「ブラック企業」「ブラックバイト」などの言葉を目にすることが非常に多くなった。ところで、現在「ブラック企業」の取り締まりを強化する目的で、厚生労働省に特別に編成された専門部隊があることをご存知だろうか。
ブラック企業撲滅を目指す『過重労働撲滅特別対策班』とは?

法令違反摘発の専門部隊「かとく」

「ブラック企業」「ブラックバイト」という言葉に正確な定義があるわけではないが、一般的には従業員を雇った場合に守ることが義務付けられている法律を守らず、従業員を酷使している企業のことを指して使用される言葉である。そのような企業を専門に取り締まる目的で、現在、厚生労働省に『過重労働撲滅特別対策班』という組織が設けられている。通称「かとく」と呼ばれており、今年5月1日に東京および大阪の両労働局に設置され、およそ半年が経過したところである。

 厚生労働省では、昨年の9月に厚生労働大臣を本部長とする「長時間労働削減推進本部」を本省内に設置し、長時間労働対策などについて取り組んでいる。今年度に入ってからはさらに新たな取り組みとして、悪質な法令違反に対する捜査を専門に担当する『過重労働撲滅特別対策班』が設けられたものである。

 今年の7月には、東京労働局の『過重労働撲滅特別対策班』が有名な靴の専門店チェーン大手の摘発に乗り出している。同社は「違法な長時間労働」を従業員に強いており、度重なる行政指導を受けても改善をしなかったため、労働基準法違反容疑で法人としての同社と、労務担当取締役、店舗責任者2人の計3人が東京地方検察庁に書類送検されている。

また、今年の8月には、大阪労働局の『過重労働撲滅特別対策班』が外食チェーン大手の摘発に乗り出している。同社は大阪府と京都府の計17の直営店で従業員に「違法な長時間労働」をさせており、行政指導を受けても改善しなかったため、労働基準法違反容疑で法人としての同社と各店の店長ら計16人が大阪、京都両地方検察庁に書類送検されている。

違法な経営の代償とは

そもそも従業員を雇用する際の法律は従業員が安全に、衛生的に、健康的に働けるようにするために、企業に遵守を義務付けているルールである。人間は長時間働かされ過ぎると、心身に変調を来してしまうケースが多くなるからである。

違法な長時間労働などの結果、脳血管疾患・心臓疾患の発生、統合失調症の発症などの事例が多数報告されている。命にかかわる問題さえ発生してしまうのが違法な長時間労働の顛末である。だからこそ国を挙げて違法な勤務を強いる企業の取り締まりを強化しているという事情がある。

 また、違法な経営を行った場合のデメリットは、従業員だけが被るわけではない。万一、摘発を受けるような事態が発生した場合には、企業自身が社会から「ブラック企業」「ブラックバイト」などのレッテルを貼られてしまうことになる。企業が「ブラック企業」などのレッテルを貼られてしまった場合に被るデメリットは計り知れない。

たとえば、そのような企業では、商品・サービスの提供を顧客が敬遠する「顧客離れ」が発生する。また、従業員の退職が増加し、新しい人材を募集しても集まらない「従業員離れ」も起こしてしまう。その結果、「ブラック企業」とのレッテルを貼られた企業は、今までのような経営ができなくなるという大きな「社会的制裁」を受けることになる。従業員を雇用する際の法律を「守らない」「守れない」「守る気がない」企業は、社会で生き残ることができなくなるといえるであろう。ルールを逸脱した経営は企業にとっても従業員にとってもメリットがないのである。

さらには、違法な勤務を強いる企業では従業員のモチベーションが低下し、従業員のパフォーマンスが大きくダウンしてしまうという特徴もみられる。従って、企業経営上は「法律だから守る」というだけでなく、「従業員に力を発揮してもらうために法律を守る」という視点も忘れてはならない。これを機会に、自社の現状を再確認してはいかがだろうか。

コンサルティングハウス プライオ
代表 大須賀 信敬
(中小企業診断士・特定社会保険労務士)

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