そういう観点では一つの会社や一つの仕事に必死になる要素は以前に比較してだいぶ少なくなってきたのではないかと思います。これは会社を経営するというレベルでも、一担当が業務を行うというレベルでも、その仕事を絶対に成功させるという気概を持ち続けることが、経済的に困難な環境になってきたのではないかと危惧します。また仕事に失敗しても、首になることもないですし、ましてや命を失うことなどありません。何に依拠して必死に仕事をするのでしょうか。
仕事で成功している人の多くは、このような経済的な動機や生命の危機回避的な動機ではなく、それこそ自己の存在証明としての動機のように思えます。仕事を通じて生命や経済的困窮などのリスクがほとんどない以上、なんらかの“価値観“が背水の陣的な必死さを生み出すのではないでしょうか。現在の日本企業における人事制度の議論においての成果主義などは、効果はあるが根本的に働き方を変貌させるだけの力はなく、だからこそ企業の理念や方針や職業人としてのプライドが重要性を増しているのです。そのため評価制度などでも、単に成果を数字で測るような仕組みは、重要な本質的議論を避けているようにも思えます。日本企業がグローバルに輝きを取り戻すためにも、背水の陣的な必死さがほしいものです。
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