企業向けコンサルティングを行う株式会社タナベ経営は2020年11月、「コロナ環境下の人材採用・育成に関する企業アンケート」の結果を発表した。調査期間は2020年9月1~18日で、全国の企業経営者・役員・管理職・一般社員156名から回答を得た。これにより、新型コロナウイルス感染症拡大下における、企業の人材への意識と課題などが明らかとなった。
求める人材像をより明確にする企業が増加。コロナ禍を生き抜くため、マネジメント層やデジタル人材といった即戦力を求める動きが顕著

コロナ禍の人材採用において、求める人材像は大きく変化

新型コロナウイルス感染症拡大を受け、企業における人材採用への意識はどのように変化しているのだろうか。はじめに、「求める人材像や採用基準を変化させたか」を尋ねた。2019年度の結果と比較すると、2020年度では33.1%が「今年もしくは過去2~3年で求める人材像や採用基準を大きく変えた」と回答。2019年度の6.6%から、実に26.5ポイントも増加している。新型コロナの影響により、求める人材像や採用基準が大きく変化したことがうかがえる。

また、「求める人材像や採用基準は明確に制定していない」との回答は、2019年度の19.4%から9.7%へ減少。「採用したい人材や基準」を明確に定める企業が増えていることが判明した。
「コロナ環境下の人材採用・育成に関する企業アンケート」図表1

専門スキルや技術を持つ「即戦力」を積極採用したい意向

続いて、「採用活動は終了した」または「採用活動中」とする企業に、「採用者」もしくは「採用予定者」について、最終学歴の内訳を聞いた。すると、2020年度は「大学卒」が65.4%と、2019年度の63.6%に続き6割以上を占めた。一方、「短大・高専卒」の割合は、2019年度の8.3%から13.5%に増加し、また「重点的に募集している職種」は「専門・技術職」が48.1%という結果に。すでにスキルや技術を持ち、即戦力となる人材を積極的に採用している傾向がうかがえる。
「コロナ環境下の人材採用・育成に関する企業アンケート」図表2

約6割が「来期の新卒採用人数も今期並みか増加」と回答

また、「来期の新卒採用」の予定を尋ねると、最も多かったのは「今期と同程度(の人数)採用する」で34.2%、次いで「新卒採用を強化する」が24.5%となった。合計すると、6割近くの企業ではコロナ禍でも人員増を検討し、採用の歩みを止めないという姿勢がうかがえた。

一方、「未定」との回答は22.6%となり、9月時点では来期の採用計画が決まっていないとする企業も2割以上存在することが明らかになった。
「コロナ環境下の人材採用・育成に関する企業アンケート」図表3

不足する人材は「マネジメント層」と「デジタル人材」がトップ2

次に「現在、不足していると感じる人材」を尋ねたところ、「マネージャー(管理職)」が53.2%で最多に。部門全体を広く管理・統括できる人材が、不足している実態が明らかとなった。また、「デジタル活用に携わる人材」(44.9%)が2位となり、新常態の世の中でDX(デジタルトランスフォーメーション)が推進されるなか、自社の方針とデジタル化の両方を理解し推進できる人材が不足していると感じているようだ。

さらに、「専門・技術のスペシャリスト人材」や「経営企画・戦略に携わる人材」がともに44.2%であることから、中・長期ビジョンの策定や実行、推進できる人材を要望し、育成する必要性が生じていることもうかがえる。
「コロナ環境下の人材採用・育成に関する企業アンケート」図表4

「教育計画の見直し」や「研修のデジタル化」が人材育成上の課題

最後に、「今期の人材育成上の課題」について聞くと、最も多かった回答は「教育計画の見直し」で、64.7%となった。新型コロナの影響を振り返り、教育体制が不十分だと感じる企業が多いのかもしれない。また、「社内研修のデジタル化」が4割近い37.8%であることや、「教育予算の削減」は最も低い11.5%となったことなどから、テレワーク環境においても研修をやめないという意向がうかがえる。
「コロナ環境下の人材採用・育成に関する企業アンケート」図表5
テレワークの普及などで新たな働き方を取り入れた企業も多く、ジョブ型雇用にも注目が集まっている。コロナ禍で企業が求める人材像は大きく変化し、本調査からも即戦力となる人材を積極的に採用したいという意向がみえた。自社が求める人材をどうやって採用するか、企業には効果的な手法を検討することが求められそうだ。

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