プロフィール
守島 基博 氏
日本人材戦略コンソーシアム 理事長
学習院大学 教授/一橋大学 名誉教授
米国イリノイ大学産業労使関係研究所博士課程修了。人的資源管理論でPh.D.を取得後、カナダ国サイモン・フレーザー大学 経営学部Assistant Professor。慶應義塾大学総合政策学部助教授、同大大学院経営管理研究科助教授・教授、一橋大学大学院商学研究科教授を経て、2017年より現職。厚生労働省労働政策審議会委員、中央労働委員会公益委員などを兼任。2020年より一橋大学名誉教授。著書に『人材マネジメント入門』、『人材の複雑方程式』、『全員戦力化 戦略人材不足と組織力開発』『人材投資のジレンマ(共著)』(ここまで、日本経済新聞出版)、『人事と法の対話』(有斐閣)、などがある。
須東 朋広 氏
日本人材戦略コンソーシアム 事務局長
専修大学 特任教授
日本初の人事責任者向け団体「日本CHO協会」を2003年に立ち上げ、事務局長として8年半務める。2019年「日本CHRO協会」事務局長として協会の立ち上げに従事。2020年、日経新聞・日経BPの共催による人事役員(CHRO)のみで人的資本経営を議論するコミュニティ「Human Capital Committee」の立ち上げに参画、企画・運営に携わって現在に至る。
また2011年インテリジェンスHITO総研(現パーソル総研)の立ち上げに参画。中高年・女性躍進・障がい者雇用・転職人材・正社員の雇用やキャリアの研究をリサーチ部門の責任者として5年間務める。2016年10月、誰もがイキイキ働き続ける社会を実現するために『一般社団法人組織内サイレントマイノリティ』を立ち上げる。2024年9月、本コンソーシアムの立ち上げを行う予定である
人的資本経営と「キャリア自律」の一体化によって、企業と働く人がマッチする
――昨今の日本の「人的資本経営」の状況をどうご覧になられていますか。須東氏:近年、「人的資本経営」の重要性が叫ばれる中、「経営戦略と人材戦略の連動」に関しては議論が進み、実行されている企業様が増えました。一方で、変化スピードの速い環境に対応できるよう、社員一人ひとりがいかに主体的になり、強くなっていくかを主眼とした施策に着手し始めている企業も増え始めています。その中心にあるのが「キャリア自律」という考え方なのですが、これは25年以上も前から言われて続けていて、この間に大きな進展があったとは言えない状況です。
守島氏:実際、経営戦略を実行するための人事戦略やシステムは議論され、検討が進んでいるように見えますが、人的資本経営の根幹である変化のなかで人材というものをどう活用していくのかという問いに対する答えはまだ導けていないように思います。「人的資本」と呼ばれるスキルや能力は、働く人自身が持っています。従って、働く人たちに何らかの形で働きかけて、そのスキルや能力を自ら高めて、仕事のために使うという意識を持ってもらう必要があります。そこが人的資本経営のラストワンマイルで、その際の重要なコンセプトが「キャリア自律」になっていると思います。
「キャリア自律」というのは、自分がどんなキャリアを歩んでいくかを考えることです。なので、企業としてもそれに対応する様々なメッセージを発信していく必要があります。つまり、「人的資本経営」と「キャリア自律」という二つの概念が一緒になって初めて、その企業がやるべきことと働く人がやるべきことがマッチできるわけです。これまでは、「キャリア自律」という考え方が一人で走っていただけだったので、企業の方の動きがついてこなかったと言えます。人的資本経営の下で企業は人の能力を活用していかないといけません。でも、それを働く人に自分の意思で行ってもらう。それが人的資本経営です。そういう意味では、「キャリア自律」が重要になってきます。
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