となる現地社員が評価者訓練を十分に受けていない、などです。また制度そのものにも問題があるケースも多いです。
課題としてこのように挙げるのは簡単ですが、評価される側の社員にとっては迷惑な話であり、優秀者離脱の原因になっていることは疑いのないことです。

著者プロフィール

Cochi Consulting ( Shanghai ) Co,. Ltd (可馳企業管理諮詢上海有限公司) 法人代表 中内 重郎

1970年日本アイ・ビー・エム入社。1995年取締役に就任、CFOとして活躍。その後専務取締役を経て2005年退任。2006年からアメリカ最大のテクノロジー専門投資会社シルバーレークテクノロジーの日本責任者,中国IT会社iSoftstone Technology(NY 上場)の日本事業会長、数社の社外役員を経験後、現在(株)IMAGICA Group監査等社外取締役を務める。日米中のマネジメント経験を活かし2012年人事専門の仲間とともに、日本企業向け人事総合コンサルティング会社として可馳企業管理諮詢有限公司(上海)、Cochi Consulting(Shanghai)Inc, を立ち上げる。

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