近年、ブラック企業という言葉を聞くことが珍しくない。ブラック企業とは、一般的には長時間労働で社員をこき使い、残業代も支給しない企業のことを指す。このような企業では離職率が高く、社内の雰囲気も暗くなりがちだ。長時間残業でプライベートな時間もなく、超過労働に対しお金も支払われないのであれば、ある意味当然と言えるだろう。
残業ゼロなのに雰囲気が暗い会社とは?

「ホワイト」なのに、雰囲気が暗い!?

しかし一方でブラック企業と対極にあり、ホワイト企業と呼んでも良いくらいの会社であるにも関わらず、社内の雰囲気が暗いと悩んでいる経営者もいる。どうして長時間残業もなく、残業があったとしても残業代がきちんと支払われている会社なのに、雰囲気が暗くなってしまうのだろうか。

どうにか明るい職場をつくれないかと相談されたとき、私が必ず答えるのが「明るい職場はつくれません!」ということだ。これには多くの経営者の方が驚かれるが、ある意味事実と言っていいだろう。

「明るい職場」「暗い職場」とは?

明るい職場というのは、人によってそれぞれの考えがあり、明確な定義はない。ある人はこの定義を、窓際で日光が差し込んでいる職場と想像し、またある人は、雑談が多い職場と想像する。このように、明確化された定義がないと、それに向かって職場を変えようなどということは難しいのだ。

職場を変えたい!と思ったときは、こうなりたいとイメージする職場にするための行動レベルまで落とし込んで目標を設定すると、より早く職場改善が進むようになる。例えば、「明るい職場」というような漠然としたものではなく、「毎日朝出社したときに全員が目を合わせて挨拶をする職場」であれば、叶えることができる。

また、職場が暗いと感じている経営者に話を聞いていくと、経営状況によってもパターンがあるように感じられた。代表的な2つのパターンを紹介する。

パターン1:既存の業務だけで十分に収益をあげているケース


きちんと収益の柱が安定しており、またその柱となる業務も反復継続するような企業の場合、ある意味安定している職場と言えるのだが、社員はある業務をひたすら回していけばよい、という雰囲気になり、マンネリ化する場合がある。

例えば、すごくニッチな分野でシェア1位(もとよりライバルがいない)などといった企業で、このような傾向が見られる。このような職場では、会議をしたとしても、すでに解決策は過去にあり、新しく考えようという社風自体が失われているため、暗い雰囲気と感じられることがある。このような場合には、小さくても新規事業にチャレンジしてみたり、社員にとって自分でも創り出せるような業務を行わせたりするなど、積極的な姿勢を育むような雰囲気作りが大切になる。

パターン2:社長がすべて決定し、社員は作業者でしかないケース

すべての企画の決定権が社長にあるケースで、創業社長に多いパターンだ。このような会社では、業績は好調だが、社員は指示されたことを実行する作業者でしかなく、モチベーションが低下することがある。社員が意見を言ったとしても、社長の一存ですべてが決定されるため、次第に誰も意見を言わなくなる。

モチベーションアップの要因は、自分で何か変化を起こせること

2つのパターンに共通しているのが、社員が会社に認められていないと感じていることだ。人のモチベーションは、給与だけではあげることはできない。給与とは、あくまでも不満を抑えるものであって、満足に通じるものではない。承認されていること、自分で何か変化を起こせることが、モチベーションアップの要因なのだ。当然、各人のモチベーションがあがれば、社内のコミュニケーションが円滑になり、職場の雰囲気は明るくなるだろう。

自社を振り返ってみて、朝礼の時や普段の何気ない瞬間、社内の雰囲気はいかがだろうか? 暗いなと思ったら、まずはその原因を考えることだ。上記2つのパターンどちらかに当てはまったならば、社員のマネジメントを変えて、やりがいのある職場づくりをする必要があるかもしれない。


koCoro健康経営株式会社 代表取締役
Office CPSR 臨床心理士・社会保険労務士事務所 代 表
一般社団法人 ウエルフルジャパン 理 事
産業能率大学兼任講師
植田 健太
ストレスチェック制度特設サイト

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