早々に内定承諾する学生たち

内定を受けた時期(複数回答)について、文理別に見てみましょう。本調査が2025年3月上旬時点での実施だったこともあり、最多は文系・理系ともに「2025年2月」で、それぞれ35%、38%と4割近くに上っています[図表13]。「2024年10月」(10%、9%)から内定を受けた学生は増え始め、「2024年12月」(26%、31%)で大きく増加し、「2025年1月」(23%、29%)も高くなっています。

驚くべきは、「2023年12月以前」で既に文系3%、理系6%が内定を取得しているのをはじめ、「2024年1月」から「2024年3月」までも継続して内定を取得している学生が少なからず存在しているということです。この時点では、学生はまだ学部2年生、あるいは大学院生(修士)であれば大学院に進学前の学部4年生ということになります。かつて就職協定が存在していた時代には、協定日前の内定出しを「青田買い」、それよりもさらに早い内定出しを「早苗買い」や「苗代買い」と言ったものですが、まさに「苗代買い」の状況と言えそうです。
[図表13]文理別 内定を受けた時期(複数回答)
2025年3月上旬の段階で内定率が8割近くになるなど、企業による早期内定出しが広く行われていますが、学生の内定承諾や就職活動の終了の状況はどうなっているのでしょうか。1社以上の内定を有する学生を対象に文理別に比べてみると、文系では「内定承諾した、もしくは、内定承諾する企業を決めた」が39%とほぼ4割となる一方、「まだ決めかねており、就職活動を続ける」が54%と半数を超えています[図表14]。ただ、「まだ決めかねているが、就職活動は終了した」(7%)を合わせれば、内定を受けた学生のうち、半数近くがもう就職活動を終了したと回答しています。

一方、理系では、「内定承諾した、もしくは、内定承諾する企業を決めた」が53%と既に半数を超え、「まだ決めかねているが、就職活動は終了した」(9%)を合わせれば、6割以上の学生が就職活動を終了しています。文系・理系で内定率には大きな差異はありませんでしたが、就職活動を終了した割合では理系のほうが高くなっていることが分かります。企業からの早期内定出しに対して、学生がこれだけ早く承諾を決断してくれることが、結果的に企業の採用活動の早期化にさらに拍車をかけているとも言えそうです。学生の安易な内定承諾が、後々の内定辞退の増加や、入社後のミスマッチによる早期離職につながらないことを祈りたいところです。
[図表14]文理別 内定承諾と就職活動の状況
内定承諾の状況をキャリアプランの有無別でも比較してみたところ、「明確に持っている」学生群では、「内定承諾した、もしくは、内定承諾する企業を決めた」が57%と6割近くに上り、[図表14]の理系を上回る高い割合になっています[図表15]。これに対して、「ぼんやりとしたイメージは持っている」学生群は39%と4割程度、「イメージを持っていない」学生群においては17%と2割未満にとどまるなど、キャリアプランが明確な学生ほど内定承諾の決断も早くできていることが分かります。キャリアプランの「イメージを持っていない」学生には、自身の企業選択自体に確固たる軸が確立されておらず、内定を受けたとしてもその企業が果たして自分にとっての最適解なのかを判断できないのではないでしょうか。
[図表15]キャリアプランの有無別 内定承諾と就職活動の状況

「社員の対応・人柄」を重視する理系

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