経済産業省(以下、経産省)は2022年5月9日、教育機関・企業等向けの課題解決型AI人材育成用「AI Questデータ付き教材」の提供を開始すると公表した。同教材は、AI実装に必要なスキルを疑似経験できる構成で、企業の課題解決に資するテーマを選定し、要件定義、モデル開発、実装、プレゼンまでを通して学習できる内容だ。2022年度は、新たに3つのテーマからなる教材を作成している。同省は、AI人材育成に関心のある教育機関・企業等で利用してほしいと呼びかけている。
経産省、実践的なAI実装スキルを学べる「AI Questデータ付き教材」に3テーマを追加し、AI人材育成を支援

AI実装について一貫した実践的スキルを疑似体験学習できる教材

経産省は、AIの実践的な実装スキルを持つ人材育成を目指し、2020年度より課題解決型AI人材育成事業「AI Quest」を行ってきた。同事業は、AI人材育成における講師不足や、講師への依存といった課題を解決するため、参加者の学び合いによる拡大生産性のある育成プログラムの確立を目指して実施している。

「AI Questデータ付き教材」の提供は、「AI Quest」の取り組みの一環だ。企業のAI活用ニーズを探り、優先的にAI導入を進めるべき業種や工程(以下、優先領域)を明確化。優先領域をテーマとして作成した同教材を公開している。

今年度公開された教材では、新たに「製造業における工数予測」、「製造業における不良個所自動検出」、「製造業における予知保全」の3つのテーマを追加し、昨年度までに公開しているテーマと合わせて全11テーマが学べる。ほかにも、各テーマで必要となる、「AI導入テーマの選定」、「プロジェクトマネジメント」、「システム実装」について学べる補助教材が新たに追加されている。

教材および補助教材を用いた学習により、企業におけるAI実装に必要なスキルを疑似経験学習できる構成になっているという。項目は以下の通り。

●AI導入テーマ選定(業務上の課題の洗い出し、AI導入可能なテーマの選定)
●要求定義(AI化テーマに取り組む意義の理解、情報の取得方法の検討)
●要件定義(AI化業務の具体化、技術検証における要件検討)
●モデル開発(データ前処理、モデリング、精度評価の実施)
●実装・運用計画作成(開発したモデルをもとにした本番実装・運用計画の作成)
●システム実装(策定した本番実装・運用計画を元にした、実装に必要な環境の構築)
●プロジェクトマネジメント(検討のゴール・プロセス全体の設計、体制整備等)


これまで教材を活用したプログラムの参加者からは、「AIに関する知識だけではなく、課題解決プロジェクトを進める上で必要なビジネススキルも磨けた」、「企業の課題抽出からAIモデル構築、プレゼンまで一貫したAI活用による課題解決フローを体験できた」などといった声が寄せられたという。

AIに関する知識や、課題解決のためのAI導入経験などが乏しく、対応に苦慮している企業も多いのではないだろうか。その状況を打開するために、経産省が公開した本教材などを活用し、AI人材育成のヒントを掴みたい。

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