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「みなし労働時間制」とは

HRプロ編集部
2018/02/08

日に日に働き方改革の気運が高まり、労働時間についての世間の関心は、ますます高まっていくことが予想される。社員の定着や新規採用のためにも、労働時間の管理は労務管理上の重要課題だが、間違った認識で労働時間管理がされることが少なくない。以下、誤解が多い労働時間制度の一つである「みなし労働制」について解説する。

「みなし」という意味

「みなす」という言葉の法律的な意味は、「ある条件を満たせば、事実が違っていたとしてもあらかじめ決めた内容の通り取り扱う」というもの。例えば婚姻については「民法第753条 未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなす。」とあるが、この条文により、たとえ未成年でも、結婚したら法律上は成年(20歳)として取り扱う。

つまり、「みなし労働時間制」とは「実際の労働時間が違っていたとしても、法律上はあらかじめ決めた時間数働いたものとする制度」である。

みなし労働時間制の種類

実際の労働時間が違っていても、あらかじめ決めた時間数を働いたものと「みなす」ためには、特殊な事情が必要だ。

「特殊な事情」とは、法律上は主に下記2点になる。

(1)労働時間を正確に算定できない事情がある場合
(2)仕事内容として時間管理することが馴染まない場合

いわゆる(1)が「事業場外のみなし労働時間制」、(2)が「専門業務型裁量労働制」「企画業務型裁量労働制」である。

(1)事業場外のみなし労働時間制

事業場外のみなし労働時間制とは、労働者が業務の全部又は一部を事業場外で従事し、使用者の指揮監督が及ばないために、当該業務に係る労働時間の算定が困難な場合に、使用者のその労働時間に係る算定義務を免除し、その事業場外労働については「特定の時間」を労働したとみなすことのできる制度である。

例えば、外回りが多い営業や在宅勤務など、主に会社の外で働いている場合を想定したものである。外回りの営業では会社には行かず直行直帰という働き方があったり、在宅勤務では公私の区別がわかりづらかったりするため、「1日の通常の労働時間を9時間とみなす」などといった取り決めをするということである。 

ただし、業務を行うグループの中に時間管理者が含まれる場合や、具体的な指示どおりに業務を行い、その後事業場に戻る場合は対象外となる。さらには、スマートフォン(スマホ)や携帯電話等の通信機器で、随時使用者の指示を受ける場合も同じく、「事業場外の労働時間制」の対象とはならない。IT化がこれだけ進んでいる現代では、馴染みにくい制度と言えるかもしれない。

(2)専門業務型裁量労働制

専門業務型裁量労働制は、業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務として、厚生労働省令及び厚生労働大臣告示によって定められた業務の中から、対象となる業務を労使で定め、労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使であらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度である。(適用範囲拡大の議論があるが、企画業務型裁量労働制は利用が極端に少ないため割愛する)

例えば、「新技術の研究開発」「情報処理システム設計」「編集・放送」「デザイナー」「弁護士」などが対象とされている。ちなみに社会保険労務士は対象外である。

以上に述べたような、みなし労働時間制を盾にして、長時間労働が行われているケースが多々ある。また、みなし労働時間制を導入すれば、残業代の支払い不要という誤った認識を持った経営者も少なくない。そのため、慎重に導入しなければ、従業員の不信を招きかねない。同制度の導入を検討する場合は、実労働時間を慎重に調査することから始めることを強くお勧めしたい。


社会保険労務士たきもと事務所
代表 瀧本 旭

プロフィール

HRプロ編集部

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